2016/09/22 のログ
リーゼロッテ > 少しずつ、自分の醜い面と子供な面に整理がつきつつあった。
もともと、チェーンブレイカーから離れたいといったのも、こんな殺しを容認する自分を、彼処に置いておく訳にはいかないと思ったからで。
けれど、今は自分はどうしようもない悪は殺すしかないと、きっぱりと思えるようになってしまったし、やはり、誰かを助けるのは世界を一つ綺麗にできたと充足感を覚えもする。
戻ろうかな、そう思いながら伝書鳩でお願いを引き受けたのが昨日のこと。

「ん、ここでいいよ。帰りはまた発着所に行くね?」

堅牢な作りをした馬車からひょいっと飛び降りると、運転手に小さく手を振る。
気をつけてねと見張り台に座った少女に心配されながらも、手を降って彼等を見送った。
ここまでの馬車の護衛、人手不足は相変わらずだったらしい。
笑顔で馬車が見えなくなるまで見送ると、さてとと呟きながら大通りを見渡す。
心を癒やすのだから、ちょっとぐらい贅沢な食事もしたい。
そんな気持ちでここへと足を運び、ぞろぞろと人が溢れるそこへと視線を向ける。
何かなと思うものの、確か劇場だったけ?と小首をかしげながら考えるも、気にするほどのことでもない。

「何処にしようかなぁ……?」

店の並びをゆっくりと歩きながら見て回り、ゆらゆらと肩から下げた長銃が揺れる。
二連の銃剣は折りたたまれ、アンティーク調の飾りが施された物々しさが薄れたライフルと新調した服装がガラスに映り込むと、少し満足げに微笑んでいた。

アダン > 夜が更けていく。
一通り劇場などから出て来る人物を眺めていくが、あまりピンとくる者はいなかった。
王族貴族平民問わず己の欲望の毒牙にかけ、その年齢層も幅広いものの、気分というものはある。
狙えそうな女性は多かったが、今日はそういう気分ではなかったということだ。
アダンについての悪い噂は多くある。それを知る者も多い。
それでもアダンが今日まで生き残っているのは、己の家や生まれのためと、自らの手腕のためであった。

アダンは立ち上がり、周囲を見回した。
すると、近くに馬の蹄の音が響いた。アダンがそちらを見れば、降りてきたのは一人の少女である。
肩から下げているのは銃であるようだ。アダンはさしてそれらの種類に興味が無いため詳しくはわからなかったが、おそらくはここの貴族の娘というわけではないだろう。
アダンはふとその少女に惹かれ、そちらの方へと歩き始める。
裏通りを抜けて彼女より先回りし、偶然鉢合わせたかのような形を取る。

「……おっと、失礼。申し訳ない、お嬢さん。大丈夫かね」

そして、すれ違いざまに、軽く彼女とぶつかることとなった。
勿論、わざとである。申し訳無さそうな顔を作りながら、アダンは謝罪する。
アダンの噂は知るものは知っているというところである。それを確認する意味もあった。
今日狙うのはこの少女にしたが、まずは相手のことを知らねばならない。
扱っているらしい銃を見た限りでは、戦闘技能などはアダンなど彼女に及びもしないだろう。

リーゼロッテ > 姉の家で色々と着せ替え人形の如く戯れた時に、気に入った一つ。
それを借りて、昔来ていた制服と同じように仕立てたのがこれ。
また前と同じのでも良かったものの…自分の中で踏ん切りをつけるための儀式として、衣替え。
クラシカルなデザインの柄が多く、お気に入りとなったそれに満足気に微笑むと、再び歩き出す。
自分を見ていた存在には気づいておらず、ふいに目の前に現れた彼に、少しばかり驚きながらも肩がぶつかりよろけた。

「きゃっ……いえ、大丈夫です」

小さな悲鳴を零したものの、右手は腰の添えられていた。
革のベルトに連なった拳銃の方に手を近くしたのは、反射的に見を守ろうとした結果。
フラッとよろけはしたものの、たたらを踏む事もなく、彼へと振り返っている。
普通に謝罪する彼に悪意を感じることもなく、手はそのまますっと降ろされていきながら、ほんの少しだけ表情が固まった。

(「……あれ? 見覚えが…」)

随分前に、王都にいる貴族の中でも関わりを持たないようにと注意を促された中に彼の顔があった。
けれど、結構前のことであったり、内政的な部分に関わることのない自分には、あまり関係ないかなと確りとは覚えていない。
うろ覚えな記憶に、集落であったのかなと思いつつ、キョトンとしたまま小首を傾げる。

「あの、何処かでお会い…したこと、ありましたか?」

記憶違いながらごめんなさいと苦笑いを浮かべつつ、そんな問いを掛ける。
その合間も、距離はほんの少しだけ離していた。
掴もうとすれば、ワンテンポ遅れる距離であり、拳銃で一発撃ち込める間合いでもある。
苦笑いを浮かべる可愛らしい見た目の割に、用心深い身のこなしをしていた。

アダン > 衝突しながらも、アダンの瞳は近づいた彼女の容姿を確りと眺めていた。
相手はどのような人間かわからない。そもそも人間ではなく魔族であった、などという話も今の王都では珍しくはない。
ある意味では命の危険を晒すことになるやもしれないのに、アダンはそれでも彼女に関わることをやめはしなかった。

衝突の後に相手の手が腰のベルト拳銃に伸びる。が、すぐに手は降ろされた。
物騒なことだ、とアダンは心中で呟く。勿論危険に対しては備えはしてあるものの、いきなり撃たれでもすれば事である。
そんなことになれば、この少女も王都でただですむはずもないが。

「……いや、初めてだと思うがね」

相手の表情がこわばるのを確認する。どうやら、こちらの顔に思うところがあるようだ。
だが、相手の次の質問は自分をはっきり誰とは捉えていなかった。勿論、虚言の可能性もあるにはあった。
アダンはしばらく考える仕草を見せつつ、初対面のはずだと答える。
相手はある程度の距離をこちらと保っている。どうにも警戒されたものだ、とアダンは薄く笑みを浮かべた。

「私はアダン。アダン・フェリサという者だ。
 残念ながら君のような可愛らしい少女とお目にかかったことはない。
 怪我をさせていたり、服を汚させていなければいいが……一人かね。ご両親などはおられないようだが」

仮面を被るのは常のことだ。相手が心中を読める術でも使えるならばどうしようもないが、温厚そうな笑みを作って彼女に言う。
敢えて自らの名を名乗ってみせた。こちらは相手のことを知らないが、相手はこちらのことを知っている可能性が高い。
これでどのような反応をするか見極めるつもりである。

