2019/10/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2【イベント開催中】」にレミィさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2【イベント開催中】」にセイン=ディバンさんが現れました。
■レミィ > 富裕地区にある広い公園。
愛想良くお得意様の屋敷を辞去した男はここへと立ち寄る。
通りの見えるベンチに座れば芝居じみた仕草で高々と足を組んで座り、ハンドバッグから畳んだデザイン画を出して街灯の光で仕事の確認。
何事か納得したように頷いてはまたそれをしまい込み、代わりに取り出したのはロリポップキャンディー。小指を立てた手つきで包装紙を取っては口へと含み、大通りを行きかう人波にじったりと視線を投げかけている。
■セイン=ディバン > 「……お」
最近、王都内でにわかに流行っている……というか。
気勢が強まっている物。=分煙嫌煙。
男もまた、それに肩身の狭い思いをしているタイプの人間で。
公園で人知れず細巻を吸おうと思っていたのだが。
そこで、男はとある人影を見つけ。
火をつけぬままの細巻を咥え、相手へと近づいた。
「失礼。もし違ったら申し訳ないのだが……。
もしかして、レミィ=ビスケッタさん?
高名なデザイナーの?」
ある程度距離を離した地点で、男はそう相手に声をかける。
相手の目の前で、指先から炎を出し、細巻に着火。
くはぁ、と煙を空に向けて吐き出し。
■レミィ > キャンディーは甘ったるいベリー味。片側の頬をリスか何かの様に膨らましている。
近づく男にふと視線が吸われる。
訝しがるようでも媚びるようでもなく中立の視線を向けていれば意外にも己を知っているとのようで。
「あら、あらごきげんよう。
あたくしのことご存知なのね。
失礼ですが以前に何処かで?」
挨拶言葉を返しながらベンチを立ち上がり相手と同じ視線へ。舐めかけの棒飴は指に挟んで問い返した。
相手が紫煙を燻らせればむしろ表情はゆるりと解け。
「やはり、煙草はいいわね。なんだか落ち着くからもう少し近くで吸っていただけない?」
有難い香か何かの煙でも貰うかのように煙を己の方へ扇ぎながら笑いかける。
■セイン=ディバン > 相手に声をかけ、警戒されなかったのは何時以来かねぇ、などと。
内心の自問自答に苦笑しつつ。
男は、相手に向かって胸元に手を当てた完璧な一礼を披露する。
「えぇ、ごきげんよう。
いえ、お会いしたことはありませんよ。
ただ、今正に王都のファッションシーンの最前線でご活躍する方だ。
富裕地区に住んでいてアナタのお名前を知らぬ者がいれば、それは随分なモグリでしょう」
普段の男からは想像もできないような言葉遣いや仕草。
顔を上げれば、人違いをしていないことに安堵し、笑顔を見せる。
相手が立ち上がり、近寄るように言ってくれば。
男はやや困った顔になるが。
「それはよろしいですが……コイツぁ正規品では無いモクでしてね。
幾分……葉が曰くつきですが。よろしいので?
あぁ、申し遅れました。私、冒険者のセイン=ディバンと申します」
男の吸う細巻……男が材料を集め、職人に作ってもらっている。
魔族の国原産。血刀草の細巻である。成分は全うだが。
味と香りは大分クセのある物。
男は伺いつつも、相手の要望に応え、相手に近づく。
距離、おおよそ1メルトルあるかないか。
そこでようやっと男は自己紹介をした。
■レミィ > 男の礼する姿を見れば行儀と常識を持ち合わせた人間と見た。
否、行儀と常識「も」と考えるのはこの国の多彩な側面を知る故で。
「まあ、まあ、お口がお上手ですね──…、
あたくしが最前線で活躍なんていったら、いろんな先生方に失礼になりますわ──
でも、ありがとう」
相手にも笑顔を返して礼を述べ、
「曰くつき、とは……
ああ、煙草にも色々と過去やら生い立ちがお有りということで深追いしないが花ね。
──セインさん? よろしくね、このあたりのお屋敷にお住まい?」
煙草の香り、風向きで拡散するので身を寄せるように近づけば己からはバニラの香気が立つだろう。
世間話のように続けながら己からも距離を削いで横並びに肩が付き合うほどまで接近する。
「でもワイルドでいい匂いのお煙草ね?
