2022/11/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にアストラさんが現れました。
■アストラ > ギルドの依頼を請けて、ダンジョンへと赴き、好事家が欲しがるようなダンジョン産のアイテムを持って訪れたのは富裕地区。
様々な文化的な建物や貴族などの富裕層が暮らす豪奢な建物が並ぶ中で、ダンジョンのアイテムを率先して買い取ってくれる店がある。
以前にも何度か訪れたことがあり、店主たる恰幅の良い男性とは夜のほうもお世話になったことがある懇ろの仲。
色々とオマケをしてくれるので、ここで購入したアイテムも少なくはない。
「うーん……一部の好事家や研究者には売れそうだけれど」
と取引した内容を見ながら言えば、『珍しくないものや需要がないものはこういう値段になるよ』と店主に返された。
プロの言うことなのだから間違いはないのだろうと肩を竦ませた。
「何か依頼はないかしら?」
依頼────ギルドを通さない個人の依頼。
富裕層が時折持ち込む依頼は割が良いのだが、その分ギルドでは取り合いになる。
こうしてギルドを通さず、個人で依頼を探す分には手数料なども取られずにそのまま懐に入るが、ギルドの保護もないのでどんな依頼を請けてどんな結果になっても自己責任だ。
一度でも富裕者たちからの依頼を請けられれば、しばらくは寝床にも食べ物にも移動費用にも困らないので、こうして富裕地区を訪れた時に尋ねるわけである。
他の冒険者はどうかは知らないが、身体で稼ぐ手段もアストラは嫌いではない。
店主は禿げ散らかし気味な頭を搔きつつ、『そうだなぁ……』とメモを見ているようだった。
その間に、店内を軽く見て回る。
魔術媒介に使えそうな魔物の骨から核、古い形状の武器にアクセサリー。
瓶詰になった触手やらアメーバ。蜂型モンスターの巣から取れる蜜など。
こんなの欲しがる人いるのねえ、としみじみと見て回る。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にクレイさんが現れました。
■クレイ >
「よう、邪魔するぜ」
なんて言いながら扉が開かれる。入ってくるのはどう見ても戦士といった風貌の男。腰にはロングソードを2本付けているが魔術師でもあるのならそれが強力な魔術のかかったある種の魔剣の類だと看破できるだろう。そしてこの界隈にそれなりに詳しいのなら実力的な良い意味でも依頼金的な悪い意味でも有名な傭兵だということも。
周囲を見れば店主の方に歩いて行って。
「元気そうだな、例の話。話付けにきたぜ」
なんて気軽に男は話す。それから懐に手を入れれば取り出すのは1枚の紙。
ピラピラと見せて。
「でもホントに乗り換えで良いのか? 俺としてもアンタとはそれなりに良い関係だったわけだし。出来れば関係続けていきたかったんだが」
という。別にその口調は責めているわけでも追い込んでいるわけでもない。
ただ純粋に自分の実力に自信があるから、そしてその上でお得意のひとりでもあるから一応声をかけに来たというだけの話。
その店主の目線を追いかけて。アストラの方に目がいく。そしてその恰好を見れば。
「……ああ、なるほど。アンタが……」
一瞬店主に目線を向けて。うなずかれれば。肩をすくめる。
そしてアストラへ目線を向けるだろう。
「オーライ。おいアンタ。少し時間あるか?」
■アストラ > 新たな来客を知らせるようにベルのついた扉が開いて、アストラの視線もそちらへと向けられる。
富裕層に住む貴族や資産家といった風ではない、どちらかと言えばアストラと同類の冒険者、ないしそちら側で戦いを生業にしていそうな、無駄のない鍛え方をされた肉体。
顔を見てもぱっと彼が誰かという知識はなかっただろう。名前を聞けば聞いたことがあるかもしれない、ぐらいには、アストラは傭兵業界にはさして詳しくないのである。
年齢もさほど離れていないだろう、同年代ぐらいか。魔力の気配がする剣にも興味が向いたが、店主と何やら話している様子に彼もまたここの常連か何かなのだろうと思う。
「────私?」
