2016/10/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にラウリックさんが現れました。
ラウリック > 静かな音楽と柔らかな香の香りが夜気に混ざって緩やかに流れる空間。
豪奢なホールに故意に暗めに配置された明かりと白いテーブルクロスを張られた料理の乗った卓。
簡単な軽食や配られている酒、柑橘類を絞った水まで丁寧に気を使われた逸品。
異様なのは、参加者が全て仮面を付けている所だった。
儀礼程度の、簡単なそれではなく、顔の半ば以上は隠してあるものが大半だ。

「……やれやれ」

そんな中で大して顔の隠れていない仮面をお義理につけた男が壁際で溜息を吐いた。
つい、今しがた漸く挨拶ラッシュを済ませた所だ。
自分はこの夜会に出ている事をアピールする必要がある。
いわばおつきあいで参加しているからだ。
片手に持ったグラスの冷えた水を口に当て、軽く一口飲んで。

「…………………仮面夜会とは優雅な言い回しだ」

と、うんざりしたように呟いた。
口にした軽食、酒、水、香の焚かれた空気に至るまで全てに媚薬がうっすらと仕込まれている。
これは、貴族達の特有のお遊び、仮面夜会という名の乱交パーティなのだ。

ラウリック > 一通りの儀礼的な貴族同士のやり取りが終わり、場は本題である相手探しに移行しつつある。
自分の仕事自体はもう、終わったといっていい。
今回参加した貴族にも自分がこの場にいた事を、それによってこの夜会は”安全なのもの”だと思わせる事ができただろう。
このツテを消化することでこの夜会を主宰する貴族と懇意の自分の一族の誰かがまた利益を生む。
それが幾らなのか、むしろ金額に換算できるものなのか、自分は知らない。

「………あの酒が飲みたいな」

強いだけが取り柄の、下町で売られている酒を思い出した。
あれはあれで、趣があるというかクセになる。
暗がりの広がるホールに視線を向けて小さく頷くと壁沿いに歩き出した。
出入り口近くで、見たことがある痩身のカラスの仮面を付けた男が近寄ってくる。

「私は帰るよ。面倒だろうけどもよろしく」

男は一言、言って扉代わりに遮っている幕をくぐって姿を消した。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からラウリックさんが去りました。