リーゼロッテ > 16の割には幼い顔立ち、丸くて大きな青い瞳に薄い桜色の唇。
薄茶のくせ毛は緩い波を描き、よろけるとふわりと揺れて甘い花の香りを漂わせる。
顔と比例するように体付きも幼く、起伏は薄くて細い。
深緑主体のチェック柄のジャンパースカートには勲章の様なロゼットが模様の様にスカート部分に薄い布地で象られていた。
銃が無ければ、何処ぞの良家の娘のようにも見えるかもしれないけれど、垢抜けない感じがそうとは言い切らせない雰囲気を作ってしまう。

「そうでしたか…ごめんなさい、勘違いみたいです」

思考で表情が止まっていたものの、初めてだと言われれば、すんなりと信じて柔らかに苦笑いを浮かべて小さく頭を下げて謝罪する。
距離を取るのは、やはり相手は男で場所が王都というのもあって、身構えてしまうからだろう。

「アダン・フェリサさん…」

何処かで聞いたような…でも思い出せないと、子供っぽい思案顔で右に左に首を傾げたものの、思い出せない。
可愛らしいと言われれば、少しだけ頬を赤らめて、そんなことないと言いたげに緩く頭を振る。

「ぅ、そんなことないです。大丈夫ですよ、ちょっとぶつかっただけですし…」

続く問いには一人と言うように頷き、両親を問う言葉には少しだけ悲しげに苦笑いを浮かべて再び頭を振る。
母は早くに逝ってしまったし、父は祖国に殺されてしまった。
そんな辛い過去が脳裏をよぎったからで。

「…ぁ、そうでした。お名前お伝えしてなかったですね、私はリーゼロッテです」

暗い表情を誤魔化すように微笑み、かんたんに自己紹介を返していく。
温和そうな表情を作る彼に、疑いはしないものの警戒はとかない。
子供っぽく素直そうな反応をしつつも、相反する警戒の強さは異質に感じるかもしれない。

アダン > 実年齢ははっきりとはわからないが、彼女の見た目は幼い。
アダンは控えめにいっても人間としては最低の部類に入る。
紛れもない悪であり、己以外の全てを信じておらず、自身のためのものと考えているような男だ。
そんな男故に、彼女の幼気な可愛らしさと美しさには、当然惹かれた。
陵辱したい、と強く思ったのだ。
ならばすることは一つである。たとえ、その結果自身が破滅しようともそれはそれ。
狂気じみた情欲の衝動が彼を突き動かす。

彼女に笑みを浮かべ、特に怪我などはないということがわかれば、安堵さえしたように見せる。
勿論、実際には彼女への心配など微塵もしていない。当然である。自分からぶつかっていったのだから。
小太りの体を揺らす。どうみても運動などはできるようには見えないだろう。

「そうか、それはよかった。……そうか、申し訳ないことを聞いたな」

両親のことについて聞けば、悲しげに相手は首を横に振る。
直接言葉に出したわけではないが、両親が既に他界していると理解するには十分だった。
勿論これも演技。この歳で両親もいないとなれば、色々と面倒がない。

「ふむ、なるほど。リーゼロッテ嬢か。申し訳ないが、記憶にない。もしかするとどこかで一度会ったのかもしれないが。
 どうにも観劇になど来た様子ではないようだが……そろそろ、食事といったところかな。
 どうだろう、よければだが一緒に食事でも。ハハ、何私と一緒が嫌なら店を紹介するだけでいい。
 迷惑をかけたお詫びといったところだ」

すると、唐突に相手への食事の誘いをかける。
相手の反応からして、こちらを警戒しているのは感じられる。
それでいて敢えてアダンは相手に問いかけて見せるのである。
どこか、妖しげに薄い笑いさえも浮かべて。

リーゼロッテ > 安堵した様子から自分を犯そうとしているとまでは思わないものの、本当にいい人なのか?とは疑っていた。
とはいっても、見た感じに貴族にいそうな運動不足気味な姿は、仮に力尽くで来られても、魔力の波動を当てるだけで吹っ飛んでしまいそうに見える。
後は変なのを口に含まないようにしないとと、警戒のレベルを少しだけ下げた。

「いえ…昔のこと、ですから」

気にしてないと柔らかに微笑んでみせた。
今はもう整理はついたことだから、悲しくなるのは一瞬だけでいい。
でも、心配してくれた言葉は嬉しく微笑みに薄っすらと安堵が滲んでしまう。

「いえいえ、私も曖昧でしたから…。はい、ちょっとだけ贅沢なご飯を食べに」

やはり記憶違いかと苦笑いを浮かべながら頭を振る。
続く言葉には頷きながら応えると、誘いの言葉に即答はできず、どうしようかなと少しだけ思案顔になるが、童顔故に深く考えているようには見えない筈。

(「悪い人…悪い人ではないのかな? でも、普通悪い人なら、こんな分かりやすい手を使ったりするかな?」)

紹介するだけでもという言い方はちょっと引っかかるものの、敢えての行動は疑いを揺らがせる事になってしまう。
念のため、手の甲に潜んだ蝶へ掌を重ねると命令を仕込んでおく。
もし自分が掴まってしまったら、毒を撒くか、逃げれそうになかったら助けを呼ぶように心の中で紡いで命じると軽く手の甲を擦った。

「そうですね、何かの縁かもですし」

柔らかな微笑みで答え、小さく頷いた。
一応の警戒は解けたのは、こっそりとセイフティを仕込んだから。
万が一の時はどうにかなると思いつつ、薄い笑みの異質さに気づくことはなかった。

アダン > 「……それはよかった」

誘いを受けるとの返事に、また笑みを浮かべた。
相手を気遣う言葉も何もかも全て嘘だが、それを堂々と心底そう思っているかのように言葉を紡ぐ。
そんなことをしていても、アダンの心には一切の罪悪感は生まれない。
この世の善悪の違いなどを心のそこから嘲笑っているためだ。

「では行くとしようか。私がよく行く店があってね。
 ああ、勿論代金などは全て私が出そう」

心配の必要はない、と述べて彼女を案内するかのように歩き始める。
アダンはそのまま彼女に背を晒す。傍目には警戒などしていないようにみえるだろう。
貴族や金持ちを狙った盗人などもここでは数多い。その危険もありながら、無防備に見せている。

(……あっさりと承諾したな。何かしらの手段は持っているということだろうが)

なかなかこういった場面で見知らぬ男の誘いに乗ることはないだろう。
相手がよほど純粋か愚かか、あるいは何かしらの抵抗の手段を持ち、何かの思惑があるか、それぐらいのものだろう。
もしかすればアダンではどうしようもない手段を抱えている可能性もある。
だが、アダンはそれでも良いと思っていた。既に、自らにかけた魔術で恐怖心というものを、自ら殺している。
王城に出現した魔王でさえ、アダンは陵辱したのである。その後生き残ったのは運が良かったためであるが。

