2019/02/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 娼館裏」にジンライさんが現れました。
ジンライ > 春の陽気満載の日差しが注ぐ昼下がり。
豪奢な設えの、外観からは一件娼館などとは想像がつかない建物の前は、午前様をとおに超えて帰路に着く客と、それを見送る娼婦や女衒、はたまた早々としたご来館の客でそこそこ賑わっている。

その裏手、やはりよからぬ店と背後を接して娼館の裏口がある。物資の搬入口とはまた別で、人が通るためだけの最低限の狭さ。
そこにある路地までの短い階段に、腰を下ろしている男がひとり。
当然のごとく日も差さない場所で時折吹く風は寒いくらいだが、日向ぼっこでもしているように暢気な大あくびを漏らした。

ジンライ > 片手で擦った目線を落とした男の手元には小刀と木片。
そこで先ほどから木片を削ってはためつすがめつして、また削る…という事を繰り返している。足元には削り屑が山を作り始めていた。

「丸ってェのは意外と難しいもンだな…」

削りながら低く漏らす。
最初は時間つぶしに携帯用の爪楊枝作りの筈だったが、先ほど娼婦のひとりである少女から「太った子豚」と注文をくれられた。
丸っこいのに鼻と耳くらいで大丈夫だろう、と生返事で請け負ったのだが、意外と思い通りには行かず剥きになって、実はこれで3個目の木片だ。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 娼館裏」にサナさんが現れました。
サナ > 寒い夜の記憶が連なる中、被った布地越しにぽかぽかと穏やかな日差しを浴びるのはずいぶん久しぶりな気がする。

夜型の生活に偏りがちな癖して、眠っているのも勿体なく。
眠気を軽く引きずりながら、のろのろと歩く。
人の通りが多い賑わいから外れへと足は向かう。階段に腰を下ろす男の姿は何処となし絵画のよう。通り過ぎようとした足が手前で止まる。地面に折り重なる木くずから、その手元へ視線が上がり。男の頭上からは覗く影がさす、だろうか。

ジンライ > 当然人の気配は感じていたが、殺気さえなければ普段から男は一顧だにしない。しかし少女が覗きこんで落とした手元への濃い影には、怪訝そうに片眉を上げて顔を上げた。

「……あンだよ?」

少女の体格と、階段に腰かけた男との体格差で、目線は同じ程度の高さだろう。顔を上げる男に睨みつけるつもりはないが、大の大人でも怯む鋭さの視線を少女へ。対照的に、低い声はがごくごく間延びしたものだ…

サナ > 目線の高さが思いがけず近い。青灰の双眸がフードの陰から男を見返し、一つ二つと瞬いた。
見上げるなら鼻先まで隠す布地も、同じ程か少し見下ろす位なら無いも同然か。

鋭い視線と、耳朶に響く声音に差異が、著しい。白い指先がついと無造作に伸びて、男の目元を覆い隠そうとする。
刃を持つ相手の手元が危ないかもしれない。

「………何をしているのか、気になって。………魔除けの人形でも作っているの」

ジンライ > 目前に無造作に伸びた白磁の手を、ほぼ反射的に小刀を置いた手で握って横に振り捨てた。
その動作について意識さえしない様子で、鋭いままの視線を少女へと注ぐ。

「魔除け、ッてえ効果があッたら金になンだろけどな。タダの木彫りだ」

豚になる予定なンだけどなァ、と相変わらず間延びした声で言いながら、ようやく少女から視線を外して木片を見下ろした。

「木彫りの細工、珍しいのか?」

サナ > 反射の鋭さに目を見張り、けれど痛みは伴わない。
僅かによろめきながら、視線は隠せなかった男の目に留まる。
硝子玉のような双眸が男を見下ろし、

「………叩き落とさないの、」

男への返事より唇から零れたのは払い除け方への疑問。外れた眼差しに、誘われるよう手元に目が下りる

「趣味の木彫り…には、……ずいぶん苦戦してるように見える。…どうして豚?」

立ち去る気配も無く、相変わらず正面に影を落とす。

「……うん。細工を作っている処、には。あまり遭わないから」

ジンライ > 少女の小さな質問に、あァ?と口中で声を漏らして再び視線を上げる。何のことを言われたのかわからん、という顔で後頭部を掻いて

「こいつは趣味じゃねエ。ココに勤めてるやつに頼まれたンだよ、一応な」

ココ、と言いながら娼館の裏口を指す。女子供は丸いモン好きだよなァ、などと言いながら、丸というよりもまだ角の取れた立方体の木片をぽんとお手玉のように投げ上げる。

「丸くするってェなァ、風とか水に慣らすンだったら楽に出来ンだろけどな。ヒトのてでやろうとすッと、意外と面倒なンだよ」

そういってけらっと笑うと、視線の鋭さが一瞬消える。

「お嬢ちゃんは何してンだよ?」

あんまりカタギがうろつく辺りじゃなかろうに、と再び鋭い視線が硝子の双眸を見返した。

サナ > 相手の反応に、一度考えて。まあ良いか、と一度口を噤んだ。

「………ここの、」

裏口は表口に比べて、風合いがまた違う。鸚鵡返しに反芻しながら小さく首を傾げる。
丸候補の立方体を視線で追いながら、手を出すとどうなるのかと多少悪戯心が沸く。
さっきの今で手を出しはしなかったが、指がわきと怪しく動いた。

