2017/05/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にゼノビアさんが現れました。
■ゼノビア > 冒険者の集まる酒場での給仕の仕事も大分慣れてきた。
竜を倒した剣士の話し、亜人族の村で過ごした吟遊詩人の話し、数多の冒険者にある数多の物語……聞いていて退屈する筈がない。
――だが思う、自分は使えるべき主人を探しているのではないか?
給仕の仕事などしている場合ではないのではないか?
しかし、生きる為に衣食住を確保する為には働かなければならない、圧倒的矛盾、自分は一体今後どう生きていけばいいか、この頃そんな事ばかり考えてしまう。
今宵も王都マグメールの富裕地区にある噴水広場へと足を運ぶ。
其処には少なからず夜を楽しく貴族や商人達が愛人か奴隷かを連れて一時の自由を謳歌している。
それを横目に眺めながら、噴水の淵に腰をかけ派手にあがる噴水の水柱の水しぶきに髪をしっとりと濡らしながら、数えるのを飽きるほどについた溜息を深く大きく吐き出した。
「稼いだお金でだしている募集の張り紙もなしのつぶて、今日みたいにお屋敷に執事を募集していないか探しても空振り、……ハァ……不幸だ……。」
眉間に皺を寄せる力も無く、軽く猫背になりながら、きっちりそろえた両足の膝に肘を下ろし頬杖をついて、何とも言葉にしがたい表情を浮べていた。
視線の先には雇ってくれなさそうな腹黒そうな者達ばかり、騎士や仕えたくなる程に覇気をもつ貴族や商人は見当たらない。
■ゼノビア > 一人でいるとネガティブに為るのは悪い癖だと思うが、仕方ない事でもある、と自分に言い聞かせると頬杖を突くのを止めて、上半身をゆったりと起こし左手を己の胸にそえ、深く深く少しだけ寒さの残る空気を肺に送り込み、直ぐにゆるりとした勢いで息を吐き、それを何度かくり返す。
「……ダメだ。これじゃ執事として失格だ。気分を切り替えよう……。」
最後に空気を吐き出し終えると自らを戒めるように言葉にして決意し、落ち込んでいく気分を無理やり持ち上げると、右手をスラックスのポケットに手を入れて、昼間購入した何味だか忘れた飴玉を取り出すと、包み紙ごと口に放り込む。
――周囲の爛れた空気もまた色々とアレ、ではあるが自分まで腐る必要は無いのだ。
もう少しだけ、気分が完全に戻るまで噴水の涼しげな音を聞きながら、口の中に放り込んだ飴玉の包み紙を舌で器用に剥いで飴玉を食べようと……。
■ゼノビア > ペッと口から絹手袋の掌に吐き出したのはリボンの形に結んだ飴の包み紙である。
視線を周囲に向けたがゴミ箱のようなものは無く、仕方なくズボンのポケットに仕舞い込むと、両膝をパンッと叩いて噴水の縁から腰をあげ、飴玉が溶けて広がる薄荷の味に眉間に皺を寄せながら歩いて帰路に着くのだった。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からゼノビアさんが去りました。