2018/10/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にアシュリーさんが現れました。
アシュリー > 白い騎士服に身を包み、腰に剣を提げて富裕地区の町並みを歩く。
日も暮れてしばらく経った街。"表通りは"今日も治安がよい。

「ふんふ、ふん♪」

鼻歌交じりに、巡回も兼ねてウィンドウショッピング。
何か面白そうなお店はないかとあちこち覗き込みながら、少女は街を歩いていく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にジーヴァさんが現れました。
ジーヴァ > ゆったりとした時間が流れる表通りに、路地から一人の男が乱入する。
裸の上半身に青い竜の刺青を施し、粗末なズボンを履いた、いかにもごろつきといった風情の男だ。
彼は腕から血を流しながらも必死に走り、店が立ち並ぶ通りを駆け抜けていく。
それを後ろからフードで顔を隠したジーヴァが追いかけていた。

「野郎、このまま逃げようったってそうはいかねえぞ……
 ……誰か捕まえてくれ!そいつは俺の本を盗みやがった!」

確かに男の手には一冊の革張りの本が握られ、銀の装飾が施された豪華なものだ。
男はそれを持ったまま走り、やがて少女へと近づくだろう。

アシュリー > 「あら?」

なにやら前方から騒がしい声。
泥棒だのなんだのというワードが聴こえてくる。
やれやれ、この富裕地区で盗みなんて嘆かわしいことですわ。
しかしこのアシュリー=ロンディニアの前で罪を犯したことが運の尽き。

「お任せなさい坊や、わたくしが華麗に取り押さえて見せますわよ!」

堂々と名乗りを挙げ、泥棒の進路に割り込み――
超かっこよく華麗かつ優雅に抜刀したら剣が手からすっぽぬけ、柄が泥棒の顔面にクリーンヒット!

「………………………………」

しっかり抜いたはずの剣が消えた手を呆然と見て、
それから泥棒がすっ転んでダウンしているのを見て、
その横に転がる愛剣を見る。
最後にフードの少年を見て、ふんすとドヤ顔。

「このアシュリー=ロンディニアが華麗に泥棒を制圧いたしましたわ!!!!!!」

ジーヴァ > 威勢よく名乗りを上げる少女の前で男が止まり、人質にでもするつもりか手を伸ばそうとする。
それを見て即座にジーヴァは貫きの氷槍を唱えたが――

「我が敵を縫い止めろ、貫きの――っておい!
 そんなのありかよ……」

男の顔面に運悪く直撃した剣は石畳に転がり、ついでに本も落ちる。
何であれ男から本を"奪う"ことができたのは好都合だ。分厚い装丁の本を拾い上げ、軽くはたいて埃と汚れを払う。
とりあえずは自信に満ち溢れる少女のおかげで助かった以上、礼を言わなければならないだろう。

「あー……ありがとう。俺はジーヴァ。こいつに魔術書を盗まれて困ってた。
 何か礼をしたいんだけど……金のかかること以外で」

フードを目深に被ったまま、自分より背の高い少女に向けてやや申し訳なさそうに金の入った布袋を見せる。
ちゃりちゃりと音を立ててはいるが、その音は軽く、あまり内部に入っていないことを示していた。

アシュリー > 「よいしょっと」

制圧した泥棒の両手首を器用に縛り上げ、剣を拾って立ち上がる。
まったく。どこの誰だか知りませんけど、盗みなんてやっちゃダメですわよ! と軽くぷんすこ。
剣を鞘に収めたところで少年に再び目を遣って

「お礼は無用ですわ。治安維持は騎士の職務! 
 眼の前の悪事を見逃すことなど出来ないのですから!」

にこりと微笑みかけ、それからあっと手を打って

「でも、調書を取りたいので詰め所まで一緒に来ていただいてもいいかしら。証言がお礼、ということで」

危ない危ない。このままはい解決で被害者を返したのでは、先輩騎士に叱られるところだった。
再発防止とか、犯人の罪を量ったりとか、なんやかんやの諸々
……よく覚えていませんけど、とにかく被害者の証言も取る。これ大事。
思い出せてよかったですわー、と胸を撫で下ろしながら、犯人の襟首を掴んで少年に動向を求める。