「贈り物なんだね。
………刃物がまず角張っているものね。……豚だったら、貌と、鼻も丸い。耳だけは逆三角で作れそうだね。」

和らぐ眼差しと、再び鋭さを戻す双眸。
害意が無ければ、怖くないかもしれない、と。視線を鏡写しのように戻す。
立っているのが少し疲れたか、軽くしゃがみこんで。
相手の目の前の影が晴れる代わり、手元は少し暗がりが濃くなったかもしれない。

「私は、暇つぶしだよ。今日は少し暖かいから、出歩く気になって。

……ここに悪さを仕掛けに来た人じゃあ、無いよ。」

ジンライ > 怪しく動く指にちらりと視線を走らせると、触ってみてえのか?と頓着なく球体になる予定の木片をしゃがみこんだ少女へ差し出した。

「刃だけで丸には流石になンねえから最後は結局やすりかけンだけどな。せめてもうちッと丸くなんねえかなと」

あと時間あッたしな。と付け足してまた笑う。
傍目には、人さらいが少女をたぶらかしているようにしか見えないだろう。
それくらいの治安の場所だし、男は再三警備兵に濡れ衣を着せられまくっているが、それを忘れているかのように自分の横を示した。

「疲れたンなら横、座るか?
暇つぶしってェなら俺とおんなしだ。確かに急にあったかくなったよなァ…」

お蔭で仕事に身が入んねえ、と首に手をやってこきりと鳴らした。

サナ > 小さく頷いて、両手で包むように木片を受け取る。
丸くなりつつある角を掌で擦ってみて、


「…ありがとう。これでヤスリをかけたら、綺麗になるだろうね。
…力がいる作業になりそうだけれど、……大丈夫そう。
……荒事に慣れている?」

くるくると手の中の木片を回してみながら。
しゃがみこんでいた膝をゆるりと伸ばし、隣にすとんと腰を下ろす。
しゃがんでいた時よりも、膝の長さの分だけ。視線の高さが低まってしまった。
男の肩に向かって話しかけてから、視線を情報修正する。

「うん、座る。
………これだけ暖かいと、ひとりで部屋にこもってるのがもったいない気がする。
……今は仕事中、だった?」

ジンライ > 膝に片手で頬杖をついて、隣に座る少女を見る。自然と睥睨するようになって相変わらず視線は鋭いが、よく見れば太い眉尻は少し下がっているようにも思える。

「荒事に慣れてる、てえか荒事を仕事にしてンな。ココでおいたをするような客をほっぽり出したりよ」

ココ、で再び娼館を指す。そうして少女の返答に破顔して笑った。

「そォだな、子供は外で遊ばなきゃいけねえや。こんだけあったけりゃ風邪も引かねえだろォし。
あー…仕事ッちゃぁ仕事の時間だけどよ。今そンなやることねーから、サボってたンだわ」

最後の方はがりがりと後頭部を掻きながら視線を外す。真似すンじゃねーぞ、とか付け足してみる。

「お嬢ちゃんはココら辺に住んでンのか?」

顎を撫でながら、木片を手にする少女をまた見下ろした。

サナ > 「用心棒なんだね。それほど力が無くても簡単に出来る護身術、みたいのって、あるの。
………外で遊ぶって、駆け回るようなことしてたら、それはそれで捕まりそう。一体私が幾つに見えているの」

年齢を言ったらビックリされそうな気がした。全身フードで包んでいる身からすれば、年齢の予想はたてづらいのかもしれないが。子供とまで行くと、実年齢よりずっと下に見られているような、感じがする。

「……さぼれるくらい長閑な方が、良いような気はするね。……真似させてもらおう」

大人の忠告にはさらりと首を横に振る。説得力がない、と小さく笑って

「そうだね。特定の住処があるわけじゃないけれど。最近はこのあたりにいるよ。
治安が悪いようで、やさしい人も多いね。このあたりは、」

木片をくるくると回して、相手の手に差し出す。ありがとう、ともう一度付け足して。

ジンライ > 護身術ゥ?と素っ頓狂な声を出すとけっけっけと笑って
「やめとけやめとけ。下手に手ェだすよか、逃げ足を鍛える方がよッぽど使えンぜ。
…駆け回ると捕まるって、おめえさん、お尋ねモンか何かか?」

