2016/11/02 のログ
■砕華 > (笑顔を振りまくからこそ、シチューも屋敷で、可愛がられているのかもしれない。
砕華が、その微笑を絶やさないような、顔を貼り付けているのも、そういうことなのかもしれない。
誰だって、しかめっ面で店に立たれるよりも、少しくらい笑っていてくれたほうが、心が安らぐものだ。
面白いほどに、正直に尻尾や耳が、寝たり飛び起きたり。
それを見ていると、悪戯してしまいたくなるあたり、シチューには少しくらい、プライベートなところを見せているのかもしれない。
目を細めるのは、怒っているのか、照れているのかは解らないが、笑っているところを見ると、機嫌を損ねたわけではないらしい。
耳から手を離し、袖で口を隠しながら、くすくすと砕華も笑った。)
「…私が、迷惑だと感じるのは、店の中で暴れて壊す人だけです。
お話をしたり、お茶を飲みにくる神獣族…あ、いえ。ミレー族は、歓迎ですよ?」
(そうだった、この国では神獣族を、ミレー族というのだった。
シェンヤン特有の言い方を改め、いじけてしまったシチューに、視線を合わせる。
普段は、あまり開かないその視線が、少しだけ開いていた。
初めてかもしれない、ブラウンの色をした瞳を、誰かに見せるのは。
メモの先に書いてある場所は、ここからそう遠くはなかった。
挨拶回りは、まだ済んでいないけれども、急を要する仕事というわけではない。
このまま、家に帰ってもよかっただけに、シチューの申し出を、断る理由がなかった。
これもまた、商売人としてではなく、砕華個人としてであった。)
「ええ、勿論構いませんよ。」
(さあ、と一言添えて、右手を差し出すだろう。
細く、しなやかな指先をしている、真っ白な手を差し出し、それをシチューが採れば、案内するように、歩き出す。
ミレー族と手をつなぐなど、と貴族の人間の視線など、砕華は気にしている素振りもなかった。)
■シチュー > (薬師としての腕があれば、彼女の店へ訪れる者が彼女の一見冷たい態度に文句をつける事は無いだろう。専門家になるほど無愛想になるものだ。スパイであるのなら、なおさら感情が表には出ないだろう。必要に迫られて。でも、先のように悪戯めく彼女こそ、ほんとの素の彼女だといいな……なんて淡い思いを、分ける笑顔に含ませている)
(最近じゃ、目が細められていたとしてもその奥の感情を少しだけ感じられるようになった。今は笑っている。今は少し物思いをしている。その程度だけれども。会う機会が増えるたび、表面上ほど冷たい人じゃないとは知れる。ほら、今だって袖で口を隠す仕草もなんだか可愛いらしい。本人に言うと怒られるだろうけど。)
そっか、そっか!じゃあ……また遊びに行くよ。お屋敷からいつ自由な時間くれるかわからないけど、ひょいって遊びに行くから!おばけみたいに!
(ミレー、と言い直す事で、なんだか相手と親しくなれた気がして。ゆらゆらと尻尾を揺らして声音を弾ませた。開いた瞳。彼女の心のようにきれいなブラウンの色をそっと覗いて。にこにこと笑う。)
わあ!ありがと!……えへへ。砕華と手、繋いじゃった。繋いじゃったよー。手、あったかいね。砕華!
(どこか、寒い冬空の日に母親と手を繋ぐ幼子みたいなはしゃぎかた。耳をぴこぴこ揺らし揺らし、細く白い手にしっかりと手を重ねる。足を元気よく上げながら、件の屋敷へ向かおう。――屋敷の主はきっと、笑顔で彼女をむかえるはず。その節はお世話になりました、とばかりに。そして無事にお届けものが終われば、如何にも迷子になって時間を食いましたと言い訳を作りつつ、彼女のお茶をごちそうしてもらって、のんびりとした時間を笑いながら過ごそうと――)
■砕華 > (どっちが本物なのかは、わからないだろう。
どっちも本物、なのかも知れないし、どっちも偽者、なのかも知れない。
本当の砕華を巧妙に隠し、それでも少しだけ、本心を時折出している。
それを、読み取られるようになると、シチューも本物の砕華を、見分けられるようになるのかもしれない。)
「ええ、是非遊びに来てください。
ああ、でも…お化けは苦手なので、ちゃんと表から入ってきてくださいね?」
(本当に苦手かどうかは、わからないけれど、少しだけおどけたような表情。
きっと、耳が生えているとしたら、狐のような耳が、頭の上から生えていることだろう。
いつ自由な時間が、出来てもいいように、砕華もマグ・メールの少し甘いお茶を、用意しておくことだろう。
不意に来訪する、ミレー族のために。)
「今日は冷えるので…其処まで暖かいとは思いませんけど」
(だが、その人の体温は、決して冷めることはない。
何を考えているのかわからない、表情も読み取れない、だけどちゃんと人間の砕華も、手は暖かいものだ。
ちゃんと、血が通っているし、心も通わせようと思えば、じっくり時間を掛ければ、できるのだ。
表面上かどうかは、さておいて、シチューとの関係は、決して悪いようには、見えないだろう。
屋敷に行けば、不意の来訪にも、貴族はにこやかに会釈を送ってくれた。
シチューの用事が終わった後、砕華も挨拶を済ませた。
また、薬を頼みますよと、貴族は二人を見送っていく。
その後は、平民地区の『紅一朝』で、しばしのティータイムと、しゃれ込むのだった。)
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からシチューさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」から砕華さんが去りました。