そうしてアダンが案内したのか幾つかの路地を抜けた先のこじんまりとしたレストランである。
穴場という感じの雰囲気で、人気はあまりないが、内装などは豪華である。貴族が利用しそうな場所と言えるだろう。
ここはアダンの息が掛かった、というよりアダンが裏で経営しているレストランだ。
中には魔導機械などが仕掛けており、ここで起こったことは外には漏れない。
そういうことを行うための場所だ。そこに彼女を案内する。
先に店内に入り、店員と言葉をかわし始める。

「……ああ、私だ。今日はこのご令嬢と一緒でね」

店員は承ったと一礼し、席を用意する。

「どうぞ、リーゼロッテ嬢。好きなものを頼むといい。
 私には子供がいないが、いたとすれば丁度君ぐらいの年齢になるだろうからね。
 つい世話をしたくなってしまった。……さて、お一人のほうが良いかな?」

店内に先に入り、テーブル席を指し示す。

リーゼロッテ > 疑れば色々嘘と言えてしまいそうな世界。
それでも少し信じようと思えたのは、心に余裕が作れたからかもしれない。
前だったら間違いなく逃げ出してる。
嘲笑う心の言葉に気づかぬまま、案内されるがまま歩き出す。

「そうなんですか? ……ぇ、い、いいんですか?」

軽い感じに行きつけのお店かなと思っていると、彼が持つという言葉にビクッと驚きながら、あわあわしながら確かめる言葉を紡ぐ。
結構お金がかかると思っていたので、それなりに準備していたのもあり、ぽんと出そうとする彼に困惑するような声が溢れる。
抵抗しようと思えば、それこそ彼を即死させかねない攻撃だって放てる。
それよりも、あまりに罠っぽいというのが、あからさまに掛ける事もないかなと油断につながっていた。
路地を抜ける合間、何処に行くのかなとあたりを見渡しつつ、ひと気が少なくなるとまさかと警戒仕掛けたところで店へとたどり着いた。

(「おもったより…普通かな、ぁ、でも中は違うんだ」)

隠れた名店といったそこは、中に入れば納得の内装が出迎えてくれる。
高そう なんてありふれた感想を思い描いて見渡していると、彼の言葉に視線を戻す。

「えっと…ありがとう、ございます。 ふふっ、よく仕事場でも妹とか娘扱いされてますから、お気持ちは何となくわかります」

妹扱いにぐしゃぐしゃと撫でられたり、娘扱いにやたら心配されたりは多く、楽しげに微笑みを浮かべていた。
問いかける言葉には緩く頭を振って。

「いえ、ご馳走になりますから…一緒がいいです。ちゃんとごちそうさまでしたって、お礼も言いたいですから」

彼がいることを望みつつ、店内へと入っていく。
言葉通りの意味もあるけれど、よく参謀さんにはこうも言われた。
疑りが残る相手ほど手元に置けと、視野から消えたら何をされるかわからないのだから。
そんな言葉に従い、悪いとは思いつつ彼をまだ警戒してしまう。
ウェイターに席を引かれ、ちょこんと座りながら彼をじっと見つめる。

アダン > 罠にしてみればかなりあからさまである。
いきなり出会った相手を食事に誘い、更にその場所は彼がよく行く場所であるという。
それでいて、アダンは見るからにただの人間である。
魔術や武術を使うような印象なども与えないはずである。
王都の貴族の腐敗は進んでいる。色々な罠も仕掛けられているのは想像できることだ。
どう見てもこの状況は怪しいのだが、アダンは平然としていた。
人を罠にかけ、陵辱する。そんなことが彼の毎日であるが故に、何も緊張するところなどないのであった。

相手が誘いに乘り、席に着くと心中でほくそ笑む。
一緒がいい、というのはこちらに感謝しているためか、それとも警戒しているためか。
知らぬ店に一人残される不安のためか。どれであるかはアダンにはわからなかったが、それ自体はどうでもいいことだった。
既にここはアダンに支配された場なのである。

「では私もご一緒させてもらうとしよう。……ほう、仕事場。そういえば君は銃を持っているね。すると、冒険者かね。
 私はまあ、見ての通り、凡庸な貴族でね。親の立場を引き継いだだけのつまらない男だ。
 一応は貿易や街の警備隊の一隊を率いてはいるが、お飾りみたいなものだ。
 近頃は王都も物騒でね。ならず者に魔族に……若い女性が被害に遭うことが多い。
 それを思うと、どうにも君を頬っておけなかったわけだ」

心にも思っていないことをぺらぺらと述べ立てる。“仕事”という言葉に興味をいだき、それも尋ねる。
一切思っていないようなことをさもそれらしく語ってみせるのはアダンの才能の一つであった。
なにせ、街の治安を損ねている原因の一翼を担うのはアダンであり、今まさに目の前の少女を陵辱しようと企んでいるのだから。

「まあ話はこれくらいにしておこうか。好きなものを頼むといい。
 まずは前菜が来るだろうから、それを食べながらでもかまわないよ」

そういってメニューを差し出す。値段などは書かれていない。とても貧乏人が来れるような場所ではないのがわかるだろう。
アダンの言うとおり、すぐに前菜がテーブルに並べられはじめた。
スープにサラダ、どれもこれも高級そうな素材を使っている。
それらには媚薬が盛られている。即座に効くというよりは、徐々に相手の感度を上げていくものだ。
まずはこれが効くかどうか、気づくかどうかを見る算段であった。気づいたならばそれはそれでやりようがある。

そして、もう一つの仕掛けを作動させる。アダンが思念することによって作動する魔導機械だ。
それはある種の事象を改変するもの。とはいえそこまで大した事はできない。不可視の状態で、相手に影響を与えることぐらいだ。
それを作動させ、まず行ったのは相手の尻めがけてへの軽いスパンキングだった。
手で叩かれたような刺激を与える、という事象が彼女に向かい、その衝撃を与えようとする。
その間もアダンはごくごく平然と食事を口にする。

リーゼロッテ > あからさまに罠を掛けるにしても、あからさま過ぎて罠っぽくない。
そして相手も平然としているのが余計に、罠ではないと逝っているかのように感じてしまう。
ライフルを背もたれに肩紐を引っ掛けるようにして立てかけ、席に座ると、向かいに座った彼の言葉に耳を傾ける。

「冒険者ではなくて、魔法銃の講師とか、色々と人手不足の場所に充てがわれてお手伝いをしてました。九頭竜山脈の麓に、戦争の後、集落が出来たんですけど…そこの組合の一人なんです」

九頭竜山脈の麓、戦争の後に王国軍第9師団 副将軍の私有地を元に作られた集落がある。
全ての人種が平等に扱われる場所、ミレー族の安住の地とすら言われるところ。
おまけに森のエルフ達とも繋がり、発展は目覚ましく、貴族や王族からは忌み嫌われてもいた。
講師といわれると何時も嘘だと言われるのが、少しむっとするところで、困ったように苦笑いを浮かべている。

