2020/05/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 書房」にマリナさんが現れました。
マリナ > おひさしぶりの王都でのお仕事。
それを終えた少女は集落へ帰る馬車に乗るまでの時間、本を選ぶのに使うことにした。
と、いうのも。近頃九頭竜山脈一帯は物騒で、あまり出歩けなくなってしまったから。
部屋ですごす時間が多くなり、持っている本も読み尽くしてしまった。
そんな理由から訪れた書房は紙のにおいが漂っていて、とても広い。
棚の上のほうは少女の背ではとても届きそうになく、むしろ背丈を倍にしても無理そうだ。
けれどそんなときのために、はしごはある。

かた、かた、不安になる音をさせながら少女が上る。
運動神経がざんねんなため、一番上まで上がる勇気はなく、半ばまでたどり着いてから。
腕を伸ばした。指先までぴんとすれば、ぎりぎり届きそう。

「……っ……もぉ……すこ…し……!」

中指の先がふれて、本が傾き―――――落ちた。
ごちっと、少女の額に角をヒットさせてから。

「~~~~~~~っ…」

泣きそうに痛い。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 書房」にジュンさんが現れました。
ジュン > 「んーと、あれとこれと…」
ふとふらりと訪れた書店
本など久しぶりだと思ったが、見てみれば意外と興味を引くものが多かった
青年は次から次へと本を選んでは重ねて行ったところで

「…なんだ?」
ごちんという音とばさりという音が聞こえ
それが気になり音の方へと向かえば
泣きそうな少女の姿、一先ず

「えーっと、君、大丈夫かい?」
本を拾い上げつつ少女へと声をかけることにした

マリナ > 「…え、あ、あの、…」

声をかけられて人見知り発揮する少女が焦った。
実際にすこし涙が出ていたかもしれないけれども、そこはもう16。
耐えながらゆっくりとはしごを下りていく。
上るときよりも下りるほうがこわいもの。
ぐらぐらとおぼつかない足元で、けれど落ちることなく無事床に足がつく。
見れば異国の血が流れているようにも見える顔立ち、色素の男性がそこに。

「だいじょうぶです。なんでもないんです。なんでも……。」

こぶになるだろう額は赤いものの、前髪に隠れてあまり見えない。
ごまかすことにした。

ジュン > 「そういう割には結構いい音がしたけれど…」
そこまで聞こえていた、というよりもこの青年の耳が無駄に良いようで

「まあ血は見えないからそこまでの怪我ではないんだろうけど」
少しだけ顔を覗き込んでから納得したようにうなずきつつ

「と、はいこれ、お目当てのでしょ?」
と先ほど拾い上げた本を軽くはたいてから手渡す

「しかし高いところでは気を付けた方がいいよ?もしかしたら落ちてたかも知れないし」
と余計なお世話だと思いつつ付け加えて

マリナ > どおりで頭蓋骨に響いたと思った。
他人が聞こえたのだから、いまじんじん額が熱いのも当然のことなのだろう。
恥ずかしいやら情けないやらですこし気落ちしながらも、本を手渡されると受け取り。

「……ありがとうございます。
 ぃ……一応、…そのぅ…受け身は習ってますから、きっと大けがはしません。」

なぜかすこし誇らしげなのは、少女はほんのすこしだけ護身術を学んでいるからだ。
成果はかんばしくないし、とっさにできるほど敏くはないのだけれど。
―――それ以前に落ちる可能性については否定しない程度に、動けないことを自覚してはいる。
そして育った環境上、基本的に聞き分けはよかった。

「二冊目は…届く高さのものに…します」

ジュン > 「…まあそれなら大丈夫…かなぁ…」
本を取り損ねているあたりから疑わしかったが触れないことにした

「まあそうだね、それがいいと思うけどふぅむ」
顎に手を当て何か考える様子
目の前にいる少女正直に言えば見た目はかなり好みである
そこから云々はともかくいい印象は与えておきたいと思い

