2022/11/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン >
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『WANTED』      
実験動物 D・G

『依頼元』
ゲノム錬金術ギルド

『賞金』
生存して捕獲した場合のみ
20000ゴルドの支払い
当ギルドにて個体確認後に交換

『備考』
石炭のような色の不定形生物
外観を地竜に模倣している
警戒心が高い為に注意
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ドラゴン・ジーン > ばり、と、煉瓦の壁に貼り付けられていた羊皮紙を剥がし取る。
スライムを用いた接着剤は大分水分が抜けており、壁際から引き離す際に粘着質な糸を頑固に引いて皆まで取るのに随分と苦労した。
この場所は王都マグメールにおける富裕層達が在住している地区となっている。周辺には如何にも金を持ってそうな、という顔触ればかりとは限らない。持つもののお零れを頂戴しようとする持たざる者達の姿も決して珍しくはなかった。
しかし平民地区や貧民地区に比較すれば、この時間帯における雑踏の行き来は王都内でもその人口密度は寧ろ少ない方だろう。閑静な地区に建ち並ぶ豪華な建物の数々が威張り腐って見下ろす路上において、その持たざる者の一つである怪物は物陰に潜みながら移動している。
というのも先程に認めたような手配書が時々において、思い出したように此処に貼り付けられる事があるからだ。
一時期に自分を追って来た人間達の一部がこの手配書を所持していたことからこれが原因であると目星をつけ、草の根を分けるような活動でありながら広告媒体となるその羊皮紙自体をこうして剥がしに富裕地区にへと足を運んで来ている。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にニビルさんが現れました。
ニビル > 『そう言えば、富裕地区のほうで美味そうな仕事の張り紙を見たとか見なかったとか……』
安食堂で相席になった見すぼらしい男性の言うことを真に受けたのは、宿代にあてる金がそろそろ尽きそうだったからだ。このままではホームレスになってしまう。
外で寝泊まり出来ないわけでなくとも、人間らしくない暮らしはみじめな気持ちになってしまう。なんのためにこの国に来たのか、それではわからない。
そうして。
富裕地区にやって来た。何だか場違いな気がして、無駄にびくびくしてしまう。ただでさえ挙動不審気味なところがあるというのに。
とりあえず、あまり人目につかないところを……と選んで『張り紙』とやらを探し始めたのだが、少し入り組んだ路地の先、壁面に張り付けられているそれをあっさり発見してしまうのだった。
両手にべったり手をついて、顔を張り紙に近付けて食い入るように内容を目で追う。

「捕獲依頼……。……っ!? に、にに、20000ゴルド………」

ただでさえ大きい眼がさらに大きく見開かれる。だというのに備考欄が目に入っていない始末。

ドラゴン・ジーン > 逃亡や移動手段は子持ちの状態でなければ然程難しくはない
僅かな隙間でもあればそこに潜り込んでしまえば容易にその場を離脱出来る
今も広い往来側の方で走り続けている馬車なども、車底に張り付いてしまえば大抵は御者すらも気付かずに、別の場所にへと便利に輸送してくれる。
路の片隅の物陰を渡り歩き、定点的に手配書が貼り付けられる箇所を見回っていたその最中の出来事になるだろう。

「………」

何とタイミングが悪い事にか、その定点の一つにまだ剥がし終えていない新しい手配書があり。加えそこに佇む人影らしきものを見付けてしまった。
ぶわ、と、即座に警戒が高まり黒い粘液の粘膜表皮が小波うった。そして路地に在るゴミの物陰にへと身を移してその観察に入る。相手が到底に適わない強敵ならば直ぐにでも一時的に離脱せねばならないからだ。
何だか妙な気配がするような気もする、認識している限りにおいては人の形をしているようだが。その存在を探るかのように触角が淡く輝いた。
以前においてまぐわったこの街の個体の遺伝子の一部から学んだ魔眼なるものを発動させる。
これは『鑑定』なる能力を持つものであり、相手の価値や力に及ぶ情報を知る為のものなのだが、果たして異界存在については如何なるように映り込むのだろう。

