2018/08/13 のログ
■紅月 > 「…今ならイイ魔石作れるかも」
ふと思い立ってしまうのは、やはりというか物作り。
料理であれ裁縫であれ、はたまた鍛治や農耕の類いであれ…物作りが好きなのは最早、大地の精霊の性質とか本能のような物である。
思えば、やはり地精の母も細工物は好きだった。
「どうせ、誰も来ないだろうし…」
腰掛ける崖…というほど高くもないのだが、下には何処から通じているのか坂道がある。
しかし裏道の一つなのだろうか、人通りは少ない方だろう。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にエンデさんが現れました。
■エンデ > その道を通ろうと思ったのは、何かの気紛れだったか。
宴の始末も終わり。帰路。
トランクケースを片手に富裕地区を歩いていた。
“どうせ誰も来ない”なんて言葉を裏切るように坂道に黒い影が差した。
頭まで完全に黒い仮面で隠した姿。
坂道の下で見上げれば――落ち着いた足取りでそこを昇っていこう。
夜の中に茫洋と輝く仮面の中心の赤い十字のスリットだけを頼りにするように――。
「こんばんは――。」
そして、屹度程なく、先客の姿を視線が捕らえる。
誰か、を確かめる前に緩やかに言葉を投げかけた。
仮面越しでもよく通る落ち着いた声音。
■紅月 > 「ふふっ、何がいっかなぁ…やっぱり光を灯すコかなぁ?」
掌に爪を立てれば、プツリ、と小さな音を鳴らしてジワジワと赤い小さな泉が湧き上がっていく。
ピキリ、パキリと微かな音をたてて泉の水を吸い上げ…透明の中に小さな炎を閉じ込めた、掌サイズの大輪の薔薇の蕾が育ち、じきに満開に届こうとしていた其の時。
「……っひゃ!? わ、わわっ…」
不意に、声をかけられた。
ビクリと肩が跳ねる、と共に…うっかりと手元が狂い、宙を舞う灯火の花。
…視線で追えば、漆黒の男の方へいったらしい。
■エンデ > 仮面越しの視線。
赤く光るその先に見えたのは華だった。
坂道を上り終えて、声をかけるまでの数瞬の間に大輪の薔薇が女の掌に育って――
美しく艶やかなその花弁を開こうとした瞬間
――無粋な、挨拶が零れ落ちてしまった。
宙を舞うのは花弁か、花か。
己の方へ来るそれに向かって黒い手指を伸ばすけれども、きっと留めることは叶わない。
「すまない――邪魔をしてしまったようだね。」
故に、彼女に向けるのは詫びる言葉だった。
表情を見せることは叶わない。柔らかな声音に感情の色は殆ど点らないから
だから、ゆっくりと、頭を下げた。
詫びる感情は伝わらなくても、詫びる形は礼として伝わるだろうか。
その手から散った薔薇のような艶やかな彼女に。
■紅月 > コンっ、コロリと土の上を転がった薔薇…まがりなりにも魔石製の、それも咲きかけた薄い透明の花弁の詰まった花。
繊細な見た目に似合わず存外頑丈であるらしいそれ…漆黒の男の足下へ転がると止まりランプのように穏やかに照らす。
「え、あ、いやいや…全然!
やだもう私ったら、気配に気付かないなんて…ふふっ、こんばんは」
頭を下げる男性の声に、思わず無傷の右手をブンブンと振りながら声を返す。
そして、そのまま右手を頬に当てて恥じらいつつ一度目を逸らし…また紫の瞳を男へと向ければ、微笑んで挨拶を返す。
「…もし良ければ、こっち、来ません?