「貿易に警備ですか、じゃあ馬車の発着所に凄くがっしりした馬車が止まってるの、みたことありますか? あれがうちのところの馬車なんです」

山賊街道であっても山賊達が避けて通るほど防御力に優れた装甲馬車は、王都にもよくやってくる。
うちの自慢の馬車なんですと、寂しい胸元を張って満足気に微笑みを浮かべていた。

「ぁ……そう、ですね。そういう悪い人は死んじゃえばいいんです。だから、その時は遠慮しないって決めてるから大丈夫ですよ?」

最初は少しばかり不安そうに表情が曇ったものの、その後は奇妙なほどに花咲くような微笑みを見せて死を軽く語った。
女を食い物にする輩は遠慮なく殺す、覚悟というより脅し文句のように言葉少し冷たくなり、瞳の青が少し深くなったようにみえるかもしれない。
けれど、その後にご心配ありがとうございますと微笑む頃には、変わらぬ子供っぽい笑顔が見えるだろう。

「はい、えっと……じゃあ、遠慮なくお願いしちゃいますね? …ぁ、じゃあこれ、お願いします」

差し出されたメニューは値段の表記がない、これは間違いなく高いと、苦笑いの頬を冷や汗が垂れた。
魚の料理を一つお願いすると、その合間に届いた前菜に目を輝かせる。

「美味しそうです、いただきます」

早速とスープとサラダに手を伸ばすものの、最初の一口は少し小さめに遠慮気味に食べる。
毒草と薬草を見極める為に少しだけ舌はいい、味に違和感のある雑味がなければそのまま普通に食べ始めるが、もし雑味があるなら、こてりと首を傾げて手を止めるだろう。

「……っ!?」

不意に尻を叩かれるような刺激が臀部を走る。
びくっと背筋が跳ねて驚き、丸い目が少しばかり見開かれてしまう。
何事かと椅子の周りを軽く一瞥するものの、何もない。
彼は普通に食事をしているし…気のせいだろうか?と不思議に思いながら、魔導機器の仕業とは気付けずにいた。

アダン > 「なるほど、魔法銃の講師か。若いのにそのような仕事につけるとは、きっとかなり実力があるということかな?
 ほう、組合ね……ああ、見たことがあるとも。傭兵だと聞いていたが」

相手の言葉に耳を傾けつつ、組合という言葉に反応する。
相手はこちらがそれを知らぬと思ったのか、どこか自慢げに話している。
九頭竜山脈の麓、そして街に時折現れる装甲馬車。
となれば、方向はかなり絞られる。なるほど、あの集落の関係者か、と目を細める。
だが、そうであろうともあまりアダンには関係がない。
もしこの後のことが原因で連中と何があったとしても、事態が動けばその分アダンという男は動きやすい。
しかし、そう言った考えも今は頭の中から消した。今はそのような想像をしても意味がない。
何より、相手がそのようなことを他人に明かしていることこそが、ある種の油断であるとも思われた。
そんなことは本来なら伏せておくべきことだ。言うべきことではない。

「……ほう、なかなか恐ろしいことをいうね。一応この王都は法で守られた都市だ。
 身分によってその法の適応の度合いも違う。君の言うとおり、悪人はそういった罰を受けるべきかもしれない。
 しかし、世の中には君より強い存在も多くいるだろう。王都では殺すまではしないほうがいい……と、警備隊を率いている者の一人として言っておこう。
 犯罪者として君を裁きたくはないものだ」

本人が法など全く気にもしておらず、警備隊は私兵集団のように扱っているのだが、平然と虚言を述べ続ける。王都では法などいくらでも捻じ曲げられる。
相手の言葉は、どこか狂気じみていた。年頃の少女がいう台詞ではない。しかもそれをどこか嬉しそうに言うのだ。
おそらくは、そう言った事を何度か行ったのであろう。相手の冷たい言動、それは普通ならば恐怖を以て受け入れられるものだ。
しかし、アダンはそれを気にした様子はない。むしろそれに対して口角を釣り上げて笑みを浮かべている。本気と取っていないのか、とも思われるだろう。
実際にはそういった恐怖心が既に魔術で消されている。そして、そんな考えを抱いている少女を実際に襲おうとしているのだから、何よりも楽しい、などと考えていた。

「おや、どうかしたかね?」

相手の様子が変わる。何やらあたりを見回している。
その原因は勿論知っているのだが、とぼけたように疑問の声を上げる。
媚薬は相手にバレないようにと無味無臭のものを使ってはいるが、それは相手次第だ。非常に感が良ければ感づかれてしまう可能性もある。
次にすぐに魚料理も運ばれてくる。それには粘ついた白いソースがかけられている。
こういうときのために貯蔵しているアダンの精液がかけられたものだ。
口にすれば明らかな異変に気づくであろう。

そして、もしそれを口にすればすぐさま何度かの臀部への刺激が飛ぶことになる。
椅子の座面からは彼女の秘所めがけて下着越しにこすれるように幾つもの球のついた不可視の張り型が出現する。
既に隠す気がないほどの卑猥な仕掛けが飛び出すことになる。そうなれば流石に気づくであろう。この店に仕掛けられたものに。
立て続けに、相手をバカにしたように、挑発するかのように、罠が連続していく。

リーゼロッテ > 「あまり自覚はないですけど…強いって皆からは言われます。そうですね、正規の仕事だけのいい傭兵さんです」

敢えて伏せることでもないだろうと思い、すんなりと教えてしまったわけだが、万が一の時はどうにかしようという考えあってのこと。
逆にいうなら、どうにか出来るという考えが驕りともいえるかもしれないけれど。
そんな内心は隠したままに微笑んでいた。

「……ぁ、ご、ごめんなさい」

裁きたくないという忠告の言葉にハッとするとすれば、慌てて謝罪の言葉を紡ぎ、しゅんと肩を窄める。
姉はそれでいいというかもしれないけれど、彼は魔族でもないし、法の番人でもあるのだからと思えば、言葉が過ぎたと素直に反省していた。
笑ってごまかしてくれたのは幸いと…彼の狂気には気づかぬまま。

「いえ……なんでもないですよ?」

彼の素知らぬ様子にちょっと不自然な苦笑いを浮かべながら頭を振った。
何か叩かれたようなきがするなんて、言えるはずもない。
料理に含む薬が無味無臭となると、些細な雑味を感じることが出来ず、そのまま媚毒を身体に入れていってしまう。
美味しさに驚いたのかななんて冗談じみた事を思い浮かべながら、前菜を終えると魚料理が運ばれてきた。
ソースの正体に気づくことはなく、そのままフォークで白身の魚とそれを口へと運び…舌に忘れもしない最悪な味覚が走ると、顔が青ざめた。