ジーヴァ > かなり不味い状況、というのがジーヴァの正直な気持ちだ。
正直にあの男が証言するならば、無名遺跡から拾ってきた本を周囲に自慢していたら
フード付きローブの男たちが突然やってきて強引に交渉してきたので追い返したら殺そうとしてきたので逃げた、と全て言うだろう。
今はまだ意識を失っているが、目を覚ませば間違いなく言うだろう。そうなれば次に危ないのはこちら。

「お、おう……証言ね。証言は大事だよな。すごく大事だ。
 この泥棒野郎が何言いだすか分かんねえからな、とっとと終わらせちまおう、うん」

いざとなれば詰め所程度の警備なら突破して逃げ切れる自信はあるが、それでも
この地区での活動がやりづらくなるのは避けたいところだ。とにかくこの男が起き出す前に、調書を作ってしまわなければならない。
アシュリーと名乗った少女は騎士らしくはあるが、先程のすっぽ抜けを見る限り、いざとなれば彼女も人質にできるだろう。
そうやって色々算段をつけながら、ひとまずは詰め所へと大人しく同行していく。

アシュリー > 「ですわですわ! 悪い人は罪を軽くしようとすぐ嘘を吐きますもの。
 でも悪い人とは言え、一般の人が怪我させるのはよろしくありませんわよ?」

少年を詰め所に連れて行き、先輩騎士たちにぺこぺことお辞儀をしてから、泥棒捕獲のお手柄を自慢してまわる。
八割の先輩に信じてもらえなかった。
むしろ犯人が怪我してるぶん、被害者が自分で取り押さえたんじゃねえのとか、
そもそもそいつホントに犯人かよ、とか。
皆さん好き勝手酷いですわ! わたくしだってやる時はやるのに。
なんて文句をいいながら犯人を仮眠用ベッドに括り付け、隣室に少年を案内して椅子に座らせる。

「はい、ではえっと……名前と住所を改めて教えてくださいませ。
 あとは……被害にあったものが何か、とか。どんな状況だったか、とか詳しく」

眼鏡をくい、と持ち上げて知的アピールしながら、ランタンの明かりの下で調書にペンを走らせる。

ジーヴァ > 騎士が通り過ぎるたびにお辞儀をする少女を横目に、ジーヴァは構造を記憶する。
壁の薄い部分、階段の位置、窓。いざとなれば竜の吐息でどこを吹き飛ばすか、決めておかなければならない。

「そりゃまぁ……盗人に石ぐらい投げりゃ傷もつくだろう、気が立ってたし」

実際にジーヴァに飛んできたのは石どころかナイフだったのだが、特に話すことはないと彼は判断した。
男は幸いまだ意識を取り戻してはいない。とにかく迅速に調書作りを終わらせる必要があるだろう。
作りのいい丈夫な椅子に座り、アシュリーの質問に手早く、出まかせとでっち上げで答えていく。

「名前はジーヴァ・コンスタチン。ウイネス通り3番の一軒家に両親と一緒に住んでる。
 盗んだのは俺が行商人から買った魔術書。中身はまだ読んでないから知らねえ。
 家の前でいきなり俺が持ってた本を盗もうとしてきやがったから追いかけてたんだ」

魔術書の中身は既に知っていた。氷と水を操るさいに発生する自然現象について書かれたもので、
街一つ覆えるほどの天候魔術のやり方なども記された貴重なものだ。正直、王城の書庫になかったのが不思議なほどの逸品。

