2018/06/02 のログ
ご案内:「マグメール 富裕地区/音楽堂」に紅月/アカツキさんが現れました。
紅月/アカツキ > ーーーべん、べべん。

音楽堂のパーティーホール…其処に、三味線の音色が響く。
壇上に座すのは紅髪の大柄な花魁、顔は黒いベールに隠され見えない。

いつもこの音楽堂で弾くときは個人契約で雇われて、コンサートホールにて他の楽士達と演奏を楽しむ紅髪であるが…今日は少し、事情が違った。

今、周囲にいるのは楽士仲間などではなく…貴族や騎士等々、身分の高い者ばかり。
紅月個人的な感想を言うのであれば、決して楽しいものではなかった。

紅月/アカツキ > ある日、冒険者ギルドに緊急招集がかかった。

秘密裏に、隠密を得意とする猛者や上級冒険者のみにかけられた招集…そこに、何故か紅月の名があった。
無論、大層困惑したとも…ギルドの受付嬢と談笑してたら急に腕を掴まれ、かと思えば何も説明されず奥へ奥へと連行されるんだから。
呼ばれた理由は単純明快、音楽堂に顔が利く・自衛が出来る・女顔。
…最後の一つはなかなか酷い言いぐさである。

お仕事内容は、なんてことはない演奏依頼である。
…紅月のみが。
本来の目的は、そのパーティー会場に現れる麻薬密売の噂がある腐敗貴族と、それを支援している連中、いつもその貴族に付いてまわってる悪徳商人その他の一斉捕縛もしくは排除。
つまり、早い話がゴミ掃除である。

幾人かの騎士を仕掛人として潜り込ませて、華やかなパーティーを楽しんでる連中を包囲し、捕縛。
敵方の行動如何によっては排除に切り替える。
紅月は最近音楽堂に現れたばかりな上に、貴族からの演奏依頼は全く受けていないから…希少品好きな貴族共へのイイ餌になると、そういう事らしい。

…えぇと、なんだ。
一部の者のみにとはいえ、冒険者ギルド内に女装依頼を受けてる事を勝手に暴露されたと。

ギルドマスター、職権乱用って言葉知ってます?
…そっぽを向かないで下さい、そっぽを。

紅月/アカツキ > …そんな訳で、だ。
ベールの内の、すまし顔のその向こう…紅月は内心、物凄く荒れていた。

その機嫌の悪さといったら…ベールを纏った瞬間にフッと掻き消える怒気と気配の温度差に、当日早朝に待ち合わせて最終打ち合わせしていた腕利き冒険者共がドン引く程だ。
もしかしたら耳のいい者は聞き取っていたかも知れない…そんな彼をからかった命知らずが、紅月に蔑んだ眼で見られた挙げ句に「ブチ犯すぞこの野郎」と囁かれていた。

友人達にはとても御見せできない有り様である…色々な意味で。

紅月/アカツキ > べべん、と、三味線の音色が響く。

会場内ではやれ税収がどうだの性奴隷の具合がどうだのと、ろくでもない会話がそこここで行われており…正直、げんなりする。
げんなりする理由はそれだけではない。
…己に、下卑た視線が刺さってくる事も大きな理由の一つである。

この会場にいる者は皆、今の己の肉体が男の其れと知っている筈なのだが…男から、なんと言うかこう、色めきだった視線を感じる。

居たたまれない…が、これも仕事である。

紅月/アカツキ > 嗚呼、臭い臭い。
精神を喰らう、毒物のにおいだ。

どこからともなく漂ってくる、それ。
おそらくこの臭気が麻薬のものなのだろう。
不快である。
どうせ嗅ぐなら香油の香りか、もっふりとした毛皮から香るお日様の匂いがいい。

毒々しい貴族令嬢の香水臭にも、脳をデロデロに溶かす麻薬にも、ついでに言うなら地位名声の類いもどうでもいい…自分にとっては全て面倒なものにしか見えない。

…じゃじゃっ、べんっ、じゃかじゃじゃっ!!

曲調を変える。
早弾き、ノリのいい激しい旋律。
麻薬使用現行犯が増えてきた事を知らせる為の合図である。

…これでもうじき、掃討もしくは捕縛の為の突入が始まる筈だ。

紅月/アカツキ > 冒険者達の突入。
混乱、悲鳴、刃物の摩れる音に呻く声。

混沌とした会場…さもありなん。
内外から奇襲されればそうもなる。

ハァ、と溜め息ひとつ。
ささっと楽器を片付け始める。
どうせもう聴くものはいない、撤退しようが叱られまいて。
楽器を虚空に仕舞えば、壇上を降りて真っ直ぐ出口へと歩を進める。

から、ころ、から、ころ…阿鼻叫喚の中に響く、下駄の音。
冒険者に襲われない所を見て襲撃者の仲間と悟ったか、襲い来る者らを鉄扇で吹っ飛ばす。
本職芸妓の其れとは似ても似つかぬだろうけれど、まぁ…舞っている様には見えるだろうなぁ。

紅月/アカツキ > 「全く…俺は只の傍観者なんだ。
わかったら疾く散るがいい…今日は、機嫌が悪い」

から、ころ…歩を進めながら宣う。
忠告はした、それでも襲おうという者に関しては、もう何も保証しない。

少々手荒く花道を作りながらの花魁道中。

「……、…御機嫌よう」

扉を開き、後ろ手に、閉めた。

ご案内:「マグメール 富裕地区/音楽堂」から紅月/アカツキさんが去りました。