まったく質は違うのでしょうけれど、昔のことを少々思い出すわ」
■セイン=ディバン > 男は本来、こういった礼節とは無縁の存在だ。
だが、世渡りする上で……状況に則した態度というのが必要であるということを学んだ。
故に、少なくとも表面上は礼儀正しい行動を取るくらいのことはできた。
「ははは、良く言われます。お前は口から先に産まれてきた、などと。
ご謙遜を。今の王都の服飾業界で、アナタの様に……。
経営者でありながら、その服の仕立てにまで関わる方は稀有でしょう。
多くのデザイナーは、デザインすることだけをして、ふんぞりかえっていやがるのが実際なのですから」
礼儀正しい態度を崩さないでいた男だが。最後の最後、口の悪さが露見する。
おっと、と。男はわざとらしく口を押さえ、苦笑などしてみせ。
「えぇ。ちょっと、葉の産地が……。
はっはっはっ。お気遣いに感謝いたします。
こちらこそ、よろしくお願い申し上げますよ。
えぇ、この先……三つほど言った区画に住んでおります」
相手に近づきつつ、談話。微かに鼻に香るバニラ臭。
嫌味ではない。しかして、しっかりと香るその匂い。
なるほど、趣味の良い香水だ、と内心思いつつ。
「そうですか? 他人には少しエグい匂いだと言われるのですがね。
……昔、ですか。レミィ様の過去についても、触れぬほうがよろしいのでしょうかね」
自分の細巻の匂いを褒める人間は珍しいな、と。
男は驚くものの。相手の言葉に、微かに踏み込んだ言葉。
ブティック経営者件デザイナー、レミィ=ビスケッタ。
確か、過去は謎も多いが。噂では収監経験あり、という噂もあったか、と。
男は冒険者のツテで調べた情報を思い出すが。どう見ても、目の前の相手の姿からはそんな過去は結びつかない。
■レミィ > 出会ったのが裏路地であったなら、また夜の盗賊街道であったなら己も違った眼光を以て接したやもしれず。
だがここは上客の住居も多い。ニィ、と社交的なスマイル浮かべたまま。
「そう? アッチの方もお上手なのかしら?
買いかぶりですわよー。
お絵描きも細かい仕事も、好きでやっているだけですわ?
それに、お高いストッキングの紙箱に有名モデルさん監修 なんて字が入っていても、買う方はそんなに真に受けていないものよ?」
声高に皮肉を言ってしまい、あら失礼と肩を竦める。
そうして相手の住居を聞けば鴨なら幾ら引っ張れるか、頭の隅での皮算用は悪い癖。
相手の燻らす紙巻の匂いにまた目を細め、
「いえ、いい匂い──
また違った意味の”オリジナルブランド”の煙草があるような所もあるし、その煙草が賭け事の通貨代わりになるような世界とかね──…
あなた、驚きそうにないわね」
そういうことよ、と言葉を足して笑う。
「上手に化けたでしょ、ポンポコリンってね」
紅を引いた唇の前で指を1本立てて『内緒話』のジェスチャーをして。
■セイン=ディバン > ちなみに、男も当然。地は裏道。
こういった社交的な演技というのは、思いのほか疲れるもので。
男の本性を知りたいのなら、酒場で酔っているところを見れば一発である。
「……さぁて。どうでしょうね。
自信はありますが……痛がられることも多いので。
好きだからこそ続けられる、ですかな?
……くははははっ、違いない。もっと言えば。
武具屋で、『あの有名冒険者が愛用』なんて書いてあっても。
それは製品の品質には一切関係無いのに売れたりもする」
相手の皮肉に呵呵大笑する男。
なんとも、この相手は噂や見た目よりも気持ちいい人物だな、と。
「そうですか。よろしければ、一包みお贈りいたしますよ?
