2023/07/01 のログ
ベルナデッタ > 渡されたメニュー表を眺め、結局コルボ推薦の紅茶とチーズケーキを頼む。
富裕地区の店らしく、値段は少々高めだ。

「えぇ、店主はどうやら貴族が何を求めるかよくご存知のようですね…。
定期的に通いたくなります」

視線の先にあるのは、それとなく擬装された認識阻害のコモンルーン。
ここは、いくらあっても足りない貴族同士の密談の場に最適そうだ。
それは貴族以外であっても、自分や目の前の男のような者には需要がある。

「それもそうですね…デートですか?それ聖職者に聞きます?」

信仰する神格ごとに戒律はまちまちなものの、敬虔なノーシス主教の信徒は恋愛に現を抜かすことはない。
ましてや彼女は異端審問官である。

「まぁ、仕事ではしますが…」

デートの機会など、ハニートラップとして行うぐらいだ。

コルボ > 「まーまーここの店主も腹に一物ありますんでね。
 ……うちの情報源の一人でもあるんで、ベルさんも良かったら」

 情報の中立地帯。表向きは快適なカフェではあるが、チャージ料金を導入することで
 物珍しさだけの”雑音”を一定量遮断しながら、各々がやりとりをする。

 ……そこで情報を取られるようでは、腹芸をする資格などない。

 何の情報もなければ、何の利用価値もなければ、ただの目新しいカフェではあろう。

「まー、友達だけどそういうこと聞いたことないなと思ったので。
 いや、え、でも仕事ではって、普段なしで仕事だけで?
 よくひっかけられるもんですね……。」

 言いつつ、ある程度堪能するのを待ってから、書類を渡して。
 ちなみに外装は富裕層では一般的なお見合い用のファイル。

 貴女を異端審問官という役職から欺くための偽装であって。

「実際、ここもそいつ等のたまり場になってるみたいなんで、偵察がてら、
 かわいい子ひっかけて偽装するのもありだと思いますよ」

ベルナデッタ > 「…随分と良いご友人を持ったもので」

この手の人脈は、やはり専門職である目の前の男のほうが豊富なものを持っている。
つくづく、味方でよかったとベルナデッタは内心思う。

「……まぁ、昔取った杵柄といいますか」

あまり大っぴらに言えないような過去なのだろう。
少し赤面しつつ、目を反らすベルナデッタ。
淫魔をも蕩けさせるテクニックも、その時習得したものだろうか。
だが、コルボから手渡されたファイルを受け取れば、真剣な眼差しに戻る。

「成程…考えておきましょう。ひっかけると言うよりは部下に頼むと思いますが」

無関係な人間を巻き込むのは純粋に気が引けるというのもあるし、それに、

「あまりこう…弱点を作りたくないもので」

こんな稼業だ。自分を陥れるために狙われないとも限らない存在を作りたくはない。

コルボ > 「カラスなんざどこにでもいるし繋がってるもんですよ」

 男のカラスという通り名は自身だけのものではない。
 決まった繋がり、組織ではない、純粋な情報の利害関係のみで成り立っている、
 街に巣食うカラスの一羽。

 時にカラスに餌をくれる”善良な人間”と関わって芸を見せる。
 全てが単純な話で。

「何赤らめてんスか。今更でしょうに」

 三白眼の男は既に相手に許可を得て淫魔との”戦い”を見ているのだから、
 先入観などありはせず。
 そうは言いつつ、お互い起源に触れないことはある種暗黙の了解。
 その仕草はあくまで、認識阻害されようとも周囲に振りまく”中の良い知人のお茶会”
 認識阻害を乗り越えて来る手合を想定しての振舞いでもあり。

 それは自らがお茶会に誘った以上、己が客を守る作法でもあって。

「部下もベルさんみたいな手合なんで?
 ……っと、ベルさんは第一印象で損してるタイプってつくづく思いますわ」

 みたいな、とは嗜好を指すのだろう。
 そして弱点、という言葉を聞けば、その根底にある人間らしさ、人の情を感じ取る。
 ……狙われる存在、弱みとは所詮駆け引き次第なのだ。

 冷徹に任務を遂行し、神の為に全てを捧ぐなら、その弱点も大きな餌となるのだから。

ベルナデッタ > 「それはそれ、これはこれですよ」

今更と言われれば、不満気にそう返す。
それは本心か、あるいはコルボに合わせた振る舞いか。

「私に紹介されるぐらいですからそういう事をするのに抵抗は無いようですが…どうでしょうね?私生活には立ち入らないようにしているもので。
……まぁ、私の仕事は怖がられるぐらいが丁度いいですよ」

