2018/01/01 のログ
ご案内:「富裕地区 大商人の邸宅内」にミーシャ/シャーリィさんが現れました。
ミーシャ/シャーリィ > 王都マグメールの富裕地区に建つ大商人の邸宅内。
当主の娘が未婚で生んだ魔族の血を引く令嬢ミーシャはミレー族のメイドのシャーリィと共に自室でくつろいでいた。
未婚の母だったとはいえ、彼女と魔族の王子の恋仲は両親公認、親族に祝福されたものであった。
だから二人の間に生まれたミーシャがその血筋ゆえに肩身の狭い思いをすることはなかった。

ただ、彼女は人間の社会で人間の母に魔族の姫として育てられた少女。
そのため周囲の人々とは少しばかり感性が違っていた。非常識、と言い換えても良い。
そのような部分を見てお仲間だと思われるのか、ミーシャはおかしな人に目を付けられることが多かった。
魔族の貴人の血を引いているから、生まれつき魔力は高く、特殊な魔術を難なく使える。
14歳の少女相手にイキるしか能のない異常者程度であれば消し炭にできるはずだった。

しかしミーシャのすべきことは、魔族の血を引く人間として人の世に知られることではない。
魔族としての力と品格を備え、一人前の姫となって魔族の国に“帰還”することである。
少なくともミーシャの母とシャーリィはそのような考えのもと、彼女を教育している。
結果、ミーシャは人目につくことを避け、自宅に引きこもるようになった。
令嬢とは名ばかりの、ヒキニート予備軍である。

『お嬢様。申し訳ありませんが本日も買い物のお手伝をしていただけませんか』
「またなの? 昼間は目立つから力を使いたくないのに」
『いえ。特別な力を使ってほしいと頼んでいるのではありません』
「似たようなものでしょ。目立ちたくないの、知ってるくせに」
『わたくしの用件はただの買い物。目立つようなことではありません』
「どうかな。また変な人に絡まれたら……」
『それは……、人畜無害な人間のふりをする練習です』
「あたしは魔族の姫よ? 人間の真似事なんて……」
『高貴な姫だからこそそのような能力が必要になることもあるでしょう』
「そうなのかな。もう、仕方ないな……」

シャーリィはミーシャの将来を憂い、あれこれ理由を付けては外に連れ出そうとするのだった。

ご案内:「富裕地区 大商人の邸宅内」からミーシャ/シャーリィさんが去りました。