何せ、調子に乗って作らせすぎてしまったので……。
……お生憎と。コイツぁそんな上等な物でもないのですが。
噂には、えぇ、噂程度には、ですが」
相手の仕草に、くすり、と笑いつつ。
「どちらかといえば、コンコーン、って感じでは?」
などと。相手のイメージを小声で伝えつつ。
男はそこで咳払い。
「そうだ。実はお声かけしたのは……一つ依頼があってのことなのですが。
お話をさせていただいても大丈夫ですか?
それとも、オフの時はそういったお話は厳禁?」
少し表情を真剣な物にしながら、男はふっ、と息を吐く。
瞬間、空中から一つの小さな袋が出現し、男はそれを手に取り、相手に差し出す。
男の【物質転送】の呪文で取り出された、愛飲の細巻が数十本入っている袋だ。
どうやら、本当にプレゼントするつもりらしい。
■レミィ > にこにこと頷いて話を聞き。
「へぇ、それは随分とご立派な逸物をお持ちのようね。興味あるわ。
──好きこそ、ね。その通り、どっちも性に合ったってことなのかしら?
そうそう、”監修”なんて”宜しくてよ”って頷くだけでいいんだから楽な商売よね。楽だけどアタシには無理」
気取った商売トークが鳴りを潜め、己をぶっちゃけるような調子になってきた。笑顔も淑女めいた作り笑いよりは青年らしい色が滲む。
煙草についての申し出には、
「──どうしようかしら? 表向きにはもう止めたことになっているのだけれどね? ……いただくわ」
最後の一声潜めて返し、「ハンドバッグに入るだけで結構よ」と言い添える。
「──ご依頼? お仕立てかしら?
ここでお会いできたご縁ですし、なるべくお望み通りに致しましょう」
遠慮するような声には、いいのよ、と首を振って。そうして差し出された煙草の包みを受け取る。手早くハンドバッグへと仕舞いこみ。
「ありがたく頂戴するわね」
へらり、と甘い笑顔を浮かべた。
■セイン=ディバン > 「えぇまぁ。サイズと硬さ。あと回復力は自慢ですよ。
……ただ、最近歳のせいか、反りがちょっと……。って、何を言わせるんですか。
羨ましいですね。自分は……どうも、作るより壊すほうが向いているみたいで。
ははははは、確かに。言ったら、看板を貸しているだけですからねぇ」
すっかり、男も相手に気を許しているのだろう。
下ネタやら、本心やらがぽろぽろと漏れていく。
「ふふっ。持っているだけなら問題ないでしょう。
吸うのはこっそりと、とすればいいだけですよ」
これは気が利きませんで、と頭を下げつつも。
随分と調子のいい提案をする男。
笑みも、まるでイタズラを提案する悪ガキのそれだ。
「えぇ。そうなんですよ。
ずばり、シャツとズボン。あとベストを仕立てて欲しいのですが……。
見てもらったほうが早いかもしれませんね」
相手に依頼を伝えつつ、細巻を受け取ったのを見れば、にこり、と笑い、頷く男。
そうして、男は、着ていたカマーベストを脱ぐと……。
そのベストに向かい、懐からダガーを取り出し、刃を立てようとする。
だが、ベストは全く刃を通さず。それどころか、男が次々に繰り出す攻撃にも耐えてみせるのである。
炎をつけようとしても燃えず。氷結魔術の込められた小型の爆弾の爆発でも凍らず。
「……私の本業が冒険者なので。
このレベルの物が欲しいのですよ。
対刃対銃弾対燃焼対氷結対雷撃対衝撃。
そんなムチャの利く衣服が一式。……可能ですか?」
実は、今着ているこのシャツなどが、大分痛んでおりまして、と。
伝えつつベストを着直す男。
ただの服ならともかく、男の注文は随分とめちゃくちゃな物だ。
いくら相手が一流のデザイナーであったとしても。
こんな注文は、過去に無かったかもしれないであろう。