2020/05/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/高級ラウンジ」にルシュ・アシドさんが現れました。
■ルシュ・アシド > 薄暗い店内に充満しているのは、荒い息遣いと水音、そして忙しなく肌を打つ音である。
ラウンジはコの字型に置かれたソファや深紅のカーテンによっていくつかの半個室に区切られ、
中では従業員の女たちが客相手に酒と身体をたっぷりと提供していた。
シャンデリアに灯された魔法の灯はゆらめくたびに色を変え、
豪奢な調度品に美しい光の波紋を描いている。
性を売る店は多々あれど、中でも高級店と呼ばれる場所である。
店の女主人に頼まれていた宝石を納品し終え、後は出口へ向かうだけだったのだが、
あなたも楽しんでいって頂戴――女主人にそう腕を引かれ、
引きずられるようひとつの部屋に連れ込まれてしまった。
従業員を呼んでくると女主人は席を立ったが、戻る気配は感じられない。
もう少し待つか、今のうちに帰ってしまおうか――
男は困ったように笑い、軽く息を吐いた。
■ルシュ・アシド > 隣接のカフェバーと入り口が近いため、間違って入店してしまう女性も多いと聞くが、
今のところトラブルめいた声は聞こえてこなかった。
不意に半個室のカーテンが開いて振り返ると、
少女と呼んでも良さそうな年ごろの娘が、年配の男性客と腕を絡めて立っている。
あなたがマダムの言ってた宝石屋さん? ――少女にそう問われると、男はライトブルーの目を軽く見張った。
なるほど、女主人はただ従業員を宛がうよりも、男にとって益のある話を持ってきてくれたらしい。
男は落ち着いた所作で革張りのトランクを開き、売り込み用のジュエリーを見せつけるよう置き直してから、
二人に向け大仰に礼をしてみせた。
一瞬で湧き上がった卑しい商魂はたおやかな唇の中に閉じ込め、今はただ滑らかな弧を作って。
――旦那様、愛しい彼女にプレゼントは如何でしょう? ――と。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/高級ラウンジ」からルシュ・アシドさんが去りました。