「っ…!?」

陰裂をなぞる球体状の梁型、思わずそこへ手を伸ばすと見えないが形があるのは分かった。
ナプキンを引っ掴み、口元を隠しながら口にしたものを吐き出すと、すぐに立ち上がる。

「……なんのつもり、ですか?」

静かに問いかけながら、顔にはうっすらと怒りが浮かぶ。
木製の前床を掴み、ライフルを手元に引き寄せながら彼に問いかける。
あからさまな仕掛けに、何故こんな仕打ちをするのか、羞恥よりは怒りと共に疑問が胸に渦巻く。

アダン > 「なんのつもり、とはどういうことかな?」

青ざめた表情で相手が立ち上がり、怒りの形相をこちらに向ければ深く椅子に腰掛け、彼女を見上げる。相手が何に怒っているのかなど当然全てわかっている。
それでいてなお、余裕のある笑みで、相手を小馬鹿にしたような態度を取る。

「その様子だと何かあったということらしいが、まるでその言い方では私が原因と言っているようだが。
 証拠でもあるというのかな?」

今すぐにでもライフルの銃口を向けられそうな雰囲気だが、アダンはそれを意に介していない。
いくらなんでもおかしいと思われるかもしれないだろう。明らかに仕掛けはバレたのである。
それでも、証拠があるのか、などと悠長な事を述べる。確かにアダンの思念で動く魔導機械のシステムなどは因果関係を証明しづらいだろう。
しかし、アダンの余裕はそういったことにあるのではなかった。

こうしている間にも、仕掛けは作動する。
相手の臀部にめがけてまたも不可視の手が向けられ、そこを叩こうとする。
アダンが手を挙げれば、それに呼応するかのようにして、彼女のスカートを不可視の触腕が引っ張り上げようとする。
口では否定しているものの、あからさまに因果関係を示している。まるで挑発するかのよう。こちらに、攻撃を食わせさせるための。

「ああ、ソースのことかな? まあ、少し特殊なものをかけさせてはもらったが、お気に召さなかったらしい。
 君のような娘は、気に入ると思ったんだがね」

そして、時間は十分に稼がれた。嘲笑うようにアダンが述べ続ける。
そのころには、彼女の体に入り込んだ媚毒は十分に染み渡っているだろう。
身体の奥から発情を促すような熱と、外部から与えられる刺激を増幅させる毒が身体に満ちる。
それは相手の行動を鈍らせるもの。しかし、完全に行動力を奪うものではない。

リーゼロッテ > これだけの仕打ちをして白を切るとは思いもせず、ぐわっと怒りが胸の中で燃え上がる。
証拠がどうだと言われれば、この仕打ちと彼との繋がりは細かに調べなければわからないだろう。
けれど、状況だけでも彼が何か仕掛けたとしか言いようがない。
それは幼い自分にだって分かること、怒りが渦巻く中、再び尻を叩かれれば、ビクッとして少し前のめりになり、スカートが引っ張り上がると、白地に薄桜色のレースが飾られたショーツがさらされてしまい、真っ赤になりながらバッと裾を押さえて隠そうとする。

「…それなら、アダンさんはそのソースを口に出来ますか?」

精液と変わらぬ味、無理矢理に何度も口にさせられたそれを忘れるはずもなかった。
そして問いかけると同時に体に回る媚毒が身体を熱くさせ、これも覚えがある淡い疼きが体の動きを阻害しようとしていく。
男なら同性の体液をすんなりとは口にしたがらないだろう、出来ないことが一種の証拠になると、少女にしては考えた確かめ方を求めていく。

(「……ホント、この街って腐ってるの」)

自分が壊されたときと似た状況、攻撃を仕掛けるより前に怒りがマグマの様に煮えたぎって行くのに、心が冷たく相手を軽蔑していく。
瞳の青色が少し深くなったように、瞳にうっすらと影かかるように暗い感情を顔に滲ませていくと、気づかぬまま右手に黒い羽の紋様が浮かび、一瞬だけ青い炎がポンと爆ぜるように浮かんだ。

アダン > 「不思議なことがあるものだな。まるで尻でも叩かれたような反応の上、スカートが勝手にめくれるとは。
 なかなか可愛らしい下着だ。もっとよく見せて貰いたいものだ」

白を切るつもりがあるのかないのか、明らかに相手を愚弄し、軽んじている口調である。
スカートの中が覗けたが、すぐに彼女によって覆い隠される。

実際のところ、証拠だなんだというのはあまり意味がない。この身分差が特に厳しい王都では。
アダンが当主であるフェリサ家は王家の血を引いており、さらにはアダンの背後には特に有力な王家がいる。
もみ消そうと思えばいくらでももみ消せる事件である。それに、相手はあの傭兵たちとも関係があるのだという。
そうなれば、相手に味方をするものは王都には少ないということになろう。

だが、彼女が実際に九頭竜山脈の麓のあの集落に行けばアダンとして手を出すことは難しい。
このまま怒りを買い続け、殺され、あるいは殺されずと傷付けられれば彼女を負うことなどできない。
彼女も、王都を脱出できるぐらいの余裕はあるだろう。相手の実力はとてもアダンでは敵わないのだから。
どちらにせよ、アダンには対して得にもならなそうなことばかりである。面倒が増えるだけといえるだろう。
それでもアダンは挑発的な言葉を続け、わざとらしくとぼけてみせた。

「ハハ、君のような娘が好きなもの、と言っただろう。
 誰が好き好んで自分の精液など口にするというのか。気は確かかね?」

次には、明確に精液だと認めさえもした。しかもかなり馬鹿にしている口調である。
一つの証拠にはなるに違いないが、だからどうしたという態度だ。

「……ほう、それは何かの魔術かね? まあ、やるならやるといい。
 そういう男は殺すというのが君の流儀なのだろう。まるで魔族だな。野蛮なことだ。
 どういうつもりか、だと? 決まっているだろう。仕置きだよ。
 王都に銃など持ち込んであるき回り、さらにはあの傭兵団とも関係がある。
 街の警備を預かるものとして、見過ごしてはおけんな。
 ま、せいぜい肉便器として使って釈放してやろうかと思っただけだ。
 どうだね、これで満足か?」

これは不審人物への仕置や尋問であるなどと言いながら、アダンは立ち上がる。
彼女の瞳は暗くなり、明らかなこちらへの侮蔑が感じられる。そのときに、黒い羽の文様が浮かんで、青い炎が爆ぜた。
それを見て興味深そうに声を上げる。

「もう一つ加えよう。怪しげな魔術を使う……そうだな、魔族の関係者、というところでどうだ。
 さっさと攻撃したらどうだ。貴族への暴力行為という罪も増える。ああ、しかし、ここで私が殺されれば、罪を問うことすらできんがね」

