2016/08/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にレガトゥスさんが現れました。
レガトゥス > それは、少年と見るには華奢だが、少女と見るには長身である、一個の影であった。
闇の中でも、灼熱の日差しの下でも、恐らくは同じ一つを纏うのだろう、ローブ姿であった。
ローブの下に覗く腕や脚を覆うのは、白肌も透ける薄布一枚。
フードから炯々たる眼光が、獲物を探し左右する――

居た。王城へ続く通りを巡回する兵士。
交代の最中か、不誠実の為か、兵士は一人であった。

「……雄か」

少年とも少女とも分からぬ影は、その何れとも見て取れるかんばせから、何れとも思える声を発した。
ローブの内より、獣が這い出した。
四足の、狼に良く似た姿の、だが目玉の数が多い獣は三頭、足音も軽く石畳を馳せ――

悲鳴は上がらない。
兵士の喉を、獣が食い潰したのだ。

レガトゥス > ばぎん。ごぎん。がりっ。ごりっ。ぐちっ。
骨の潰れる音腱の断ち切れる音肉の咀嚼される音、その他様々な音が、夜の街に流れている。
血の臭いと、獣の臭いと、もはや人の嗅覚でさえ異常を察知し得る中に――
苦痛による、呻き声。
潰れた喉で兵士が呻いている――喰われながら。

「不味いな、不味い。ろくでもない肉だ。磨かれていない」

獣三頭と共に、石畳に膝を着き。
装飾用の剣の如く、鋭利な美貌を血と腑に濡らして、〝それ〟は兵士の腹腔に顔を突っ込んで、中身を喰らっている。

レガトゥス > そして遂に、兵士の腹腔は空になる。
喰ったものに〝それ〟は、人のような礼儀を払わなかった。
獣は、餌を喰う。喰えるだけ喰ったらそれまでだ。そういう風に、骸を打ち捨て――

「……そうだな。おう」

――否。〝それ〟は、一度置き去りにした骸の元へ戻ると、
末期の苦痛に歪んだ顔を足置きに、肋を腰掛けとして、路上に座した。
誰でも良い。
戦える者でも、戦えぬ者でも。欲を満たす何かが来ることを祈るように。

レガトゥス > やがて、〝それ〟が待ち望んでいた者が来る。
槍を、剣を、飛礫を、弓矢を、手に手に携えた兵士の群れ。
数は――4か、5か。
成程、甲冑の厚さ、刃の鋭利さ。それが本当に獣であれば、十分に事足りる数値。

「不足」

〝それ〟は、言葉とは裏腹に、酷く残忍な笑みと共に立ち上がって、

「ぐるぉう」

一声、吠えた。
夜の闇に血潮が舞い、肉片が飛ぶ。
夜明けまでにその大路は、赤の塗料をぶちまけた如き惨状となることだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からレガトゥスさんが去りました。