2017/07/13 のログ
ご案内:「王都富裕地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 祭りの時期は、ある種の商機でもある。
思いがけぬ所で新たな人脈が形成されることもあるし、そこから派生して取引に繋がる事もある。
非日常の昂揚によって幾許が剛毅な発注がされることを差し引いても、転がっている儲け話に出くわす確率は平時に比べて高い。
故に、己の遊興に重きを置く妖仙とて、煩わしい等と言ってもいられず、こうやって宴の場に顔を出すのだ。

「えぇい、彼奴め。
 この儂を客寄せ白黒熊と勘違いしておるんじゃなかろうか。」

目下、宴が繰り広げられているのは、権勢というよりは唸りをあげる財で通りの良い貴族の館。
昵懇とまでは呼べぬまでも、以前よりそれなりの交流のある相手だ。
それを捕まえて”彼奴”呼ばわりをする小さなシルエットは、会場の隅で暫し壁の花を決め込んでいた。

ホウセン > 手にした細長いシャンパングラスの中には、薄い黄金色をした液体。
小さな小さな気泡が絶え間なく浮かんでは弾けており、発泡性の酒精か、其れに類する代物である事に疑いはない。
万事が細やかで、市井の者が日々口にするような麦酒とは根本から違っている。
爽快感を求めて冷却が施されている一方で、飲料その物の香りが花開くのを阻害するまでは冷やしきらない絶妙な温度管理。
いつもの北方帝国の辺境に由来を持つ服装と、王国風のグラスとのアンバランスさは拭えないが、気にした風もなく、且つ躊躇無くグラスを傾ける。

「成程、確かに酒食は文句のつけようはないが、それでこの儂の溜飲が下がると思っておるのかのぅ。
 浅薄な輩め。
 儂はそう安くないのじゃ。」

ほぅっと吐息を漏らした後、柔らかそうな唇を尖らせ気味にして不貞腐れたツラ。
こうも妖仙が臍を曲げた原因が何かといえば、主催者が、下話無しでこの人外に舞うように請うたせい。
――しかも、何処で仕入れた知識か、千早と緋袴を纏った上で。

ホウセン > 知識の出所も定かでなく、活かし方もなっていない痴れ者が、所謂ミーハー気分でやらかした。
少なくとも妖仙はそう受け取っていたし、実際に真実から至近距離にある。
五千万歩譲って舞うことは良しと――多少ならず嗜んでもいるし――しても、意味もなく性別を違えた装束に袖を通せと言うのだ。
自意識はまったくもって雄である妖仙にとって、ある種の侮辱と受け取られても仕方ない。
――無駄なことこの上なく、似合い過ぎる程に似合い、馴染み過ぎる程に馴染んでいたが。

「くくく、今宵の怨嗟だけで村一つぐらいは滅ぼせそうじゃのぅ。」

不穏で剣呑で物騒な台詞を吐く。
その癖、門前小僧何とやらで、装束を鑑みて神楽を舞うという頗る付きのサービス精神を発揮した癖に…だ。
邪仙という神とやらとは縁遠い存在である筈なのに、結構ノリ良くやってしまった自分自身への後悔も、八つ当たり気味に恨みへ転嫁しているのも否めない。
お陰様で、出し物が終わっていつもの服装に戻っても、”話しかけるなオーラ”を発散している始末。

ホウセン > それでも広い世の中、空気を読めないのではなく”読まない”ツワモノは存在する。
無色無形の排他的領域を侵犯した豪の者に首根っこを掴まれ、ダラリと四肢を垂らした猫の如き様相で宴の輪に連れ込まれ――

ご案内:「王都富裕地区」からホウセンさんが去りました。