2017/12/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にヴェルムさんが現れました。
ヴェルム > 「着慣れないなぁ…」

夜の富裕地区を王国軍騎士の制服という珍しい格好で歩くヴェルム。
騎士には普通のことだが普段はいかにも市井の者と言わんばかりの服装で出歩くため、きちんとした制服を着ることは少ない。
それにぱっとしない顔にぱりっとした制服はなんともいえないミスマッチ感を醸し出していた。
まぁそんなことはさておき、今回はあまり来ない富裕地区にて情報収集なりをしてみたのだが、その結果はあまり芳しくない。

「そろそろ戻るか……うん?
そこの人、大丈夫?」

教会に差し掛かったところでふらついた様子の人物を発見する。
富裕地区でなら夜の人影もあまり珍しくないが、正常ではない様子のアーシュに歩み寄り声を掛けてみる。

アーシュ > 人の不幸を身代わりに受ける対価、聞き届けた後は特に体調が崩れてしまう。
外壁にもたれかかりながら、月を見上げてたところに声がかかる。

(自分のことだろうか)
ちらっと近くを見ても、大丈夫?と気遣う様子の人はいないから、自分のことと気づいて、声のしたほうへと顔を向ける。

見た目には騎士のような、この国の人であることは、すぐに気づいた。
近づく姿に、顔をあげて―…。

「ぁ、はい…少し目が回っただけなので――…」

自分にとってはいつものこと、と無理にでも作り笑顔を浮かべるけど。
白肌に青白い月明かりに紛れ、顔色は少し悪いのもごまかせてるかもしれない。

ヴェルム > 近づいてみた人物、小柄で白い肌の女性が笑顔を浮かべて答えてくる。
が、その声色には力が無く、弱っていることはわかった。
それに彼女の顔、どこかで見覚えがある。
確か人の不幸などを取り込む巫女とか…。だとすれば彼女の出てきた教会で何をしていたかはなんとなくわかった。

「無理しないほうがいい、疲れてるだろうし顔がちょっと赤いよ」

彼女については具体的なことはよく知らないが、少なくとも今はつらい状態のはず。
ヴェルムは自分の着ていたコートを彼女の肩に掛けようとする。

アーシュ > 「あ……ぁ、りがとう、ございます…。」

目の前の自分より背の高い、男性から上着をかけられる。
その大きさは、すっぽり体が入ってしまうほど。

優しくされた感覚に慣れてないから、紅い瞳をパチパチさせ驚いたあと、
受け入れたものの、ハッと気づき。

「あの、これでは、貴方の体が冷えてしまいます」

コートの襟を握り、今かけてもらったものを男性に返さなくては、と見上げて。

ヴェルム > 「気にしないでいいよ、どうせ…あんまり着ないし」

彼女のコートを掛けてから、そう言えば寒いなぁとか、拠点戻るの時間掛かるだろうなぁとか考えてしまったり。
まぁ今夜は平民地区あたりの宿に泊まればいいか。
コートを返そうとする彼女に首を横に振り断ってくる。彼女の紅い瞳が驚いた様子だったのはあまり気にしていないよう。

「というか、教会の連中はそんな状態の君をほっぽり出しちゃうの?」

彼女に不幸を取り込んでもらったはずなのにと、ちょっと憤慨した様子で教会に視線を向ける。

アーシュ > 「でも―…。」

息が白くなるほど、外は冷えてる。
目の前の男性のことを気遣うものの、断られると手を引っ込めて。

「…珍しく、ないですよ?
 気味が悪いんだと思います、せっかく払えた不幸が近くにいるのは―…。」

慣れてる、と視線を地面に落とした。
かけてくれたコートを握り締めながら、また作り笑いを浮かべる。

「ぁ、あなたにもなにか…お礼に引き受けるべき不幸や呪いがあるなら」

優しくしてくれたお礼、と引き受ける申し出をし。

ヴェルム > 「そういう…そういうもんだよなぁ、今の時代って…。
でも僕は、許せないな…」

彼女にとってはこのような状況慣れっこなのだろうし、そういう時代なのもわかる。
彼女が声を小さくし俯いてしまうとなんとかしてあげたくなる。
しかし王国軍騎士である以上、教会に対し行動に出るわけにもいかない。
今は、彼女を気遣うことしかできない。

「いや僕は、自分の不幸を他人に押し付けたくないから……それより、君を家まで送るよ。途中で倒れちゃったら凍え死んじゃうし」

彼女が能力を使い礼をと言う。確かに不幸が無いわけではないが、自分で処理しなければならない問題だ。
それより彼女を何時までも冬の寒空の下に立たせていてはよくない、それに自分も風邪を引いてしまうし。

アーシュ > 「…優しいんですね」

『そういう』状況は珍しくもなく、自分としてはソレが日常のように扱われてたこと。
男性の言葉に、コートを貸してくれてることと、今の発言に驚くばかり。

「ありがとうございます」

送るとい重ねての申し出、誰かに優しくされたのはいつぶりか思い出せないほど。
外壁から離れ、富裕地区の出口にむかう。
家はないし、身代わりとして受けたあとの宿には受け入れてもらえないかもしれない。
なので平民地区か貧民地区の空家にでも今夜は過ごすつもりでいたことを思い出し…。

