2017/01/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にリヴィオさんが現れました。
■リヴィオ > 「……さっむっ………………。」
此処最近寒さがグンと増したと思ったが、まさか酔いが醒めるレベルだとは思いも余らず、薄ら紫色に変色した唇に挟み込んだ噛みで包んだ霊薬の筒、煙草の様なものが不自然に小刻みに震える程に歯の根が合わなくて、浮かべる笑みと言うものが寒さで無意識に引き攣るような自体であった。
今宵はお貴族様のお屋敷に裏の仕事の方の届け物をした帰り道、余程商品が気に入ってくれたのだと思うが高い酒を飲まされて、滅多に口に入らない山海の珍味でもてなされて、気分も機嫌も体温も上々で歩いていた筈なのに、ものの数分もしない内の今の状況である。
魔力を使った外灯が点々と存在するとはいえ薄暗い夜道、その中でもやけに目立つ真紅の外灯の襟元を握り締めカタカタと震えるな避けない姿を晒し、早く店に屋敷に帰ろうと小走りで歩いている。
寒い
寒い寒い寒い寒い……
と時々口走り、煙草モドキを咥えた唇の隙間から白い息を龍のブレスの如く噴出しつつ、一人夜道を進み続ける。
何処もかしこも温かな灯りと暖炉でも燃やしているのだろう白い湯気、今先程までその恩恵を受けた身としては引き返して泊まらせて下さい何て言いたくもなる、が……流石にそれは格好悪い。
それに商品を使う姿を自慢でもされてみろ、いろいろな意味で寒くなっちまうよって、一人で突っ込んだり、愚痴ったりと実際の唇は動かない代わりに思考がぐるぐると行ったり来たり……。
■リヴィオ > 寒い寒い寒い、思考を埋め尽くす真っ白い文字で寒いの一言、と繰り返した所で温かくなる可能性は皆無で有り、不毛でしかない、本当に嫌になる……。
「手土産開けてみるかな、きっと酒なんだろうな、きっと上等な酒なんだろうな……だよな?」
真紅の外套を襟元から手を離しながら、希望と夢を寒いの代わりに繰り返し、おっ酒、おっ酒、等と寒さに負けぬほどにうきうきしながら、外套の懐に手を突っ込んで手土産に渡された都合のいいくらいにワインの瓶ほどもサイズの瓶を取り出すと、中身を隠すように巻かれた白い布をリンゴの皮を剥くイメージでスルスルと解いていく、歩きながら。
――…舗装された路地に落ちる白い上等な布、それだけで中身が高級感溢れる何かだと想像させるいやそうに違いない、が……。
「……油かよ!!オリーブオイルかよ!!!」
白い布が解けた裸婦の姿、もとい瓶には確りとラベルが張っており、其処には否定する要素が一切ない程にオリーブオイルなんてデカデカと印刷されていて、思わず瓶を路地にたたき付けかけた……。
しかし、それを実行しかけた所で手を止める、何故ならオリーブオイルは食用であるし、無駄にはならないし、色々な意味での潤滑油代わりに良く使われるし、あのご贔屓さんは確かにそういう商売を手広くやっていたなって、一呼吸付いて冷静になると、自ずと答は浮かんでくる。
ハァ…………
勝手に期待して勝手に落ち込むのもアレだが、これでは暖を取れないと、思わず大きく息を吐き出して溜息どころではない物を吐き出す。
一緒になって唇から零れるのは濃密な魔力の気配と香りだろう、煙草モドキの所為である。
立ち止まる事無く一連の出来事を道化の如く行えば、時折通り過ぎる人々の眼も今宵の夜風に負けぬほどに冷たく、巡回中の衛兵の視線は冷たいどころか怪しげに睨み付けてこよう。
■リヴィオ > その視線を避けるようにして、真紅の外套に付属のフードを深く被り、内側にオリーブオイルの瓶をしまいこむと、へらっとつくり笑いを浮かべて、さも何でも有りませんよ?と言わんばかりに取り繕うと、帰路を進む足取りを早める。
今宵はとても寒い、だが周囲の視線の寒さには叶わないだろう、たぶん。
宵闇で目立つ真紅の外套を着た人影は通りの奥へと消えていくのだが、その後を静かに追う衛兵の姿があったとか無かったとか……。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からリヴィオさんが去りました。