2019/02/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2/邸宅街」にアンフィニさんが現れました。
アンフィニ > 貴族や財を成した商人達の邸宅が並ぶ街中。
綺麗に舗装された石畳に、黒いブーツの靴音がひとつ、響いた。
夜半も過ぎた通りには、ほとんど人の気配はない。
たまに聞こえるのは警備の兵が歩く音や、邸宅に帰る馬車の音。
並ぶの邸宅のひとつから出てきた黒い姿。此処には似つかわしくないと見えるかもしれない。
それくらいには、並ぶ家々はどれも瀟洒で、そして静かだった。

「尤も、中身はどうか知れたものではないがね――。」

鏡の奥で、独りごちるように声が響いた。
言葉の語るそれとは裏腹に、決して悪感情を覗かせたものではない。
視線を向けるように、鏡の仮面が出てきたばかりの邸宅を、ゆるりと振り仰いだ。
そこに住む老貴族の依頼の内容を思い出しているのか。
あるいは、彼に仕える怯えたような年若いメイドたちの顔を。

――吐息が、零れ落ちる。
嘆息でも、感嘆でもない。鏡の奥で生み出されて、そして夜に飲み込まれる類の意味のない吐息。
それをその邸宅に残して、ゆっくりと、道へと黒い姿は歩き出した。

アンフィニ > 道を歩く。小石ひとつ落ちていない程に丁寧に舗装された道。
傍らを過ぎる馬車。貴族と見える中年男と、娼婦のような派手な女。
右手に過ぎる建物の中から、悲鳴が響いたような気がする。
丹念に施された防音措置でも防げない程のそれか。
あるいは、外に聞かせる趣味でもあるのか。それともこびりついた何かの残滓か。
いずれにせよ、鏡の面を向かせるほどのものではなかった。

「嗚呼、けれど、佳い夜だ――。」

静寂というには、ささやかだけれども爛れた気配が漂っていて
喧騒というには、それが丁寧に包み隠されている。
そんな中を歩きながら、仮面の奥で独り言が淡く響いていった。
少しだけ、笑ったような声を足音に乗せる。
歩く先は平民地区の方へと。
そして、選ぶ道は少しずつ人気のない方へと向かっていく。

アンフィニ > そうして、どれくらい歩いた頃合いだろうか。
黒いブーツの足音は、いつの間にかその邸宅街より消えていった。
後に残るのは、美しく隠された欲望ばかりで。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2/邸宅街」からアンフィニさんが去りました。