ベルナデッタのように純粋に女だけが好きなのか、それとも両方イケるタイプなのか。分からないが知る必要もないだろう。
そして、異端審問官は主教を守る剣であり盾。好かれるより恐れられるほうが都合が良いのだ。

「そしてこれ、お返しです」

ベルナデッタはバッグからいくつかの書類を取り出すと、コルボに手渡す。

「これから貴方に頼みたい仕事に関わる資料です」

コルボ > 「それはそれだとしたら、これはこれって思いながらも、止まらないわけですか」

 肩を竦める仕草とは裏腹に、瞳だけは憂いを帯びて。
 人に見られることを良しとしなくてもこの人は止まらないのだ。
 それが純然たる信仰心ではないことは同じ”女を見て相手にする”男には感じられて。

 憎しみ。復讐心の類。
 人は怒りの感情はすぐ薄れるものだという。
 それを口にする者に対し、よく言えたものだと男は思う。

 誰も、目の前の人のような存在を見たことがないからそんなことを言えるのだ。

「姉妹の契りとか兄弟の杯とか、ペアリングすることで連携が深まって戦果が上がる、
 そんなパターンもあるらしいですよ?」

 怖がられる存在でも、それでも踏み込む人にはどうするのだろうか。
 そして、受け入れて、弱みではなく護る対象に背中を預ける時、どう変わるのか。

 ……そこまで考えて、情報屋としての悪い癖に思い至り嘆息一つ。

「あいつ等がらみですかい?」

 書類を受け取り、しまい込み。
 女性から受ける依頼は魔族絡み。国を腐する悪辣な者達。
 男にとっては国の浄化を、
 女にとっては敵の殲滅を。

 男女でも恋愛関係が成立しない、それが稀有だとは言わない。
 だがそれでもお互いはよく利害が一致して、お互いに敬意を払う一目置く存在だからこそ、
 男もまた貴女からの依頼、と言われれば頷いて。

「そういやベルさん、最近追ってる動きに軸が出来てるように思えましたが、
 お目当てがいるんで?」

 既に、動向を把握していたのだろう、書類に目を通す前からそんなことをぽつりとつぶやき。

ベルナデッタ > コルボの言葉に、ベルナデッタはそちらをちらりと見て、すぐに目線を逸らす。
その先には、ここではないどこかと、誰かがあるのだろうか。

「……止める理由もないですしね」

復讐心は確かにある。しかしそれだけではない。
勿論神々の敵を討つ信仰心だけでもない。

主教に素朴な信仰を捧げる信徒を守る。
かつての彼女のような経験をする者がこれ以上増えないように。

復讐とは、己の為だけにするものでもないのだ。

「それは騎士とかの話でしょう?それに、逆に喧嘩になったりしたら気まずいですし」

溜息をつくコルボに、ベルナデッタは笑いかける。
孤独はそれはそれで、気楽なものだ。

そして、コルボが書類を受け取れば、眼差しは真剣なものへと。

「えぇ、勿論。その中でも気になる一団についてです」

書類の中身を見れば、蛇をモチーフにしたある一つの紋章が目に入るだろう。
それは王都で、ダイラスで、バフートで、タナール砦で、王国のあらゆる場所で見つかったものである。

「私が屠った魔族であったり、騎士団や冒険者が討伐したものであったり、一見すれば特に繋がりのない魔族が、この同じ紋章を所持していました。
我々は仮の名として”蛇の陰謀団(サーペント・カバル)”と呼称しています」