口からでまかせだが、それもまた罪状の一つだなどと述べる。
それと同時に不可視の魔導機械が再び作動する。
彼女の両足を縄のようなものが絡もうとし、そのまま開かせようとする。
さらに、彼女の股下に幾つもの球のついたいわゆる股縄が出現して、下着越しに秘所に食い込もうとする。
その球は媚毒に犯された身体を刺激しようとする。
さらには、明らかに敵意を向けられているのにも関わらず、アダンは彼女の方へとあるき出し、その尻を直接叩こうと手を振り上げた。

リーゼロッテ > 「分かっててそんなことを…っ」

完全に嘲る口調の彼に、一層の怒りが込み上がる。
媚薬が身体に周り、身体の自由が鈍くなっていく中、本当に銃口を向けようとすら思うほどに憎しみが渦巻く。
ただ、少しだけ不思議に思うこともあった。
本当に撃ってしまったら彼は死ぬだろう、それを遮るすべがあるようにも思えない。
挑発を重ね続ける彼に、一抹の疑問を抱きながら、触腕を振り払おうと銃床でそれを打ち払おうとした。

「最低です…本当に、最低…」

精液と認めた上、一層に小馬鹿にした口調。
ぎりっと奥歯を噛みしめる音すらしそうなほど苛立ってしまう。
不意に魔術と言われ、まさかと少し驚きながら右手へと視線を落とす。
消えたはずの紋章が戻っている、どうして?何故?と思うものの、あの断罪を求む鴉達の声が自分の耳にだけ聞こえると少しだけ安堵してクスッと微笑んでしまう。
この人は本当に自殺でもしたかったのかと思えるほど。

「……その昔ね、ここに本当の神様がいた頃…凄く神様が好きで、おかしくなっちゃった子がいたの。魔族だけじゃなくて、悪人も、苦しむ人も皆殺しちゃう。だから神様が危ないって閉じ込めた子。アダンさんは、私と繋がりが消えちゃったその子ともう一度繋いじゃったんだよ?」

とんっと胸元に手を当てると、体内にその力を流し込む。
媚薬の成分を体内から焼き払い、疼きを悪化しないように押さえ込むとライフルのスリングを肩にかける。
同時に足に縄が掛かり、強引に開かされると見えない股縄が秘列に食い込む。
びくりと体を震わせ、ごりごりと擦れる度に小さく振るえながらも、スイっと指先を彼に向けた。
意趣返しというように一瞬空間が揺らぐようにしか見えない程、不可視化した炎の弾を彼に放つ。

「ひぐっ……」

当たれば痛みも火傷も何も起きない、ただ、彼が尻へ平手を振り下ろした後…内側から一瞬だけ全身を焼かれるような激痛が走るだろう。
こちらも平手に淡い痛みを感じつつ、小さな悲鳴を上げ、じっと彼を暗い瞳が見つめる。

アダン > 「ああ、最低だろう。そんなことはわざわざ口に出す必要もない。
 正しいや間違いなどというものには意味がない。私は私のしたいことをしているだけだ。
 それをお前がどう感じようがそれは自由だ。そして、私にとってその感情は、何の意味もない」

相手の苛立ちの様子を見て取り、口角を釣り上げて嗤う。
不可視ではあるが実体はあるためにそれらは銃床で打ち払われては、彼女の脚に絡みつこうともがいていく。
触腕は更に増え、彼女の腕をも絡め取ろうとしていく。

アダンが支配している場とは言え、あまりいい状況ではない。
アダンの指摘に何か気づいたらしく、彼女は自身の右手を見る。
そして、不意に笑みを浮かべた。

「……ほう、なるほど。それで?
 その力を繋いでしまったために私はここで死ぬと?」

相手が嬉しそうに語る言葉を聞きつつ、そう答えた。
かつて、真なる創造神がいた。アイオーンと呼ばれる神がいた。
そのことは、かつてミレー族を尋問した際に彼らの神話体系から読み解くことができた。
おそらくは事実なのだろうが、アダンにとってそれはあまり意味のないことだった。
そういう存在がいたとして、それが世に再び放たれたとしても、だからどうした、ということなのだ。

「ならば、そういう力を宿した娘を犯すのも面白かろう。
 かつての創造神だかなんだか知らんが、お前は雌だ。なら、それで十分だろう。
 以前に魔王を自称するやつを犯したことがあってな。それと同じようなもの、だッ!」
彼女が胸元に手を当てるのをアダンは見た。何かをしたらしいが、それはアダンにはわからない。
ライフルに手がかけられるとともに、縄が脚にかかって彼女の秘所に股縄が食い込んでいく。
それはかなり激しく動き、秘所の敏感な部分を刺激したかと思えば、急激に速度を落とし、またランダムに速度を上げるということを繰り返す。
相手が人間であれ魔族であれ、女なら犯すだけだと、そんな言葉を吐くとともに手を振り上げる。
そのとき、アダンの身体に見えない炎の球が打ち込まれた。

「ぐぅ、が、ぁ、ああっ……!!」

スパァン! と強く彼女の尻を平手で打った後、一瞬全身を焼かれるような痛みが走る。
わずかに一瞬のことだが、それでも失神しそうなほどの痛みである。アダンの苦悶の声が響く。

「それで……どうした。これは呪いか何かか? 
 もっと叩かれたい、ということか? しっかり縄で刺激されておきながら、生意気なことだ!
 ああ、酷く興奮してきたぞ。お前のような娘を犯すのは久しぶり、だからな!」

だがそれでもアダンは手を振り上げて彼女の尻を何度も叩く。
その度に激痛が走るかもしれぬのに、彼女の尻を押さえつけて、秘所に縄を更に食い込ませようとする。
暗い瞳で見つめられるが、同時にアダンにも狂気じみた瞳の光があった。
この一時をひたすらに楽しめればいいというような、獣のような情欲の光である。

「ミレー族から旧神の護符とやらを奪っておいて、正解だったなッ!」

ミレー族から奪い取った旧神の護符をアダンは身につけていた。
それが多少なりともアダンの身体を守った。更にはアダンの身体にかけられている魔術が痛みを軽減した。
身体には確実にダメージが来ているが、相手の身体の芯を刺激するかのように、尻叩きを続けつつ、自らのズボンを降ろして、魔術で強化した兇悪な肉棒を露出する。

リーゼロッテ > 己以外の個を否定する言葉は、狂気に満ちているようにも聞こえる。
自分をこれでもかと否定する言葉、触腕を打ち払おうとするも、それが更に増えれば、腕が絡め取られてしまう。
しかし、薄っすらと浮かべた笑みは消えなかった。
今はまだ、その理由を映し出すつもりはないけれど。

「殺すか、殺さないかは…私次第なの」

もう彼に火を撃ち込んでしまった。
これが少女の言う自分次第という決定的な理由。
敢えてライフルを向けずに肩に背負ってしまったのは、ライフルが必要ないからに過ぎない。

