2017/06/26 のログ
ホウセン > ”寝る”等と簡潔な台詞だが、真っ当な人間としての機能を快復できるか保証が無いように思える。
少なくとも、この妖仙の知る『毒蛾』の悪意の発露の仕方ならば。

「案ずるでない。儂とてそれを人間相手に使おうとは考えておらぬ。
 何しろ、費用対効果が頗る悪いのじゃからのぅ。」

その猛薬を人間相手に使わぬのは、善意でも温情でもなく、効率の観点からと言ってのける辺り、人外の情動である。
扇子を帯びに戻しながら、その場で立ち上がる。
彼我の距離は二メートルに満たない程度。
風上がどちらかと気にするのは、この狐相手になら心配過剰の謗りを受けはすまい。

「魔王クラスにも効果があるというのは重畳極まりないのぅ。
 して、使用上の注意点などがあれば告げるが良い。」

膨大な魔力を持つ存在に対しても有効であるのなら、類は違えど己を含む仙人の類にも効果を発するであろう事は疑いない。
取り扱いには細心の注意を払う必要があると。

朱 暁燕 >  
「人間相手ならご覧の通り嗅がせるだけでコレヨ。
 魔王相手なら直接服用、注射するのもイイネ。
 普通の魔族相手ナラ、飲み物に2、3滴落とすとイイヨ」

そう言いながら、包みを手の上で広げてみせる
小瓶の中には透明な液体が揺れ、同じような小瓶が7つ

「注意する点があるとすれば、そうネ。
 揮発性が少し強いケド、空気中に溶けるのもハヤイネ」

つまり、嗅がせるためには小瓶を相手に近づけねばならないこと
そしてそして拡散してしまえば効能は瞬く間に霧散してしまうということだろう

「デモ体内に残留する濃度は高いネ。
 当然"クセ"になるヨ」

その依存性はかつての皇麻をも上回る、というコト
人を、魔をも狂わせる狂薬
その小瓶を丁寧に再び包へと戻す

ホウセン > 嗅いだだけでという件と、揮発性が高いという点が噛み合い、薬の特性を理解する。

「つまり、部屋中に充満させて標的を誘い込むというような使い方は出来ぬという訳じゃな。
 となると、厄介な連中相手に、少なくとも肉薄する所までは持ち込まねばならぬのか。」

虜囚とした後に使うのなら、こんな心配もなかろうが、そもそも勝利を収められる相手か甚だ怪しいところだ。
寧ろ、決め手に欠いた場合に、是を起死回生の一手として用いる事も選択肢として浮上しているのだろう。

「その辺りは運用面で考えるとしようかのぅ。
 納品という事でよければ、ほれ、ここに納めるのじゃ。」

妖仙が中空で指を縦方向に振る。
何もない空間に闇の線が描かれ、それがゆっくりと反転する間に面となる。
世界に空けた虚たる”帳”。
その中でも、倉庫としている空間に繋げたらしく、直径三十センチ程度の穴から見える先には、薬品棚が手を伸ばせば届く位置にあるのが覗けるだろう。

「支度金もお主持ちだった故に、成功報酬と合わせて…この場で渡すもよし、後で送ってやっても構わぬぞ。」

何しろ、相当数の金貨を渡す事になる。
子供子供している妖仙の四肢には及ばずとも、狐の体も細く、力仕事に向いているとは到底思えぬが故の選択肢の提供。

「ちなみに、名があるのなら聞いておきたいものじゃな。」

それは、単純な興味から。

朱 暁燕 >  
「それをヤルなら、皇麻のほうが向いているネ。
 濃度を高めることもできるしネ──」

帳が開いた、そこから覗く薬品棚へと包を置いて

「そうネ。この場はチョットアレヨ。
 またの機会で構わないネ。かさばるのはゴメンヨ」

そう言ってゆるりと薄紅の尾を揺らす

「名?そうネ──商売品として置くつもりがなかったケド、
 …皇<すめらぎ>を食いつぶす麻薬を超える代物、【神丹】とでも呼ぶことにするネ」

ホウセン > 濃度を上げても魔王クラスを完全な影響下に陥れられるかは分からぬが、能力を減退させるぐらいはできるかもしれない。
そんな風に頭の片隅にピン留めし、納品が終わったのを見届けると、右手の人差し指をクルリと。
生じていた虚は、出現と同じく唐突に霧消する。

「承ったのじゃ。
 但し、渡せずとも利子はつけてやらぬから、早々に受け取りの算段を組み立てるが良い。」

冗談半分の軽口を叩きつつ、付けられた名前を口の中で反芻すること、三度。

「呵々!少し捻れば、不老不死の妙薬と同じとは、何とも人を食った話よのぅ。
 善哉善哉、この”神丹”、面白おかしく使わせて貰うのじゃ。」

妖仙の言う妙薬とは”金丹”。
それと対をなすように、人を、魔を破滅させるというのだから、皮肉が利いている…と。

「さて、用向きが終わったのなら、完成祝いに酒食の一つでも馳走してやるが…」

社交辞令の類ではあるが、仮に応諾されても狼狽はすまい。
帝国風ではなく、王国風に恭しく右手を差し出し、エスコートでもするかのような仕草。
帝国辺境の服装をした子供がやるのだ。
場違い感は一入かもしれない。

朱 暁燕 >  
「生憎だケド、子供と酒呑む趣味はないネ」

肩を竦めて両手をあげ、首を左右に振る
無論相手が妖仙と知ってのことである

「それニ──」

くるりと踵を返し、顔だけをそちらへと向ける

「神をも滅ぼすカモ知れない薬の完成に祝福なンテ、サスガの私モできないネ」

ホウセン > ”左様か”と答える声には、大して残念がる響きはない。
本音の所かは立ち入る術が無いけれども、凡そビジネスライクな関係であるが故に、必要以上の接触を好まないのかもしれない。
――妖仙にしても、悪戯半分で一服盛られぬようにと神経をすり減らしそうだしとか。

「ふふんっ、お主がそんなことを気にする玉か。
 精々、蕩けて堕ちた神を踏みつけて、悦に浸るのじゃろう?」

問いの形はしているが、答えを求めるような素振りはない。
居住まいを正し、狐へ背中を向ける。

「報酬の件もある故、また近い内に。」

そう背後へと投げ掛け、路地から抜け出す為に一歩踏み出す。
説明を受けたものの、初めて使う薬品なら自分の手で試験運用したくなる。
だとすれば、程々に薬物に耐性があり、程々に孤立しており、程々に嬲り甲斐のある被験者が望ましい。
いずれにしても、この先の事。
首から上だけを捻り、チラリと、その”候補”に視線を向けるが、その姿を見出すことができたかは――

朱 暁燕 >  
神を堕とし悦に浸るか──
そう言葉を向けられた薄紅の狐が小さく口元に歪んだ笑みを浮かべ、再び背を向ける

"それじゃまるで稀代の悪女ヨ"

そんな言葉をその背で語るように片手をひらりと振って、その姿を歓楽街へと消した

最後のその視線に気づけたかは───

ご案内:「王都富裕地区」から朱 暁燕さんが去りました。
ご案内:「王都富裕地区」からホウセンさんが去りました。