同じ紋章を持っていた、それ以外はどういう組織なのか、誰が指導者なのかも不明だ。
得ている情報は、あまりにも少ない。

「というわけで…貴方に頼みたい仕事はおわかりでしょう?」

同じ紋章を持つ魔族、それしか手がかりのない組織。
それについてベルナデッタは、情報を集めるようコルボに言うのだ。

コルボ > 「何より止めやしませんしね」

 何より、お互い気が合うのは根源が似ているかであろうか。
 ともに復讐心、しかし己の為だけではない。
 お互い秘められたものの輪郭が重なっていて。

「そですか? ベルさんいつの間にか相手の気を削ぎそうで」

 この人の笑顔が偽りではない、張り付いたものではない。
 故に毒も抜くし、喧嘩をする気も起きなくなる。

 そう言う魅力があるのだから、相手がいても大丈夫だろうと思えてしまうのだ。

「……あー、そういうことか」

 カラスとは異なるつながり。蛇。街の影に潜む悪意。
 仕事をする上で時折阻むように現れる魔族達。

 行動こそ散発的ではあるし、繋がりは見えないのだが、まるで小さな点の集まりが
 線になるかのように一つの大きな動きは感じており。

「確かに、こすっからい目的は最近目についてますわな。
 とりあえず鱗は見えてんだ。尻尾か頭か、掴むのはまあ難しくないと思いますよ」

 気になる、程度に意識していたのだが、そこに明確な像がある、と分かれば、
 餌を仕掛けて待てばいいだろうと。

「とりま、頭は候補絞るまではもっていきますよ。
 簡単に捕まるとも思えませんが、合間合間に茶々もいれますんで」

 相手への妨害も添えると告げて

「報酬は、いつも通りで頼みますね」

 神聖都市の孤児院。男が受け取るはずの報酬はそちらへ。
 属するものは違えど、友人であり戦友である。

 仕事を受けるのは己の利でもあるのだと、親がいないものが
 同じ道に足を踏み入れぬようにと。

ベルナデッタ > 「あら、神々に言われれば止めますよ?それぐらいの分別はあります」

冗談めかしてベルナデッタは言う。
つまりは、ほぼ何があっても止めないということだが。

「そうでしょうか…?
まぁ、今の所はそういう関係になりたい相手も見当たらないので、当分は仕事に専念しますよ」

今度はベルナデッタのほうがきょとんとし。
そういう面での己の魅力については、この修道女はからきし分かっていなかった。

「ふふ、言いますね。期待していますよ」

難しくないと語る烏の言葉に、異端審問官は満足気に頷く。
とにかく大きな組織であることは間違いなく、つまり壊滅させられれば王国の大きな脅威が一つ減るのだ。
そのきっかけは、思っていたより早く訪れそうだ。

「頭もそうですが…末端にしても危険な動きを見せた時には知らせてください。
事が起きる前に潰しに行きますので」

異端審問官は情報収集より実力行使が専門だ。
コルボの助けがあれば、ベルナデッタも動きやすくなるだろう。

「えぇ、貴方の望みのままに」

報酬を自分が手にすることが無くても、男はしっかり仕事をやり遂げる。
そうであれば、報酬に関しては男の要望通りでいいのだ。

コルボ > 「神様親指下に向けてGOサイン出してんじゃないですか」

 だいぶ粗ぶってる神様もいたものだが、止める者がいないのは変わらず。

「ほらそうやってたまにそういう顔する。
 つか休暇使ってます? たまにはそういう相手になりたいって人に付き合ってもらって
 息抜きするのも考えてくださいよ……?」

 そう言う表情をするけれども、優しくも己の身を投げ出すものだから、
 いつか糸が途切れないか、それか落ちてしまわないか不安にもなる。

 なんだかんだで、純粋さを失ってはいないのだから。

「だいぶ幅利かせてますからね。母体がデカくなってる分罠にもかけやすいでしょうや。
 ……それに、俺も気を引き締めないといけないんでね。」

 外から来るもの。魔族と悪魔とも違うもの。
 門より来るもの。

 その門の一つを見つけてしまった。学院の中に”いた”

 近づけないように、門を甘く見積もって開きかねない者に鉄槌を。
 魔を須らく見据えて爪を開く神聖都市の銀梟、その一枚羽を咥えた烏の瞳が細まる。

 ともすれば、審問官より先に蛇の頭を刈り取りかねない視線を資料に落として。

「知らせは飛ばしますが間に合わないなら時間稼ぎますんで。
 網だけは良く巡らせられるように、目星もついたら必要な情報は”ポスト”にいれときますよ」

 最寄りの教会、審問官の寄る辺ともなる場所に情報を届けると。
 報酬について頷きを得れば笑みを浮かべて。

「にしても、敵対派の魔族共は、ほんと、大したことも出来ねえくせに蔓延りやがる。
 腐ったやり方は貴族と同じだ。
 どっちも潰さなきゃなのに、どっちもいつまでも生えてきやがる」

 魔族と密約をかわし利益を得るもの、魔族に扱われる貴族。
 それもまた烏の狩る標的で、貴女の仕事を受けながら並行して男は様々な依頼を果たして
 敵となる者を丁寧に摘み取っていく。