「あーそうだ、何なら高いところにあるので欲しいのがあったら代わりに取ってあげようか?」
と、提案をするのだった

マリナ > 見るからに年上だし、異性だし、人見知りを発揮する条件は抜群のため、どうにも歯切れが悪い。
それはけっして警戒なんていう高度な話ではないのだけれど、狭い世界で育った少女は打ち解けるまで消極的な性格だった。
―――しょんぼり。叱られたわけでもないのに、そんな反応。
たしかにあまり危険なことをしては方々に迷惑と心配をかけるものだから。
これだけ本があるのに選択肢が二分の一以下に狭まったことにがっかりしていると、思わぬことばにちらりと顔が上がる。
というか、顔を上げなければ視線が合わない。

「ほんとうですか」

だなんて言っておきつつ、さっそく。

「……あの、これ、前編なのです。中編と後編があるのです。」

抱えていた本を撫でながら遠回しに言う。
『あと二冊ある。さっきとった場所の隣にあるから、とってほしい。』

ジュン > 「んー?」
しょんぼりした様子に、ちょっと言い方が悪かったかとも思いつつ
顔を上げられ、本当かと訪ねられれば

「あぁ、折角だからね、いってくれれば…とそれじゃあタイトルちょっと見させてもらうね」
全編で中編と後編があるといわれれば一先ずタイトルを知ればなんとかなるだろうと一度屈んで本のタイトルを読み

「よしちょっと待っててね」
と声をかければ先ほど使われていた梯子をひょいひょいと昇っていく
本を落としたのであれば少し高めのところだろうと辺りを付け探していき

「…有った、これと、これっと、はいお待たせ」
これまたひょいひょいっと身軽に梯子を降りて本を渡しに戻る

マリナ > 少女の持つ本はいわば恋愛小説で、表紙からは
しっとりとした深い愛を描くようなものではなく、浅い恋のひとつとしてさらっと過ぎていくような作品。
それで三部作なのだから、さぞかしわちゃわちゃと好きだ嫌いだ言い合う内容なのだろう。
哲学的な内容が理解できない少女には、まだこれが限界だった。

そんな本でもとってくれる男性は身軽なようで、見上げているとあっという間に見つけてくれる。
一冊分あいているし、はしごの位置も変えていないから見つけるのはそう難くないはずだ。
それでも自分同じことをすればこぶがもうひとつ…ふたつ?増えたかもしれない。

「わあ…、…ありがとうございます」

三冊重ねて少女が喜ぶ。
さっそく買って帰ろうと思ったところで、大事なことを忘れていた。

「ぁ……あの……、マリナです。ごしんせつにしていただいたのに、忘れていました。」

このまま名乗りもせず帰るところだった、と。

ジュン > 「ん、あってたみたいでよかった」
表紙から恋愛小説だというのは予想がついた
自分は興味がないというほどではないが自分から好んで読むようなものではなかった
が、目の前の少女のような年頃であれば興味もありありだろうと察し

「どういたしまして、これくらいならお安い御用だよ」
お礼の言葉にも軽く返すも名を名乗られれば

「と、マリナちゃんか、俺はジュンだよそれじゃあ、あー…」
本を買おうとする様子を見送ろうとしたところで一つ

「まーまた会えたらよろしくね、手助けとかするからさ」

マリナ > 「ジュンさん……、…」

なんとなくその名前を呟いたのは、やっぱり異国の響きがしたからだろうか。
そしてあらためて顔を確認するように見上げたのは、広い王国で限られた出会いのなか
すれ違うことがあればきちんと思い出せるように。
『それじゃあ』との言葉にほんの少し微笑んで、会釈して、行こうかとしたところへ。

「――――手助け? …うふふ。
 マリナがまた困ってるところにジュンさんが来てくださるのですか。」

はじめて自然とこぼれる笑い声。
失敗したところを見られてしまったから、また失敗する姿を想像されたのかと思えば。

「いつも失敗ばかりしているわけではないのですよう。
 次にお会いするときは、マリナがお手伝いできる側かもしれません。
 そうだとしたら……そうだとしたら、…がんばります。」

できれば、これなら得意です、となにか伝えたかったのだけれど、
料理や編み物といった器用さが問われる趣味はあまり向かないし、もちろん運動神経が必要な行為もいまいちだし。
こんなことならお任せくださいとは言えず、うやむやにしたまま。
少女はもういちどお礼を述べて、三冊の本を抱えてゆくのだった―――。