2016/08/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にルイサさんが現れました。
ルイサ > 「ありがとうございました。失礼します。」

とある貴族の屋敷から使用人に見送られて通りへと出る、≪表向きは≫平民の女性。
その表情は一仕事終えたばかりにしてはやや緊張感を帯び、視線は定まりきらなかった。
記憶にはほとんどないが、自分もこの周辺で生活していた時期があったらしい。
無論その素性からして貴族の娘として住んでいたわけではない。
記憶は確かに薄れているが、本能的には憶えているものだ。
――――ココは自分にとってろくな場所じゃない。

我が家へと向かう足取りは自然と急ぐ形となっていた。
そんな時、向こうから歩いて来た貴族らしき身なりの男と護衛らしき男、そして少女が視界に入る。問題は男ではなく、少女だ。
彼女にはネコのような耳があり、粗末な衣類の隙間から尻尾も見える。
奴隷として買われたばかりなのか、それともコレが彼らの日常なのか、少なくとも共にのんびり散歩するほど愛でられているようには見えない。

「…………ぅ。」

フラッシュバックと呼ぶのだろうか、ぐるんと世界が回るような目眩に襲われ、傍の建物に片手をつく。
我が国には彼女のような無辜の奴隷が大勢いるのだ。
この程度でふらついていてはどうしようもないのだが、少し休憩すれば大丈夫だろう。

ルイサ > 俯いて地面を見て気持ちを落ち着ける。
街灯から注がれる淡い明かりが目許に前髪の影を作り、すれ違う人々の視線を遮ってくれた。
治まるまで随分長く感じたが、実際には大した時間ではなかったのだろう。
目眩が遠のくと顔を上げる。――うっかり耳が出てしまったりしなくて良かった。

平静を取り戻せば来た時と同様の、心の乱れを奥深くまで閉じ込めたいつもの様子で、女性は自宅へと向かっていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からルイサさんが去りました。