此処、街明かりが綺麗なの」
微笑んだまま、手招きを。
男がこちらに歩み寄る気配を見せれば、左手に再び溜まり始める血をコクンと飲み下して片付けようか。
■エンデ > 足元に転がる魔石。
それに空いた片手を伸ばして拾い上げよう。一瞬、仮面の奥の瞳がそれを見詰める。
「ああ、見事だ」なんてささやかな言葉を零してしまうのは仕方がないだろう。
そのまま、ゆっくりと近付いていけば
「ああ。こんばんは。」
微笑むことはできないが柔らかで落ち着いた声音が、女に向けて返される。
紅化粧を帯びた瞳を、紅い十字が見返す。
そして、誘うような言葉を聞けば――静かに一度頷いて歩を進める。
ほとんど、足音のしない歩調。それで近付いていく狭間。
視線に止まった仕草。右手の石と一瞬、見比べて。
「怪我をしているのかい?いや、おそらくは血を媒介にしたのか…。
私でよければ治療するが?」
そんな言葉を投げかけよう。
言葉が届くころにはもう彼女の傍らに在る黒衣の姿。
片手には、煌めく灯火のような魔石をひとつ。求められる前に返すつもりだけれども。
その前に、怪我の様子を問うのが先で。
■紅月 > 男から返される声は穏やかな物…仮面の下で微笑みでも浮かべてくれているんだろうか。
近付く足音…は、殆ど聞こえない故、これは気付かなくても仕方ないなぁと密かに思いつつに。
そもそも、気配も何だか変わった感じである。
…おそらくは、己のように"不思議な何か"なのだろう。
「あ、じゃあ…お願いしよっかな?
あぁでも、どうしよう…?
もし気に入ってくれたんなら、もう一輪、満開の作ろうか?」
それ…と、生まれたてだというのに立派にランプの役割を果たしている花を指差して。
咲きかけも風情があるが、やはり人気が出やすいのは満開…とりあえず問うてみようと。
■エンデ > どんな表情を浮かべているのか。あるいは浮かべていないのか。
赤い十字の視線しか向けない黒い仮面は隠して見せない。
けれど、それでも伝わるものがあればいい。例えば穏やかな声の調子とか。
互いに感じる違和感とか。この世界から少しずれているような感覚とか。
「ああ。勿論だとも。
と、申し遅れたね。私はエンデ。医者をやっている。」
言葉と共に、まずは魔石を一度返すとしよう。
黒の医術者とも呼ばれる名前。それを女が聞いたことがあるかどうか。
尤も、そんなことに彼は拘泥しない。「手を出して」と告げ
彼女がそうしてくれるのならば、トランクケースから取り出した消毒薬や包帯で治療をはじめるんだろう。
「いや、せっかくの申し出だが、そこまでしてくれるには及ばないよ。美しいお嬢さん。
美しいものは、記憶にとどめておけば充分だからね。」
問いかけに応えるのはその狭間。
柔らかく、けれども静かな声。首を一度振ってみせよう。
その間も治療する手は止まらない。まるで機械のように丹念に静かに。
「それに…」と言葉を微かに紡ぐ。彼女にだけ聞こえるように。
■紅月 > ふわりと微笑みかけて、灯火の花を受けとる。
ついでだからと彼のトランクの近くに置いて…鞄の中身が見やすいように。
「えんで…んっ、エンデ?
何だっけ、"黒の医術者"とかって旅の人が…え、あ、ごめん」
その名に聞き覚えがあって、思わず仮面の赤い十字を見詰める…「都市伝説じゃなかったのね」なんて呟きが聞こえるだろう。
数拍呆けていたが、声をかけられ左手を差し出して…やっぱり、興味深げに鞄の中身や仮面の奥へと視線を向けるのだ。
ワクワクと、子供のように瞳を煌めかせて。
…けれど、彼の囁くその言葉を聞けば。
やはり数拍惚けてしまうのだろう。
そして、徐々に頬が色付いてゆき…先程までの好奇心は何処へ行ったのか、気恥ずかしさですっかり目を合わせられなくなって。
「…え、えぇと……わ、っ私は、コウゲツ。
東の果ての地にては紅の月と書きまする。
……っそ、その、普段は冒険者…最近は、採取家だったり治癒術師してる方が多くなっちゃってるけど」
照れを誤魔化すためもあり、顔ごと目を逸らしたまま自己紹介をしようとするものの…やっぱり何処か、しどろもどろ。
■エンデ > 「ありがとう」とささやかな気遣いに感謝を。
鞄の中身は灯りても、紫の視線でも見通すことは叶わないのだけれども。
暗く深淵にも似たその中に手を入れれば、魔術のように治療道具が出てくる。