ニビル > 「……20000、2000ゴルドじゃない」

まつげが触れそうなくらい、張り紙に顔を近づけて確認する。希望的観測のせいで桁数を見間違えた、なんてことはなさそうだ。

「あ、雨漏りしない宿に、移れる……。硬くないパンも、ぬるくないスープも……ゴクリ」

明るい未来を思い描いているうちに、口の中に溜まっていた唾液を嚥下する。その20000ゴルドの仕事を達成できるかどうか、という点が一番重要なはずなのだが意識は報酬金にすっかり釘付けだ。
──歴戦の戦士というわけでもなく、そんな自分の様子をうかがっているものがいることにはまるで気付いていない。
『鑑定』するのなら、変形能力を持ったこの辺りでは見かけられない生物だとわかるだろう。他の能力は再生能力、一般的な人間よりは優れた身体能力といった、どちらかと言うと生存能力に長けた存在だということも。

ドラゴン・ジーン > 「…………」

ごくり、と、対して生唾を呑み込む器官は存在しない為に雰囲気だけだ。
変哲も無い普通の人間としての表面情報の水面下には驚くべきその正体の一片を匂わせる情報が存在した。
希少的な遺伝子の持ち主…という釣り針にいとも簡単に泳ぐ魚は引っ掛かる。多少の未知性からのリスクを押し遣り。
がたがたがた、不意にわざとその場で物音を立てる。その音響でまずは相手の意識をこちらにへと惹き付ける為に。

「…………」

そしてぬらりと這いずるようにして地の歩みは間も無くしてその潜んでいた物陰から姿を現す。
出来るだけ路地の日陰から離れて視覚しやすい場所、日向に我が身を投じて自分の姿をアピールするかのように。
更においては自分と相手との距離を把握し、直ぐ様には捕まってしまわぬように、魔法や飛び道具の危険性も顧みて互いに遠い位置にじりじりと離れつつ。

ニビル > 「っひいい!? お金は持ってないです!」

ガタガタッ、と音がした瞬間、思わず素っ頓狂な声をあげてそちらを振り向く。まずは何の利益にもならない存在だとアピールする処世術が染みついていた。ともあれ。

「…………あ、あれ、い、い、いない。誰も?」

両手を挙げて無害アピールをしたまま、周囲をぎょろっとした目で見回す。てっきり、誰か来たかと思ったのだが──
と。

「…………」

何か、居た。物陰からちらっと見えた。いや、姿をあらわしつつある。
自分はこれを知っている、と深層意識が語りかけてくる。いや、あまり知らないが、なんとく知っている。知っている気がする…
どこで知ったのだっけ? 内心で首を傾げる。きっかり三秒後、ばっ! と張り紙を見た。

「こ、これっ、これっだっ……! これだった……!」

張り紙にある特徴を、まさしくそなえた存在ではないか。つまり、20000ゴルドだ。

「あっ──ち、ちょっと、待ったっ……待って、大丈夫、怖くない。怖くなぁい……」

声をあげてしまったからだろうか。『それ』はじりじりと、こちらから距離をとりはじめていた。まるで神がお恵みたもうたかのような、千載一遇のチャンス。棚から牡丹餅。刺激しないように、じわり、じわり……ゆっくりとした足取りで追う。

ニビル > 【──移動──】
ドラゴン・ジーン > 「………!」

姿を現してからの相手の平和な反応を見守りゆっくりとその場でまんじりともせずに待機し続ける事数秒ばかりか。
その呼びかけにやっと反応を示すかのように、さも臆病そうにぶるぶると全身を打ち震わせる。
そしてその誘いに近づくどころかその場において回れ右と尻尾を向け、どたばたぬちゃぬちゃとそのゼリー状の四肢で舗装された富裕地区の敷石を踏み付けながら生きた20000ゴルドは走り始める。
いかにも鈍重そうな動きながらも速度は調節し、何度もいまいち俊敏そうには見えない相手をちらちら触角で振り返りながらの大奔走。
…果たしてそれが『誘導している』という振る舞いであるかは相手にもわかるかどうか…。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からドラゴン・ジーンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からニビルさんが去りました。