2017/05/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 某貴族邸」にニコルさんが現れました。
ニコル > 室内楽の演奏が一際賑やかなものとなったのは、大広間での喧騒が大きくなった所為だろう。
出自は甚だ怪しい者も見受けられるが、これ程に人が集まった夜会にて、宴もたけなわの頃合いともなれば、艶めいたジョークやどこか下卑た笑い声、そして嬌声めいた女の声が其処彼処から聞こえる。
濃い酒精や香水の香、これ見よがしの葉巻の匂いは、慣れてはいるが鼻につくことがある。
今宵のように月が冴え、なのに夜風はどこか生温さを感じさせるような夜は、殊に。

「……少し此処で休ませて頂くことと致しましょうか」

風を孕み揺れる天鵞絨のカーテンをするりと掻い潜り、熱気渦巻く大広間からテラスへと抜け出した女は小さく呟き。
広間を後にしただけで急に遠くなった喧騒を背に吐息を零し、テラスを囲む石柵に手をついて月を見上げた。
庭の緑や薔薇の香を含んだ、どこか昼の暑さを残している風が、鬢の髪や遅れ毛を揺らして渡っていき。
その髪を押さえるともなく指先で撫でつつ、溜息交じりに独り言ちる。

「―――飲み物くらいは貰って来ればよかったかしら」

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 某貴族邸」にガリアさんが現れました。
ガリア > (必要か、と言う意味では、必要だったのだろう
但し其れはあくまで既成事実が欲しかっただけだ、この場には騎士の護衛が在る、と言う事実だけが。
故に、若しかしたら参加者である何処かの貴族が騎士団に掛け合ったのかも知れない
そして、イチ貴族の要望を一々受け入れても居られないとは言え、資金提供者として無碍にも出来ないが故に
「あくまで個人的に」参加する、と言う体裁を取ったのなら、納得出来る。
――なんで自分が此処に来る事に為ったのか、そんな風に考えながら、宴の喧騒を眺めては
酒精と肉と、後は何だか色々と混ざり混ざった香水の臭いだとかですっかり麻痺した鼻を一度鳴らして。)

―――……さて、何時まで続くかねぇ…。

(――大抵こういう宴は、長いものだ。
此処に居る貴族達の殆どに対して縁もゆかりも無いが故に、序に立場を鑑みるに
中々混ざって馬鹿騒ぎ、と言う気分にも為れず――ふと、視線を逸らした際、視界に写ったのは誰かの後姿
テラス側へと抜けて行く様子を目に留めては、一寸瞳を瞬かせて、ゆっくりと、其の後を追いかけてみよう
どうせ、誰も彼も、既に自分の事なんて気にも留めて居ないだろうし、と――同じく熱気から抜け出す様にして、テラス側へと)。

ニコル > 咽喉が渇いている訳ではないが、一人月を見上げるには些か手持無沙汰。
何より、一人で月を見ているだけならば、何も夜会に脚を運ばずともよかったのだ。
夫の生前からの付き合いのある貴族邸ではあるが、たまにはこんな賑やかさの中に身を置かねば、

「いくらなんでも錆びたり黴たり、なんていうのは嫌ね」

夫を亡くした身とはいえ、夫の姓を名乗る以上は矢張り美しくありたいのが女心というもの。
そのためにはこういった場で周囲を見、そして自分を見るのが手っ取り早い。
何より華やいだ場は嫌いではないし、少なくとも退屈しないのは有難かった。
とはいえ……

「今日は盛況に過ぎるわね。あんな場に居ては、貴方も少しは心配でしょう?」

問い掛ける相手は亡き夫……、の、筈だった。
が、そこで自分以外の誰かがテラスへと姿を現した為に、その問い掛けは月の冴えた空へではなく、振り向いた先のその人へと向けられることとなり。
それに驚いて、思わず瞬きを繰り返す。

ガリア > (――テラスへと脚を踏み入れれば、其の先に、先刻見かけた背中が在った。
見知っているという訳ではないが、此処へと訪れるに付けて多少なりと予習は在る
己が記憶に間違いがなければ、亭主たる男の名を継いだ、館の主の筈だ
月夜の下、薄明かりに照らされる其の姿は、其の儘夜に融けて行きそうな雰囲気すら感じられる
――そんな相手に、結果的に、声を掛けられたような形に為っては
思わず瞳を瞬かせ、其れから、一度左右を見回してから、他に誰も居ない事を確かめ
嗚呼、此れは自分に声掛けられたのだろうか、と、一寸困った様に頬を掻いて。)

……まァ、そうっス……いぁ、そうデスネ。
連中、羽目外し過ぎる事も在りますし、悪酔いした酒飲みほど厄介な物はないデス。

(一瞬、素の雑な口調で応対しかけて、いかんいかんと意識して丁寧な応対を心がける
彼女は未亡人で在ると聞いた、心配、と言うのはそう言う意味だろうかと、頷いて見せながら
少しだけ、彼女の側へと歩み寄り、月明かりの下位には、姿を晒して置こう。)

……でも、心配されると思うなら、何でまた宴を?