「ひぐっ…!? んぐっ…ぁ…っ…!」

激しく、ときに緩やかに股縄が動き回って割れ目をこすりつける。
鼻にかかった声が溢れてしまうのは、疼き自体を抑える力が炎にはないからで。
どんな存在だろうと犯してやると、ムキになっていく様子もどこかで冷静な自分がおかしいと思ってしまう。
本当にただの牝で肉奴隷程度にしか思わないなら、もっとエグい手段で自分をすべて壊すだろう。
まるで逆らうことを、火傷することを楽しんでいるように思えてくる。

「それは警告だよ? 次は…加減しないから。ぐっ、あぐっ…!? んぅっ……ぁっ…!」

仕返しというように尻肉を叩きつける平手、そして強引に快楽を押し込む股縄に苦悶と甘美の声が入り交じる。
ビクビクと小刻みに体を震わせ、吐息も震えるほどに痛みと快楽がまぜこぜになって、意識がおかしくなりそう。
犯してやると言わんばかりに肉棒が晒された瞬間、拘束されたままもう一度炎を働かせた。
あの痛みが一層強くなる、護符があるというなら加減せず、普通なら失神しかねないレベルの焼ける痛みを断続的に流そうとしていく。

「……アダンさんは死にたいの?」

ぼそりと呟く言葉は、先程までの冷えている音とは少し違う。
単純に疑問に思い続けた違和感を、彼へ問いかける。
自分に力を出させる余裕すら与えて、痛みを受けているのに犯そうとギラついた目で睨みつける彼。
憎しみの矛先を向けられたいとでも願っているように感じると、魔力の波動をポンと当たりに放つ。
魔法か魔導機器なら強い魔力を当てられれば呪文や回路がおかしくなってストップするはずと、身体の自由を奪う何かを抑え込もうと試みる。

アダン > 「なら、好きにすればいい。私はお前たちのような存在ではない。殺そうというのなら、そうするがいい。
 笑うならば笑うがいい。そんな強力な力を持っていながら、私に尻を叩かれて、縄で股を擦られているんだ。
 そっちのほうが、お笑い草だろう。そんな力でも雌の反応は止められないのだからな」

先程打ち込まれた何か。
それが何かアダンにはわからない。彼女がいうのならば、それは致命的なものなのだろう。
こちらの命を内側から奪うものか。何にせよ魔術の素養などがないアダンでは理解のしようがない。
それでも気にしないかのように、彼女へのスパンキングを続ける。
尻を押し付けて縄を秘所に食い込ませながら、尻肉を広げ、思念を送る。
そうすれば、幾つもの球のついた、いわゆるアナルビーズが次々と押し込まれていく。
その上で尻肉を再び叩き上げ、縄を押し付ける。

「ぐぅ、あ、ぁぁっ……!!」

肉棒を晒せば、ほぼ同時に焼け付く痛みが身体を走る。それが断続的に流されるも、アダンは失神することはない。
精神力のためなのか、護符のためなのか、あるいは別に仕掛けがあるのか。
アダンは薄く笑みを浮かべ、彼女の疑問に答える。
「死にたいのか」という疑問に。

「いいや、死にたいわけなどなかろう。私はただ、お前を陵辱したいだけだ。
 魔族だか魔術師だかなんだか知らんが、そういった力を以て私を嗤うお前をな。
 理由は簡単だ。何の反応もない娘を犯して面白いか? 憎しみも何も向けられずに犯すことが面白いか?
 私は面白くない。故にただそれだけだ。この腐りきった世だ。それぐらいの楽しみは欲しいものよ」

肉棒を晒したまま、彼女の背後に近づく。ただただ反応があったほうがいい。
ただそれだけのために、死ぬかもしれない痛みに耐えているのだとのたまう。
叩き上げた尻をもう二度強く叩くと、彼女の下着をずらし、肉棒を秘所に押し付ける。

すると、彼女の魔力の波動が空間に放たれた。強い魔力である。
普通の魔動機器ならばそれだけで回路が破壊されてストップするだろう。

「ようやく使ってくれたか。面倒なシステムには困ったものだが。
 そう、ここに使っているのは魔導機械だ。ただし、普通のものではない。
 遺跡の奥より発掘したもの、神代の時代の魔導機械だ。
 この僅かな空間の事象を、私の思うように操れる。勿論限界はある。貴様の力を全て操ることは不可能だ。
 だが、放たれた魔力を跳ね返すことはできる。そして、魔導機械によって私自身にかけた呪いをお前に返すことも」

そう言うと、彼女が放った魔力の波動が、不意に現れた鏡のようなものに一気に弾かれ、彼女へと凄まじい勢いで跳ね返っていく。
彼女を押さえ込んでいるのは、アダンが制御した事象そのものであるというのである。

「私にかけた呪いとは、私が受けた痛みを相手に返すというものだ。魔族が来ることもあろうからな、こういう用意をさせてもらった。
 ただし、今回それを変換した。お前に与えるのは痛みではない。強烈な快楽だ。
 私が受けた、失神しそうなほどの、強烈なものだがな」

と、それと同時に、自身の肉棒で彼女の秘所を貫かんと腰を付き出した。
これが効かないのならば、そのときはその時だ。

リーゼロッテ > また危険を冒すような言葉を吐き出している。
その合間も強引に尻を広げられて、菊座を冒す礫を押し込まれてしまう。
滑りがない分、痛みのほうが強く感じてしまい、ずりずりと粘膜を強く擦られる刺激にぐっと唇を噛み締めながら顔を顰めて耐えていく。

「嗤うって……アダンさんが最初にこんなことをしたからでしょ? 腐ってるって、思うんだ…」

勝手も甚だしい理由に呆れながらも、身体の刺激に耐えながら抗議の言葉を紡ぐ。
腐っているといった彼の言葉に以外というように目を丸くして驚いたのは、この世界を良いと言わなかったことだ。
心底腐ってるなら、腐ってることすら分からない。
腐ってると紡いだ彼に、呆然としている合間に尻を叩かれると、薄っすらと白い肌に赤い跡が残り始め、ひぐっと再び背筋が仰け反る。
ショーツがずらされると、スリットの上にあるハート型の茂みも薄っすらと蜜を分泌する割れ目もさらされてしまい、肉棒の違う体温に身体が淡く跳ねた。

「…痛みはおまけだよ?」

本来は命を焼き払う炎、痛みを与えるか与えないかは自分次第。
痛みを快楽に変換され、魔力と共に身体へ叩き込まれると、ぶしゅっと蜜が溢れかえり、一瞬のうちに連続して絶頂を迎えていしまう。
のけぞったまま意識が焼け落ちそうなほどの快楽に、声も出せない。
ただ、そうなる一歩手前に炎の本来の使い方をしていた。
命を焼く、僅かだが立ちくらみの様な淡い疲労を感じるだろう。
本当ならそのまま意識を奪って殺す程だが、彼の反撃にそこまでは出来ず…何よりする気はなかった。
あっさりと肉棒を受け入れると、膜の名残が再び裂けていき、ぶつりと弾ける感触を与えつつ、絡みつくような肉襞の壺が肉棒を包み込み、ギュウギュウに締め付けていく。

