2018/10/09 のログ
■アシュリー > 「あうっ」
頭に乗った手が重たく、温かい。
上官の手というものはこういうものか、と感慨深くなるもので。
思えば、ロンディニア家騎士団ではどこまで行っても「お嬢様」だった。
置き去りにされたり、訓練でひぃひぃ言わされたりはしたけれど、上官と部下、戦友同士のような関係はなかった。
此処が、初めて胸を張って言える、わたくしの居場所になりますように。
――と、ノワールさまの手のひらに願いながら、ぽんと叩かれただけでよろめく。
「……は、はい! 光栄です、ノワールさま。
父上にもうなずいてもらわないと、ですわね。皆様もよろしければ。お仕事の後でお疲れでしょう、お茶くらいなら……」
もしお仕事のお邪魔でなければ、と先輩方にも声を掛ける。
急な来客だが、昔からわたくしが思いつきで人を招いてもシャーリィはしっかりと歓待の準備をしていた。
以心伝心の侍女兼護衛騎士が居ると、色々と助かりますわね。
――なんて無責任に考えている背後で、マジかという顔の女騎士が全力疾走で帰っていく。
「はい、当然ですわ。皆様も上官は最低限敬うべきでしてよ。
なにもガチガチに上下関係を固めずとも、しっかりとした規律があるように見えれば実力以上に強く見えます。
そうしたら、きっと悪い人も今以上に「あの十二師団に目をつけられると怖いので大人しくしよう」って思いますわ」
人差し指を立てて、ふふんと得意げに語る新米騎士。
果たして、一人前になるまでどこまで迷惑を掛ける羽目になるのか。
そも、一人前になることが出来るのか。十二師団の先輩たちが背負い込んだド級のお荷物は、脳天気な顔で家への道を案内していく――
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からノワールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアシュリーさんが去りました。