アシュリー > 「ふんふん……家の前で。そのときご両親に助けを求めたりしませんでしたの?」

少年が強行脱出まで考えているとはつゆ知らず、マニュアル通りに質問をして一連の出来事を纏めていく新米騎士。
一方で先輩には犯人の介抱と尋問をお願いしてある。
ジーヴァくんには悪いですけれど、両方の調書が出来上がってから矛盾のすり合わせも必要になるだろう。
もうひとり、暇そうにしていた先輩に聞き取った住所のご両親にジーヴァくんを保護したこと、
調書を取るためもう暫く詰め所でお預かりすることを伝えに行ってもらうようお願いして。

「見た目が高価そうですからねえ。お金に困ったなら欲しがるかもしれませんわね。
 ちょっと中を見てもよろしくて?」

ジーヴァ > 「親父もお袋も王城で働いてるから、俺は夜遅くまで大体一人さ。
 まったく、教育ってやつをする気があるのかね?」

コンスタチンと名乗って王城で働く者は確かに実在する。
ただしそれはアルマゲスト所属のメンバーであり、証言の口裏合わせをするのは容易なことだろう。
そちらは問題ないとして、問題は男の方だ。
こうして離れてしまえば口封じもやりづらく、間違いなく証言の矛盾を指摘される。
そうなる前に……どうするか?

「ああ、見てもいいけど汚さないでくれよ。
 2000ゴルドもしたんだからな、それ」

ローブの中に隠した銀の錫杖に魔力を込めて、脱出の準備をする。
おそらく内部構造的に、ここの壁を吹き飛ばせばすぐさま逃げられるだろう。

アシュリー > 「2000ゴルド「も」……」

うーん、確かに平民にしてみれば決して安くないでしょうけれど。
豪奢な割にめちゃくちゃ安いですわねえ、なんて。
こんな古書、10万ゴルド以上だと踏んでいたのですけれど、と思えば、そのくらいの金額で神経質になる少年が年相応のようで微笑ましい。

「大丈夫ですわよ、ええ、綺麗に読みますわ」

ぺらぺらとページを捲る。難しい魔術理論はよくわからないが、確かに価値の有りそうな。
たとえばこの、空気の中の湿気から雲を作って雨を降らす魔法なんかは、うまくやれば干魃や猛暑の対策に良いのではないかしら。

「ふむふむ……ねぇ、ジーヴァくん。これはとても貴重なものだと思いますの。
 わたくし、適正価格をお支払いいたしますから、証拠品として記録が終わった後はお譲りいただけません?」

欲しい。自分が理解できるかはさておき、この魔法書には可能性がある。
苦しむ民を少しでも救うことが出来る可能性が、秘められている。

ジーヴァ > 年齢に合わせて不自然でない値段のつもりで言ってはみたが、
逆にまずかったか、と相手の態度から察する。騎士ということは相手は貴族、金銭感覚がここまで違うとはジーヴァは思わなかったのだ。
まさかの買い取りという提案に、隠し切れないほど大きな舌打ちをしてしまう。

「……チッ!これだから貴族って奴は大嫌いなんだ。
 その魔術書の本質を理解してねえ!」

相手の顔が悪意がまったく感じられない、善意と使命感に満ち溢れた古き良き貴族の顔であるが故に、
この国の腐敗した貴族たちがどれほど私腹を肥やすために魔術を悪用しているかを知っているジーヴァには、さらに憎らしいものを感じさせる。
貴重な知識、魔術、物理法則の真理。先人たちへ敬意も払わず、彼らはそれを溜め込んで悪びれもしない。
アシュリーも結局その類かと、本性を隠すことなく感情をぶちまけた。

「いいか、その魔術書はな!
 下らない貴族の遊びに使うもんじゃねえ!俺たちが、天に辿り着くための知恵の一つだ!」

アシュリーの眼前に銀の錫杖を突きつけて、魔術書から下がるように促す。
もし動かなければ――4つの氷槍が喉元めがけて放たれるだろう。