2016/04/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区商店街の通り」にルナトゥムさんが現れました。
ルナトゥム > 夕方頃から降りだした雨は、夜になっても収まることはなく、富裕地区を冷たく濡らしていく。
人通りがほとんど絶えた通りの端で、こうもり傘を差した少女が、気だるげに空を見上げて、ため息をついた。
少女の名はルナトゥム・セフィロ・クラウディウス・ルナシェイド、悠久の刻を生きる自称誇り高き吸血鬼である。

今日は住処としている洞窟を彩る家具を買いに来たのである。すでにその目的は達し、帰ろうとしたところに雨が降りだした。
そのまま、今も雨が止むのを待っている。
傘もあるのに何故待っているのかと言うと、吸血鬼の数ある弱点の一つ、流れる水を渡れない、が、雨によって通りに無数に出来た小さな川にも適応されるからである。
つまり、誰かが抱えて運んでくれないかぎり、雨が止むまで一歩も動けないのだ。

ルナトゥム > 「どうしてわたくしは……こんなに弱点が多いのかしら……。」
ため息とともに吐き出した呟きは、雨音にかき消されて誰の耳にも届かない。

日光で灰になり、銀に焼かれ、にんにくや聖印の類を嫌悪する、招かれない家には入れない。
それだけならまだしも、大量の穀物を見ると数えずに居られない、結び目を大量に見ると混乱するといった、恐らく持っている同族のほうが少ないであろう弱点を、ルナトゥムは持ちあわせている。おかげで漁村や農村には近づけない。

憂鬱な気分のまま、通りに目をやる。ほとんど人通りはない、自分好みの可愛い女の子が近くに来てくれれば魅了して運んでもらうのに。
一歩も動かずを傘をさして立ち尽くす少女が不気味なのか、誰も近寄ってこない。
「はぁ……。」
再びため息が漏れる。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区商店街の通り」にリトさんが現れました。
リト > 雨降り、傘も差さず濡れながら通りを歩く少女。
しっとりと垂れた髪の合間から覗く瞳が、前方に見知った姿を映した。

「………ルナルナ? どしたの、こんなところで」

傘を差したまま立ち尽くす姿を見、不思議そうに近寄っていく。

ルナトゥム > 声をかけられて、流水を踏まないように足元を見ながら慎重に振り向く。
「こんばんは、リト。買い物に来たのですけれど、雨に振られてしまったんですの。」
知った顔に微笑みかけてから、空に目をやる。こいつのせいだ、とでも言うように。

「あなたは平気みたいですけれど……わたくしは流れる水を渡れなくて…。止むまで待っているところですわ。朝日が差す前に止めばいいのですけれど……はぁ。」
物憂げなため息。

リト > 事情を知れば、ふぅん、と小さく頷いて。
ついで雨を降らせ続けている空を見上げた。再びルナトゥムに視線を戻し。

「……前にポータル渡したと思うけど、あれじゃダメかな?」

かくり、と首を傾ける。

「わたしの部屋に着いちゃうけど、ここに居続けるよりはマシじゃない?」
「ダメならわたしがルナルナの住む所に背負ってでも連れて行くけどー…」

ルナトゥム > 「えっ…。」
素の声が出た。
ポータル、確かにもらった。リトの部屋に直通の携帯ポータルだ。
今までそんなもの持ったこともなかったので、すっかり忘れていた。
「も、も、もちろん考えましたわよ。けれど……その……あ、雨宿りのために事前に伺いも立てずに部屋に行くなんて、無作法ですわ!」
嘘を吐きながら咄嗟に思いついた理屈を並べ立てる。
実際お淑やかであることにこだわっているルナトゥムだ、覚えていてもポータルを使うことはなかっただろうが。

「わたくしの住居はメグ・メールにありましてよ、そこまで運ばせるわけにもいきませんわ。
だから……そうね、丁度会ったことですし、あなたのお部屋へ行っても構わないかしら。一緒におしゃべりでもしながら待てますわ。」
ポータルを使えないのは突然押しかけるのが嫌だからだ、だが部屋の主が目の前に居るなら、了承を得てから行けばいい。そう考えた。
どうかしら?と問いかける。

リト > 「ふーん……別に気にしないけどな。ルナルナならいつでも歓迎だからね!」

咄嗟に思いつかれたものでも、一応納得はしたようだ。
突然押しかけられたとて別段気にもしなかっただろうが。

「へぇ。今はそんな所に住んでるんだー……」

メグ・メール。運ぶのも難ないとは思ったが、せっかく彼女が提案してくれているのだから部屋に招くことにした。

「いいよー。じゃあね…」

ひょい、と宙に円を描くように指を回す。
ルナトゥムの目の前、そのまま踏み込める位置にゲートが現れた。

「はい、どーぞ!」

ルナトゥム > 「そうですの。ありがとうリト、でも親しき仲にも礼儀ありといいますわ。わたくしは礼儀作法に忠実にありたいんですの。」
これはルナトゥムの生き方である。たとえ許しを得ていても、マナーは守られなくてはいけないのだ。

「ええ、今日は家具を揃えに参ったの、ようやっと人が呼べる程度になりそうよ。」
買った家具は魔術で影の中に収納してあるので持ち運びに問題はない。るんるんで帰ろうとした矢先の雨であった。
雨さえなければ今頃快適な空間にできていたはずなのに、鉛色の空が憎らしい。

「では、失礼させていただきます。」
と、初歩魔術のような気安さで開かれたポータルに、内心舌を巻きつつ、リトに頭を下げた。
同時に服装がマントとマイクロビキニから、黒のディナードレスへと変わった。友人の部屋を尋ねるのだ、普段着では良くない。
そして、しずしずと歩みを進めて、ポータルの中へと消えた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区商店街の通り」からリトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区商店街の通り」からルナトゥムさんが去りました。