幾つに見えるの、と訊かれるとガキだろ、とまたけけけと笑う。そうして腰の後ろから煙草を探って取り出した。

「…おめー、俺を見習ったら確実に悪ィ大人になッからな。止めとけよ」

お前のとーちゃんとかーちゃんに申し訳立たねーし、と言いながら、ごつごつしている割に指の長い手で木片を受け取る。
少女の返答に、唇に加えかけた煙草の手を止めて

「何だお前エ、宿無しかよ?」

訝しげに見下ろしながら、断りもなしに煙草を咥えてマッチを擦り、火をつける。

サナ > 「…えー。…………急所蹴り上げるとか、ダメなの。
………お尋ね者…ではない、けど。駆け回ってると怪しい奴だ、って、なると思うよ。ガキじゃない。」

言い返しながら、説得力が無いと受け流される奴だと半眼になる。
ぐ、と上肢を乗り出して。
反射で払われることが無いよう、今度は、今話している自分が相手にちょっかいを出しているんだと視認させるよう。
相手の目の前に極力ゆっくりと手を差し出す。煙草の側面を指先で挟み込んで、抜き取ろうとする。


「ガキの前で煙草吸うなんて、確かに悪いオトナだね」

にこりと笑って、意趣返しを試みる。

「うん、宿無し。……止めとけって、素行不良だって宣言するの。」

ジンライ > 「アホ、必ず急所ってエ全員決まってる訳でもねーし、お嬢ちゃんの力じゃなンともねえって輩も山ほど居ンだよ。
駆け回るくらい、大人の男がやってたらちっとヤベーけどよ、女子供なら見逃して貰えンじゃねーの」

意外と真面目な説教を施して、ふーっと煙を細く吐き出す。
視線は少女の白磁の手の動きと同じく、ゆっくりと動く。
煙草が抜き取られそうになればすいとその指先から器用に煙草を反対側へと離して不機嫌そうに睨み付けた。

「盗ンじゃねーよ。なけなしの楽しみなンだからよー」

悪い大人だと言われれば「解ってンじゃねーか」けけけとまた笑う。
少女の指を目前から、少し指を絡めながら押し返す。そうしてまた煙草を口元へ咥えて

「よく冬越せたなア?」

この国にきて、色んな人種を見た…何があろうと言われようと、今更それほど驚くことはない。

サナ > 「…………ええ、当てることが出来たら、貴方だって悲鳴の一つ位、上げると思うな。目とか。股間とか。」

力より場所で。と。状況を想定するよう片膝を真上へしゅっと繰り出す動き。

ぱちぱちと目を瞬かせ、首を男の反対側へとひねり。肩が小さく揺れる

「……………ふっ、」

何を想像したのか。しばらく肩を小刻みに震わせて笑いを堪える。

「ああ、苦しかった………。」

目じりの涙すら拭いながら一言。手に視線を感じると、また一寸笑ってしまう。
不意打ちが難しいから、見て貰った方が、良いらしい。
けれど目標はかわされて、指がただ宙を切る。
ほんの少し残った温みに、丁重に返品された手がふらりと揺れた。

「……もっと我慢出来たら、きっともっと美味しく吸えると思うよ。」

煙草の細い煙が鼻孔に絡む。独特の香り。

「何とかなるものだよ。………煙草の匂い、身体に残るよ」

ジンライ > 「当てられればな……俺で想像してンじゃねえよ」

その可能性は一顧だにしない。
小刻みに震える背中はじろりと半眼で見るが、振り返った少女が涙を浮かべているのにけっと声を漏らして視線を前に放り、また深く煙草を吸う。

「そーやって言うやつも居るけどな。俺ァ我慢ってェのが嫌いな性質なンだよ」

何に対してもな、と今度は口と鼻両方から煙を吐き出して見せる。

「まーそういう悪ィ大人にゃ近づかねえこッた。碌な事になんねえぞ」

今度はわざとらしく凶悪な笑みを浮かべながら、横目で少女を見やった。

サナ > 「……ちょっと面白かった」

大真面目に頷いて見せる。立ち上がるとゆっくり身体を伸ばし

「……知ってる?警告するのは予防線で、俺に悪さをするなって、牽制しているんだよ。
これは近づいた内に入らないよ、貴方のことは怖く無い。
きっと、利害が対立しなければ、怖くならない」

緩々頭を振ってあたりを見回す。
ひと時の休憩の終わり。ばいばい、と手を振って歩き出す。

ジンライ > 「お嬢ちゃんに悪さされたって怖かねえよ」

寧ろ可愛いンじゃねえの、とけけけと笑って返す。
手を振る少女にこちらも手を上げて

「まーお嬢ちゃんと対立するこたねえと思うけどな。おう、気を付けて帰えれよ」

言ってから宿無しなンだっけか、と脳裏に掠めて

「宿、困ったら言えよ、何か出来るかは保証しねえけど」

そう、背後に声を投げて、こちらもよっこらしょと腰を上げた。木片を拾って(仕事に戻るか…)だるそうな足取りで、娼館の扉へ手を掛ける…

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 娼館裏」からサナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 娼館裏」からジンライさんが去りました。