「ぁ、でも私はここで、大丈夫です」

見た目には、この国の騎士とはわかる。
空家で夜を過ごそうとするのは、咎められることかもしれず。
送る申し出を遠慮するように。

ヴェルム > 「優しい…というより、普通…のはずなんだ、これは」

国の良識や常識が崩壊しかかっているのはよくわかる。
だが彼女にとってはその崩壊具合は顕著だ。
そしてそれが彼女にとっての常識になってしまっている。だからこそ彼女は救いを求めないのだろう。
彼女に連れられて富裕地区の出口まで歩いた。

「いや…大丈夫ってまだ……」

彼女が送ろうとするのを遠慮する。まだ彼女の住む場所には見えないが、ふとそこで思い立つ。
彼女に家はあるのかと…。

「行く当てが無いなら付いてきてもいい、いや…付いてきて欲しいな」

ついそんな言葉が出た。

アーシュ > 普通の感覚の差を感じたまま、
人の少ないとおり、富裕地区とあって整備されてる場所を歩く。
たまにフラついたりはあるものの、境目までくると、その先を断ったのだけど。

「…ぇ……ついてきて…て、ぁ……はい、わかりました」

誰か、身代わりが必要な人でもいるのだろうか、男性の言葉に受け取ったのは、そんな感覚。
だから、男性の言葉に頷いて。

ヴェルム > 恐らく彼女の感覚では、また不幸を取り込むのだろうと自然に考えただろう。
なんとなくだが、そんな表情をしているように思えた。
目的地はすぐ側、平民地区の宿の一つ。そこに付くまでにフラつく彼女の手を取り、支えながら向かう。
宿に入れば、暖炉の暖かい空気が包み込む。アーシュにはやっと暖かい空間に入れたし、ヴェルムも凍えなくて済む。

ヴェルムが宿の主の下へ向かい、しばらくすれば部屋の鍵を受け取ってきた。
そしてその鍵をアーシュの手に渡そうとする。

「今夜はここに泊まっていきな、とりあえず2泊分の料金は先に支払ったから」

暖かいため必要なくなったであろうコートを、彼女の背から外しつつ笑って言う。彼女にとっては信じられない言葉。

アーシュ > 富裕を出てすぐ近くの宿へとついていく。
外とは違い、暖かく包まれる空気、無意識にホッと息をついてた。
周囲をきょろきょろと様子をみてると、戻ってきた男性が手に鍵を乗せると、不思議そうな顔を浮かべる。

「…あの、これ…は?」

鍵を手にしたまま、肩にかけられたコートが外され鍵を胸の前に両手で握り締めたまま。

「ぁ、ダメです…このような場所、私は…」

さすがに動揺して、あわてたように鍵を返そうと
まだ取り込んだもの持ったままの自分を好まない人もいるのにと…。

ヴェルム > 「う…ん、今更キャンセルはできないからなぁ…」

ちらりと宿の店主のほうを見る。少なくとも彼はアーシュに対し悪い感情は持っていない様子。
逆に彼女を一人置いていこうとするヴェルムに睨みつける始末。これには苦笑いするしかない。
それに、彼女の言うことももっとも。客の中にアーシュを知るものがいれば追い出されかねないか。

「…じゃあ一緒に泊まろう、そのほうが周りも文句言わないでしょ」

会ったばかりの彼女に言うべき言葉ではないのだが、共に泊まれば文句を言う者がいようと彼女を守れるだろうと。

アーシュ > 「はぇ??……ぁっ……はい」

オロオロと、鍵をどうしょうかと困ってたとこに、一緒にとの言葉が聞こえた。
思わずびっくりして声をはね上げたけど、周囲を気にしてのこととわかると。
俯きながら頷いて、先ほどあったばかりだけど、
この国の騎士様とあれば、安心もできたから。

「…お願い、します」

受け取った鍵を、男性に渡すようにした。

ヴェルム > 「うん、こちらこそよろしく」

一緒に泊まることに同意してくれた彼女に微笑み、鍵を受け取る。
彼女が受け入れてくれたことも嬉しいが、一時の平穏にしかならないのだろうと思うと切なくなる。
様々な貴族や王族に利用されているらしいアーシュ、彼女と接触していることが知られればヴェルムもまた何をされるやら。

「そうだ、僕はヴェルム、ヴェルム・アーキネクト。よろしくね」

共に部屋に向かいながら、自己紹介をする。
その名は王国軍の騎士の中にあり、王国軍第十三師団の師団長の名でもあるが、それをアーシュが知っているかどうか。

アーシュ > 「私は、アーシュ・レ・ジーナといいます」

マナは称号のようなもの、あえて外して名前だけを名乗る。
部屋にむかう途中、短い時間ではあるけど、先ほど出会った騎士の姿には安心できた。
治安もいいとはいえない、貴族にも悪いのも多いと聞いていただけに。

「ヴェルム様ですね」

騎士ということはわかるものの、団長の名前まではしらなかったから、
気負うことなく部屋へと。

ヴェルム > 「アーシュか、いい名前だ。
それと様は付けなくていいからね」

先ほどまではどこか無気力のような表情をしていた彼女。
今は少しだが明るくなったような気がする。
短いだろうが今夜だけは、彼女に幸せな時間を過ごしてもらいたい、そう思った。
共に談笑しつつ、部屋の中へと入っていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアーシュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からヴェルムさんが去りました。