2022/11/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にバルゴラさんが現れました。
■バルゴラ > 富裕地区の通り、普段なら賑わっているが生憎の雨である。
煌びやかな空気は一転して雨音だけが響く静寂の世界となり、普段なら忙しなく貴族達が出入りする衣服を売る店も、騎士達が通いつめる高級な酒場も、客入りが殆ど無いのか一時的に閉めている店も有るほどで。
今はその臨時休業を決め込んだお店の軒下にいる。
図書館よりの帰り道、幸いな事に本を借りていないので、濡れて困るものは無かったがすっかりと自分は急な雨に濡れてしまい、シャツが黒いから良いものの肌にピッタリとシャツとスラックスが張り付いて動き辛いし、ベストも雨水を吸って僅かに重たいし、憂鬱な表情で雨宿りをしていた。
「……雨を弾く術式なんて物はあるんだろうけど、手持ちのカードに封入されてないんだよな……これが……。」
中指で眼鏡のブリッジを押上げて、雨が当たり圧でずれた眼鏡の位置をクイと直すと、言葉の締めに盛大なため息を吐き出し、口から吐いたそのため息の湿度と温度で眼鏡が曇り視界が悪くなって、またため息を吐くの繰り返しであった。
表情に明るいものなどあるはずも無く、あるのは急な雨に降られた苛立ちと曇る眼鏡の憂鬱さと、準備と急な備えを何もしていない自分への嫌悪、それと事前に今日は天候が崩れると占ってくれた数少ない学友への感謝、素直に忠告を聞いておけば良かったと、本当に今はそう思う。
後でお小遣いをやらねば。
■バルゴラ > しかし急な雨は急に止むとは思うのだが、軒下からそろりと真昼の筈の空を眺め見上げた結果、雨は止みそうも無いのだけが良くわかる……雨雲の層が明らかに分厚いし。
幸いなのはこの雨で臨時休業で締めている店が多いことで、雨宿りをする場所は事欠かないのだが、学院に帰るには濡れ鼠を覚悟しなくては、って事でもう少しせめて雨脚がゆるむまで、こうして待つしかなかった。
「………カードの確認でもする?それとも、誰かを呼び出す、魔法はあると思うが来てくれそうな奴がいない。」
ゴルドで叩いてやれば尻尾を振りそうな学友は数人覚えがあるが、それでも雨具を持ってきてくれるとは思えない。
なら近隣に知り合いの屋敷や贔屓の店は?と考えても、軒下を借りているお店と同じで開いてるとは思えないし、そもそも知り合いが圧倒的に少ない。
仕方なく、本当に仕方なく時間つぶしに手持ちのカードの確認をするために、腰につけた革製のカードホルダーから手持ちの水晶板を一枚取り出して、昨晩作成中のものではないちゃんと魔法カードとして成立しているそれを眺めては仕舞い、現状を打開できそうなカードがないかの確認を始めた。
レンズの奥。
灰銀色の眼は憂鬱気で。
■バルゴラ > トランプと変わらぬサイズの透明な水晶の板。
其処には昨晩図書館で刻んでいた矢をモチーフにした図と点が刻まれており、その点と点と結ぶ溝が薄っすらと赤く輝いている――…これが炎の矢を放つフレイムアローが封入された魔法カード。
次はあの晩に数枚作った透視の魔力を眼鏡に付与するカードで……など、諸々を取り出して雨空に透かした後に魔力が拡散していないか確認しカードホルダーにしまい、また取り出してしまいを繰り返し、最後の一枚……他と比べても傍目から見ても封入された魔力の桁が違う切り札を取り出して、また雨空に向けて透かして魔力が拡散してないかの確認を。
「……これくらい、作れるようになりたいねぇ……。」
これは実家より送られてきたお守り。
発動すればどうなるかすら読めない、そもそも刻まれている図式すら理解出来ない代物、もし魔法に詳しいものが入ればそれとなくは判るだろうが、その真髄はみせぬ特注品。
それを雨空に透かし見て、眼鏡のレンズの奥で灰銀色の眼を細めて、どこか魔法カード越しに遠くを見る、いつか届く、届かせるべき、何れ乗り越えるべき頂を……。
■バルゴラ > その究極である最後の一枚をカードホルダーにしまう。
全てのカードの確認は終えた、けども空は今だ暗く雨脚は酷く、止む気配なし。
「………もう少しだけ……そうすれば……。」
賭ける。
雨脚が止まり雨が止む方に賭ける。
賭けに失敗したら駆ける事になるわけであるが。
どちらにしろ止まねば濡れ鼠は避けれない、徐々に乾き始めた服も再び濡れるが、室内に干せばいい。
出来ればお風呂にも入り体も温めたい。
服を干して風呂を借りて後は軽食でも頂こう。
そこまで想像すると此処にいることが無駄に思えてきて、どうせならと走り出す。
暫く待つと宣言してから走るまで数分、元々辛抱強くないのは自覚していたが、思い切りは良い方なのだがと自分に向けて呟くと濡れ鼠が1匹完成し、無事濡れた姿で寮へと戻れたのだった。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からバルゴラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にイズナさんが現れました。
■イズナ > さる貴族の私的なパーティー会場へ向かう馬車の中
女主人から伝えられたたった一つの命令が、
『殿方と2人で姿を消したら後を追わないように』
という事であった
護衛という立場上、そういう訳にもいかないのだが、主人が殿方と連れ立って消える、という事は
主人も主人なりに自分の責務を果たそうとしているので邪魔はできない…
…等と素直に思えるはずもなく、一応は主人の身になにかがあっても大丈夫なよう対策は打ってある
こういう催しに置いて、主人は何かに付けていつも違う相手とどこぞへ消えて、
付いてくるな、と言うもんだからもうすっかり慣れっこである
さて、馬車が会場の屋敷に到着し、早々に主人の姿が宣言どおりに消えてしまったのですることがない
なるべく気配を消して、壁の傍に立ち何となく来賓の観察をしているが、
今夜の招待客の顔ぶれは貴族から商人、冒険者まで様々なようである
聞こえてくる話は噂話であったり、商売の話であったり、仕事の話であったりと様々で、
どうやら普段、あまり関わり合いにならない者たちが互いに紹介しあって、
繋がりを作ってそれぞれの今後に活かすのも目的のひとつなのであろう
時折、来場した王族が紹介されたりして、小さく歓声が上がったりもしている
「…こんなものですよね、貴族のパーティーなんて…」
ぽそりと漏らした声に気がついたか、壁際に突っ立っている姿を目敏く見つけたか、
給仕が飲み物を勧めてくれたが、丁重に断り、その場を少し離れた
…離れたと言っても、ほんの数メートル程だけれど
■イズナ > 顔ぶれ豊かな会場内は暇つぶしには事欠かない
しかし、人間観察にも大分、飽きてきた
自分一人、屋敷のどこかに消えてしまっても誰も気がつくことはないであろう
「…」
他人から視線を向けられないのを良いことにくあ、と欠伸を漏らせば
かしかし、と金色の髪を手櫛で整えるようにして
また一人、有力者が来場したのかそちらへ一斉に視線が向けられ、会場がざわつくのを見れば、
すっ、とそこから姿を消すのであった―――
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からイズナさんが去りました。