(――普通の貴族相手なら、聞いた所で無駄だと判って居るから黙っているけれど
なんとなし、彼女の場合は――そう言う性質ではない、様な気がした。 あくまで勘だが。
其れから、ふと、何か忘れている様な気がして、一寸顎に手を当て――しまった、と一度渋い顔をしてから。)

あー…名乗り忘れ失礼、ガリアとお呼びを。

(名乗りは、この期に及んで、今更ながらの)。

ニコル > 問い掛ける形となった言葉に、問い返された。
暫しは目を瞬くのみであったものの、直ぐに肩を震わせて小さく笑う。
どうやら彼は思い違いをしているらしい。

「確かにそのとおりね。
……でもこの屋敷の主は、夫亡き後も女の細腕で商いも土地も総て受け継いだ剛毅さを持ち合わせているのですもの。
コトを上手く運ぶには、相応の手回しも必要だとは思わない?
鼻薬を嗅がせるのも、女が一人で戦うためには必要よ」

そう告げた後、姿を露わとした相手の姿に朗らかに笑んで見せ。
なるほど、と、口の中で呟く。

「ガリアさん。お若いのね。……私の名前はご存知?」

相手の歳若さを加味した上で、どこか子猫でも甘やかすような声音で問う。
恐らく、彼が思う名とは異なる筈だ。
何故ならば、

「……この家の主とは夫の生前から親しくしてもらっているの。
尤も、あの頃の彼女はまだあなたと同じくらいの可愛らしいお嬢さんだったけれど」

言って、相手の表情を覗き込む。
悪戯に笑み、柔く彼の頬へと触れた。

「私はニコルと申します。
残念ながら、あなたと同じ客の一人」

彼が自分をこの家の女主と勘違いしているのなら、否定ではなく名乗ることでそれとなくそれを伝え。
それはそれとして、月下の縁の妙を伝えるべく緩く彼の頬を撫でる。

「――たまにはあなたのような人に世間の噂の一つも聞かせて欲しくて。
それが今宵此処に来た理由、よ」

ガリア > ―――――? ……嗚呼、アレ、若しかして根本から違うッス?

(―――一瞬、思考が停止した。 相手の語り始めた事は理解できる、が、其れでは何か違う
何が違うのか、と頭の中に疑問符を幾つも浮かべた後で、最後の最後に、相手が名乗ったなら
頭上に蛍光灯でも灯ったかの様に漸く納得を見せた上で、若干、苦い笑いを浮かべたろう
どうやら盛大な勘違い、予習は上手く行かなかった様だ
脳裏に思い浮かべていた名前を、新たに上書きし直しては、謝意を示して一度、頭を下げ。)

スミマセン、どうも勘違いしてたみたいで…。
……! ……あー…えーと、世間の噂…ッスか?

(改めて、頭を上げて相手の方を見やった辺りで
其の姿が、先刻よりも間近に在る事に気付く
一寸瞳を瞬かせ、伸ばされる掌が頬へと触れるのをぎこちなく受け入れては
うーん、と、困ったように一度視線を彷徨わせ、其れから…やっぱり、苦笑い。)

―――……パッて思いつくのが、酒呑み連中との話とか、仲間連中の荒っぽい話位しか無いって言うか…。
……ご期待に沿えるやらって感じッスけど、大丈夫ですかね?

(――元々、高尚な話が出来るタイプではないと自覚している。
だから貴族達の会話にも口を挟まなかったし、交流も殆ど無かったのだ
本当に、騎士として、城下に住む者としての話しか出来ないと、伺って見るけれど、果たして。
触れる指先の柔らかさと優しさが、多少為りと緊張を解してはくれたけれども
如何してもまだ少し、借りてきた犬っぽい様相で)。

ニコル > 「夫を亡くした者同士、という意味ではこの家の主も私も同じ。
でも、……私は普段は引き籠っているばかりだから、彼女とは正反対ね」

告げて、可笑し気に笑う。
夫の分も荷を負って一人立つこの家の主と、夫の影をのみ追って前を見ることのない自分と。
そんな対比の見事さと、それを勘違いした彼とが、どうやらツボに入ってしまったらしい。

「ええ、構わないわ。
こういった夜会では多少なりと取り繕ってしまうから、新しくて面白い話を聞くなら街の酒場に限ると、―――主人も言っておりましたし。
是非そんな楽しい話を聞かせて欲しいわ。
それに、あなたのように若い人なら、様々な情報にも早いでしょうし」

もとより人は嫌いではないし、新しいものにも人並み以上に好奇心がある方だ。
それ故に楽し気に目を細め、そっと撫でた彼の頬から漸くに手を離す。
余りに畏まっている風な彼に対して、再度首を竦めるような仕種で笑って見せ。

