2016/09/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にマリエルさんが現れました。
マリエル > ――――――其処から出て来る客ならば、正直に言って、誰でも良かった。

身なりの良い男、加えて念入りな化粧も施している女、
誰であっても、己の目には只、一様に、歩く財布程度の存在。
王都に流れ着いて数日、そろそろまともな食事もとりたい、
欲を言えば真っ当な宿に泊まりたい。

だからもう――――本当に、誰でも良いのだ。
勿論、成功率のことを考えるなら、出来るだけ鈍重そうな相手が良い。

劇場裏手の路地の暗がりに紛れ、正面玄関から吐き出される人々を、
有り体に言えば『物色』する。

壮年、よりも老年、に近い、いかにも走れなさそうな男がひとり。
真っ直ぐ帰宅する気は無いのか、単なる酔っ払いなのか、
ふらふらと通りを歩き始めるのを認めて、暗がりから身を乗り出した。

――――軽やかに地を蹴って、其の男の背後へ。
叶うなら勢い良くぶつかって男をふらつかせ、懐の物を掠め取りたい。