2019/05/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 地下」にルドミラさんが現れました。
■ルドミラ > 紫がかった煙のもやが、あたりに立ち込めていた。
富裕地区の地下にある一室。
四方の壁が異国風のタペストリーで覆われ、天井からは半透明な五色の布が幾筋も垂れ下がり、揺らめいている。
所狭しとクッションが敷き詰められた絨毯の上には、目の焦点とろれつのあやしくなった人、人、人──目元を仮面で覆った30数名ほどが、シェンヤン渡りの魔薬で夢見心地となっていた。
「ダメ、ダメ、ダメ。もう抜けさせて──だってあたくし、ルールがわからなくなってきてしまったわ」
カードに興じていた何人かの輪の中で、手札をばらりと床へ落とし。寝そべったままの姿勢でそう嘆いてみせたのは黒髪、白い肌の女。仮面をつけていると、細面の輪郭に肉の厚い唇が目立つ顔立ちだ。
輪の中の数人が「あら、私だってよ」「実は俺もだ」と応じると、顔を見合わせて吹き出し、いかにもおかしげに肩を震わせて笑っている──黒髪の女の常の様子を知る者が見れば、いささか「緩んだ」笑い方なのは明らかであった。
■ルドミラ > 先頃降嫁した、さる公主の「ご実家」が新旧の友人たちを王都流にもてなすため開いた宴は、有り体に言って薬物パーティー。モノは吸引してよし、酒に溶かしてよし、体内に仕込んでよしの代物であるらしい。
大部分はメロウな効き加減で談笑したり絡み合ったり、その両方を楽しんでいる様子なのだが、ガンギマった面々の中にはひたすら笑い続けている者、逆に泣き続けている者、タペストリーの天女に向かってひたすら話しかけている者もおり。効き目に多少の個人差がある分、場はちょっとした混沌の巷になっていた。
客もホストも給仕係も目元に仮面を纏っており、たとえ顔見知りであっても誰が誰なのかは推測の域を出ない──異国の楽の音と、人いきれの熱と、酒精と魔薬の香が、部屋中の人間を巻き込んで渦を巻いている……。
■ルドミラ > 誰かもわからぬ即席のカード仲間と笑うだけ笑って、笑い疲れると、黒髪の女は上体だけを起こし、耳元の髪のほつれを撫で付けた。
「はあ、はあ、ああ……少し一息入れましょ、笑い死にしてしまう前に。また後で」
皆でルールがわからなくなっているのなら皆で抜けよう、とばかり、いったんカードの輪は解散となる。男客とも女客とも頰を合わせて挨拶すると、女は両脚を横に流したまま、クッションの小山を片腕で抱くように寄りかかった。
目の前で繰り広げられる大小の混乱を眺めながら、うっとりと魔薬に酔い。給仕から差し出されたグラスを受け取り、笑いが尾を引く口元に、ワインを流し込む。
■ルドミラ > 地下の宴はいつまで続いたか。すべては煙と笑い声と、魔薬の陶酔のうちに紛れて──
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 地下」からルドミラさんが去りました。