「そう硬くならないで。
――少しお酒でも召し上がった方が舌が滑らかになるかしら?」

なんならワインでも貰って来ようか、と。片目を瞑って見せることで問い。

ガリア > ……アッハハ…まぁ、人が死んで、其れに対して如何向き合うかなんて、それぞれじゃないかなァって。
立場とか、役割とか、状況とか、そう言うのってのァ、色々在るッスからね。

(――笑った。 其れまでの印象では、何処か妖しく、艶やかな雰囲気さえ在ったけれど
こうして笑う姿を見たなら、其れまでの印象とは随分違い――もう少しだけ、距離の近い雰囲気を感じられた
もう少しだけ、普段の自分らしく表現するなら――可愛らしさ、と言うモノか。
家族を亡くした者を前にして、流石に同じ様には笑えないけれど
微苦笑交えに肩を竦め、引き篭もっている、と言う部分を前向きに受け取っては
――離れて行く掌を、其の時ばかりは少しだけ惜しむ様に、双眸を細めた。)

―――や、実は最初にちょっとだけ、付き合いで飲んでたり。
んー…そうだなァ…、……最近だと、良く行く酒場のおっさんが、嫁に二人目の子供が出来たってんで大喜びしてたとか…。
後は、最近何件か新しい店が、一般区の方に出来たっつー話とか、かねぇ…。

(――果たして、どんな話なら相手が愉しんでくれるだろうか。
思いついた話題と言えば、本当に、そんな庶民的な話ばかりだけれども
お酒を、と紡いだ相手のウィンクには、一寸瞳を瞬かせ――其れから、思わずつい、と視線を逸らした
――慣れない。 これが街娘だったり、娼婦だったりの其れならばどうって事はないのだが
目の前の相手に対して、はたして、如何反応して良いか判らない。
――加えて、其の仕草が妙にお茶目だったのが、余計に動揺を。)

……もうちょっと、こう…堅い感じの人かと思ってたッス。

(意外だったと、告げる、素直な印象。
其れから、再び相手へと視線を向けて――ええい、と、がしがし一度頭を掻いては
に、と、歯を見せる様な笑い方で、相手へと改めて相対しよう
何時も通りで良いのなら、なら、自分だってその方が息苦しく無い、と)。

ニコル > 「ふふ。確かに湿っぽい話よりも、新たに生まれるお話の方がいいわね。
其れが命でも、お店でも。
それで、……新しく出来たお店に、お目当ての可愛らしい娘が居たりしないの?」

他人の恋の話に目を輝かせるのは少女と同じ。
少女と異なるのは、長く生きている分、その問い掛けにはにかみが伴わないことか。
が、視線を逸らす彼の様子に、瞬きを向けた後に首を傾げる。

「あら。ならば少しお高くとまっている方が良かったかしら?
……夫は貴族だけれど、私は嫁いだだけだから。
生まれも育ちも鄙なのよ。
本当に山の中で生まれ育って、……静かなのは慣れていた筈なのに。
こんな賑やかさが恋しくなるなんて、都会に慣れるのはこわいわね」

他人事のように口にしてまた肩を震わせて笑う。
相手が漸くに曇りなく笑うのを見ると、一度軽く瞠った目を今度は柔く細めて。

「そうして笑っていた方がいいわ。
仏頂面では、例の新しいお店の可愛い娘も腰が引けてしまうでしょう?」

ガリア > ―――……仕事柄、気が滅入る話の方が多くてなァ…。
そう言うの聞いてるよりは、まだめでたい話の方が気楽だし、明るくなれるかなァと、ね。
……あー、や、まァ看板娘は居るッスけど。

(――家族を亡くした相手の前で、新しい命の話をするのは少し考えたけれど
けれど、他に在る話といえば、其れこそ戦いや犯罪や、そう言った淀んだ話ばかり
そんな物よりは余程マシかと、口にしてみたの、だけれども。
――お目当て、と聞いて、一寸瞳を瞬かせたのは、問われて居るのが自分だとは気付かなかったから
えっ、と一寸言い淀んでは、色々と思考を廻した挙句に微妙な返答して。)

……ンや、此れは此れで。 俺は寧ろ在り難いッス。
……慣れるってのァ、怖いって思う事も在るかもだけど…、……悪い事ばかりでもないッスよ。
まぁ、貴族様と俺達じゃ付き合う相手が違うのは在るとしても…
仲間と騒いだり、飲んだり、たまーにド付き合ったり…そう言うのって、生きてる…って感じ、しないッスかね?

(――本当に大切なのは、別に飲む事でも騒ぐ事でも無いのだけれど。
其れを切欠に、自分には仲間が居るのだと思える瞬間と言うのは、良い物だと思う。
ふと、再び相手が触れてくる『可愛い娘』の話には、いやいやいや、と緩やかに手を横に振って見せ。)

いやいや、別にそう言うのナイんで! ホント!
つーか、どっちかって言いやァ…、……今目の前に居る人の方が、よっぽど好みっつーか。