アダン > 「何とでも言え、私以外の存在は、私の欲望を満たす以外に価値はない。
 私が如何に勝手なことをして如何に勝手なことを言い、それが非難されてもだ。
 私がそう定義している以上、それで話は終わりだ。
 この世界は既に後戻りができないほど腐った。もうどうしようもないわけだ。
 ならば、私も好きにするだけだ……!」

酷く独善的な、そして自分以外に価値はない、と述べる。
自分という存在が絶対の基準であるため、何を言われようとも気にしないという論調である。
ある意味子供じみており、社会不適合もいいところなのだが、アダンはその上でここまで生き残ってきたのである。
若い時分は、まともな思考も持ち合わせ、世を憂う心もあった。
ただ、現実を知った時、アダンはそれらを全て捨て去ったのであった。
世の中が腐っていることを知り、自らもそうあろうとしたのであった。

ハートの形の茂みや幼気な割れ目を見て興奮したのか、一気に貫いた肉棒は更に大きさをましていく。
女を啼かせるためにと魔術で強化した肉棒は狭い膣内を暴れまわり、様々な箇所を突き上げていく。

「く、うぅぅ……!」

彼女に魔力の波導を向ける直前、身体に打ち込まれた炎が命を焼く。
目眩と疲労感を感じ、僅かにふらつく。命を削られているというのも理解できた。
しかし、それよりも欲望が勝った。
女を犯すためだけにここまでの設備と、とてつもない価値のある魔導機械を用いているような男である。
この程度で諦めたりすることはなかった。

強烈な快楽を打ち込むことに成功し、秘所から愛液が吹き出し、何度も絶頂している様がわかる。
膜の名残を破ったことで興奮の度合いが増したのか、アダンは更に腰を早めていく。
強く締め付け、肉棒を拒むかのような動きを無理やり肉棒で押し広げていく。
絡みつく肉襞と締め付けはかなりの快楽をアダンに与える。
仕置きとばかりに快楽の波導は何度か打ち込まれ、アダンは彼女の尻を叩きつつ、指であ増えっる愛液を掬ってアナルビーズにまぶし、それを引き抜いたり再び入れたりを繰り返す。

「いやらしい反応だな、この雌め……!」

触腕を動かして、彼女の脚を高く上げさせ、卑猥なポーズを強いようとしながら、腰を掴んでガツンガツンと子宮口を容赦なく突き上げる。
あっさり肉棒が受け入れられ、炎の抵抗もないのが、何か目的があるのかと一瞬気にはなったものの、犯すことに集中する。
秘所を攻めていた股縄は少し移動し、今度はクリトリスめがけて幾つもの球をぶつけ始めていく。

リーゼロッテ > 「……リーゼと同じだったんだ」

彼の言葉にボソリと溢れたのが、やっと分かった胸のつっかえだった。
性別の違いか、それとも腐った世界を見た方法の違いか…彼も自分と同じくこの世界を見限ったと知る。
その言葉の先を紡ぐよりも先に、強引に抉りぬかれた膣内の快楽と痛みに大きくのけぞり、間を置いて痙攣するように体を震わせていく。
声は出ず、過呼吸のような掠れた音だけが響き、かひゅっと何度も息を吐きだして振るえ続ける。

「っ……は……っ――――!」

サラサラとした蜜が肉棒を包み、ギュウギュウに締め付ける中でも潤滑油として動きの引っかかりをなくしてしまう。
破けた膜の名残は、内股に赤いラインをいくつも描く。
強引に押し広げられ、奥底を何度打ち付けられても奥へ奥へと導くように身体は反応して蠢いてしまい、尻を叩かれれば、その刺激に、きゅ、きゅっと締め付けてしまう。
潤滑油が絡みついたパールがこりこりと菊座を刺激すれば、肉襞は痙攣して、更にパターンを変えてしゃぶり尽くしていき、彼が罵るとおり、厭らしい牝の身体を晒してしまう。

「……アダンさん、が…嫌った世界に、こう…されちゃったんだよ?」

彼を憎めなくなってしまった、その瞬間、手の甲の黒い羽が消えてしまう。
鴉の声も聞こえなくなり、また壊れるか死んじゃうか…と自分で呆れてしまう。
されるがまま、卑猥に股を開き、しなやかな股関節はY字開脚も軽々と応じていく。
ごり、ぐりっと子宮口に僅かながら肉棒の先端が食い込みつつ、肉芽を弾かれれば、きゅうっと締め付けが強まる。

「っ…ぁ、んんっ……は…っ、ぁ……ぁっ…ふ…ぁっ…!」

先程までの抵抗が消えてしまい、されるがままに、貪られつつ、甘い声を溢れさせていた。

アダン > 「……何を共感している?」

ぐり、と勢い良く膣内を突き上げる。
相手の事情など知らない。そんなものはどうでもいいとばかりに腰を振る。
愛液が肉棒の動きをより滑らかにしていき、アダンもそれに乗じていく。
彼女の秘所から膜を破った痕が流れ出ても、容赦はしない。

「ハッ……散々いっておいて、結局は肉便器、か……!」

相手の心情の変化はわからないが、やりやすくなったのは事実である。
かなり良い反応を膣内は示し、尻を叩き尻穴を攻めれば、膣内が更に肉棒を締め付け、吸い付いていく。

「……ふん、知らん、な。私とお前が同じであろうがなんであろうが。
 お前はもうただの雌だ。勝手に、納得してるんじゃない!」

スパァン! と強く尻を叩き、また腰を動かし始める。
子宮口を強引に突き上げ、何度も何度もその身体を貪っていく。
そして、肉棒が大きく跳ねて、膣内へと大量の精液を流し込んでいった。

その後の彼女は従順であった。抵抗は消えてされるがままだ。
アダンの肉棒はまだ収まらずに、大量に精液を射精した後も、今度は彼女の口内を犯し、何度も精液を飲ませ続けた。
次は尻穴を犯し――それを幾度となく繰り返し、彼女を穢し続けた。

彼女の手の甲の黒い羽は消え、とりあえず命の危険は去ったらしい。
そうとわかれば、もう仕掛けに手をかける必要もない。
ただただアダンは彼女を犯し続けていった。

翌朝、アダンは白濁に塗れた彼女を店の外に出した後、一人邸へと去っていった――

ご案内:「王都富裕地区 大通り」からアダンさんが去りました。
ご案内:「王都富裕地区 大通り」からリーゼロッテさんが去りました。