「気にしなくても構わないよ。
都市伝説や怪談の類、とは言われ慣れているからね。」
子供のように好奇心に満ちた目から、急に頬を赤らめる。
ころころと表情の変わる様に、小さく吐息が零れる。
嘲るようなそれというより、どこか穏やかな笑い声に似た色合いのそれ。
「紅の月か。なんとも君に似つかわしい名前だね。
なるほど――けれど、だからこそ傷は大事にした方がいい。」
視線を逸らしながらの彼女の自己紹介。
その間に取った手を消毒して、そしてささやかに包帯を巻き終えるだろう。
しどろもどろな様子に、また、仮面の奥で柔らかく吐息が零れる。
「失礼」と断って伸ばした右の手が、適うならば柘榴石のような髪の毛に触れようと。
触れれば黒革の滑らかな手触りが髪の毛を少しだけ撫でるだろう。
まるで子供を宥めるような所作。
■紅月 > 残念、魔道具の類いだったか。
「どういたしまして」
と言いつつに…思いっきり覗こうとしていただけに、内心で舌を出す。
「アレよね、凄腕さんになったり神出鬼没だと必ず出るよね…珍獣扱いしてくる人たち。
……も、もうっ…紅をおだててもお菓子しか出ませんよぅ?」
怪談扱いは身に覚えがある故、思わず苦笑してしまう。
しかし、それより何より…美しいとか月が似つかわしいとか、何だかもう顔が熱くて仕方ない。
むしろ耳の先っぽまで熱い気がする。
拗ねたように言えば、手を伸ばす彼。
…不思議そうに目を向ければ髪に柔らかい感触。
照れながらも嬉しげに微笑んで、撫でる手を受け入れるだろう。
■エンデ > 「残念。」なんてまるで心を読んだような一言。
治療が終われば古びたトランクケースはパタン、なんて音を立てて閉じてしまう。
その中を見せることは誰にも適わない、というように。
「それは仕方のないことだろうね。
それにだ――存外、怪談や都市伝説の類というのも間違いじゃない。」
穏やかな声音が苦笑に応える。
落ち着いたその低い声音は、それでも構わないというように。
黒い仮面の下でやはり、その表情は見えないのだけれども。
「おや、お菓子くらいは出るのかい?
けれど、この無礼を許してもらえるのならば、充分だろうね。」
柔らかく指先が滑る柘榴石の髪の毛。
触れる指の感触は、薄い黒革越しでも人のそれと変わらないように
或いは、変わらないように調整しているように感じるだろう。
夜の風がそうするように、微笑む女の髪の毛を撫でる指先、そして――。
そっと、唇に乗せた囁き声がまた、ひとつ。
■紅月 > 心を読んだような一声に「えへへ…」と緩く笑って。
彼の言葉は、噂に惑わされないと言うことか、それとも丸っきり無関心なのか…否、この口調は"そのまま"の意味かしら。
言葉の真意を見抜こうにも、仮面に表情があるわけもなく。
「……別に、無礼じゃないよ。
エンデの手は、結構好きだもん」
また、小さく囁かれるその声に…つい、髪を撫でる黒革の上に掌を重ねて。
■エンデ > 緩く笑う様に少し頷いてみせる。
次いだ言葉。その真意は語ることはしない。
表情のない仮面に包まれた顔は結局、何も語ることはない。
なれば、女の髪の毛に触れる手指。薄い黒革越しの感触だけ伝わればいい。
「それは光栄だね。紅月。」
短く紡ぎ出した言葉。
そして、重なる指先と、触れ合う微かな言葉に手を止める。
赤い十字が女の方を見る。風に乗った声は確かに届いたとわかるだろう。
「――確かに。夜も随分更けたからね。」
柔らかく響く声。そのまま、彼女の指先を絡めとってしまおう。
まるで黒い夜の雲が、紅い月を隠すような仕草。
女が従ってくれるのならば、そのまま、二人何処かへ歩き始めていくことだろう――。
■紅月 > 視線を感じ、頬を染めたままおずおずと彼の赤い十字を見詰める。
その奥に瞳を見付ける事は出来なかったけれど…僅かに、時が止まったような気がした。
囚われる指先、彼の優しい手に引かれるまま…惹かれる、ままに。
「エスコート、してくださいませ?
朝が来る…その前に」
…紅く煌めくお月様は、黒く暗い夜に拐われてしまったのでした。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からエンデさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」から紅月さんが去りました。