 審問官に属しこそしないが、協力者であり、かつ、その執念は酷似したものがあって

ベルナデッタ > 「おや、貴方も神々の思し召しを感じられるようになりましたか?」

コルボにそう茶化して返す。神託を受け取れれば高位の聖職者になれること間違いなしだろう。

「心配されずとも、自分の休養はしっかりと取っていますよ。
別に誰かの恋人にならずとも癒しは得られる物です。
例えば孤児院の子供の世話の手伝いをするだとかで」

仕事をやらない日は、聖職者らしく善行を積む。
それがベルナデッタのリフレッシュ方法だ。
肉欲的には、仕事で間に合っているというところもあるのだが。

「…お互い、しばらくはこうしてお茶も出来なさそうですね。
貴方の行く先にも神々のご加護があらんことを」

事態が動くだろう。気を抜けば、こちらが敗北してしまうかもしれない。
それでも、やらねばならぬのだ。

「相手を見くびってはいけません。連中は確実にこの国を蝕んでいる。
この国に暮らす者全てに危機が訪れている」

ベルナデッタは青く澄んだ瞳でコルボを見据えた。

「ですので、一人残らず根こそぎ滅ぼさねばなりません」

コルボ > 「えー、思ってたのと違う……」

 見えるのは荒神の類、すれ違いざまに魔族の顔面を蹴りぬくような像が浮かぶ。

「子供達に触れて、ってんなら何も言うことはないっすわな。
 そう言う意味じゃ天職なのかもしれないですね」

 子供と触れ合い、癒される。そんな人が何故敵を殺める道に走ったのか。
 過去を聞くことはない。探ろうとは思わない。
 多分、自分と同じことだけは分かるか。

 ただの、優しい聖職者になりうる人が、信じるがままに手を地に染めていく。

「また落ち着いたこうやって”祝杯”あげにきましょうや。
 酒はまだしもこっちならいいでしょ?」

 次は大物相手。だが勝つことだけを考える。
 失うのはあちら側だ。狩る側であり続けると思い違いをしている”蛇”なのだと。

「見くびりはしませんよ。ただ、あまりにも人間を舐めてる。
 そう思ってるだけですわ。

 追われる側になって命乞いしようが、その背中にナイフ隠してる道理にもとる手合に
 手心も慈悲もくれてやるもんですかよ」

 見据えてくる澄んだ瞳を見つめ返し。

「この国の滋養になる権利も与えず、残らず揉み潰してしまいましょうや」

 お互いのティーカップも皿も空になり、一息ついて空を仰ぎ。

「んでも、夏バテにだけは気をつけてくださいよー」

 足元を掬われないようにするのは貴女もだと、身を案じながらもそれを素直に言わない男の皮肉が紛れて。

ベルナデッタ > 「えぇ、お酒は駄目ですがこちらなら…」

酒は、ノーシス主教の多くの神が戒律で禁じている。
ベルナデッタもまた、戒律的に酒を飲むことができない。
そのような聖職者特有の制限は、コルボという外部の人間に情報収集を頼む理由にもなっている。
聖職者が身分を隠し酒場に行っても、馴染めず浮いてしまうからだ。

「舐めているなら舐めているで、それを利用するだけですよ。
恐怖され慎重になられるよりずっといい。それに…」

恐怖心など、己の命が脅かされる時になって初めて抱いて貰えればいい。
ベルナデッタは、友に見せるような柔和なものではなく、
普段彼女が”獲物”に向けるような、獰猛な笑みを浮かべる。

「散々こちらを見下す相手のほうが、”堕とし甲斐”があるでしょう?」

しかし、それは一瞬のこと。
また元のような、聖職者らしい笑みに戻る。

「そうですね。では夏バテ対策に…これも頼んでしまいましょう」

そして、悪戯気な顔で、メニュー表で一番高価なアイスクリームを注文し。

コルボ >  故に扱うと言えど情報を共有できる男のような手合は稀有であろう。
 現に周囲になんら怪しまれることなく歓談に興じることができて。

「引きずり落とすって意味じゃ同感ですわな。
 ええ、好きなものいっちゃってくださいや」

 悪戯気な表情に笑顔で返しながら、獰猛な笑みを思い返す。
 泣き叫んでもまぞくを引き裂くあの笑顔。
 心底味方でよかったと。

「蛇なんざ、俺等の爪でずたずたにしてやりましょうや」

ベルナデッタ > 「おや、羽振りがいいですね?聖職者へのお布施、神々もさぞかし感心することでしょう」

適当なことを言いながら届いたアイスクリームをスプーンですくうベルナデッタ。
暑い季節に、口にしたバニラアイスがひんやりと染み渡る。

「えぇ、連中に我々で鉄槌を下しましょう」

ベルナデッタの所属は異端審問庁鉄槌局。
最も苛烈な神々の拳。
烏の導きにより、それが邪悪な蛇たちに振り下ろされる日も近い…。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 カフェ『アネクドート』」からコルボさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 カフェ『アネクドート』」からベルナデッタさんが去りました。