そんな二人のやり取りから派生したようにこちらへと向けられた視線と、掛けられた声に軽く首を傾げた。
二人の間でどんなやり取りがあったのかはアストラも知る由はないが、一先ずクレイの方へと近づいていけば腰に手を当てて顔を軽く上げて彼を見上げる。
「初めましてよね。私は冒険者のアストラ、何か御用かしら?」
■クレイ >
「丁寧に悪いな。俺はクレイ。この界隈じゃ銀鷲で通してる傭兵だ」
と簡単な挨拶をする。
背中を向けたまま親指で店主を指す。相手は富裕層だろうと言われそうだが、それでもこれだけの態度を出来るのはそれだけの実力があるわけで。
「いつもは依頼が出来た時に俺に来てたんだが、お前に乗り換えたいんだとよ。つまりお前の先輩になるのか? それで依頼の時の注意点とか、効率の良い狩場とか。その辺を引き継ぎしてやる。アフターケアまでしっかりとってな」
その方が良いだろと店主の方を見て。
頷いたのを確認すればアストラに目線を向ける。
「ま、そういうわけだ……もし時間があればこのまま奥でも違う場所でも構わないが。少し話できないかと思ってな」
適当にその辺にあった品物を手に取る。謎の触手の漬け込まれた緑色の液体。
それを見て顔をしかめる。思いっきり媚薬じゃねぇかとか言いながら。
「どうするよ。別に急ぎじゃないから引継ぎは今度ってならそれでもいいぜ?」
■アストラ > 「ああ、そういうことね」
名を名乗った彼から説明を受ければ事情を納得する。実力があるのは確かなのだろう。
アストラもソロでダンジョンに潜り、探索と攻略を出来るぐらいには実力があるが、互いの実力の是非を問うつもりもなく。
傭兵と冒険者では、そもそも請ける内容も違うのでは?と首を傾げた。
じと目で店主を見れば、店主も心地が悪そうに視線を彷徨わせている。
「情報を貰えるのは個人的にはありがたいのだけれど……そうね、店主さん、ちょっと部屋を借りれるかしら?」
問いかければ、彼は地下室のカギをクレイへと渡してくれるだろう。
富裕層の建物には大抵どこにでも地下があるものだ。そこならば好きにしてくれて構わないというものなのだろう。
彼が手に取る触手の瓶詰。『商品は手荒に扱わんでくれよ』と店主の小言が入っただろうか。
「どうせ今時間はあるもの。それじゃあ、行きましょうか」
奥へ続く扉から、地下室に続く階段がある。
彼が頷けば、共にそちらへと足を運ぶことになるか──。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からクレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にクレイさんが現れました。
■クレイ >
言われなくてもしねぇよ。なんて言いながら瓶を棚に戻す。
そして鍵を受け取れば。
「地下室か、逃げ場がねぇからあんまり好きじゃねぇんだが。まぁ会話聞かれないようにって意味じゃ丁度良いな。行こうぜ」
なんて言いながら部屋の中へと案内する。そこで仕事に対する注意やら、よく出る依頼の狩場等を色々と話したことだろう。
全部を終えれば仕事の話を終えたのでさっさと店を後にする。一応先輩のよしみということでもし聞きたい事があれば改めて酒場で俺にコンタクト取れなんて告げて。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からクレイさんが去りました。
■アストラ > 傭兵業ならではの粗暴な口調も特に気にした様子もなく、地下室で他人の目耳がない状態で貴重な依頼の情報やら狩場やらを引き継いで、さほど時間もかからないでそれらの話も終わっただろう。
面倒見の良い先輩である彼に礼を言いながら店を出ていくのを見送った後、アストラは店主へと笑顔で詰め寄る。
「私に乗り換えるだなんて話、初耳よ?
今まで腕利きの傭兵さんに頼ってた依頼を押し付けるつもりだったのかしら?」
『いやぁ……』と苦笑する店主にも色々事情があるのだろう。
これで勘弁してくれ、と差し出された箱に入った装飾品を見る。
「これは何かしら?」
『あるダンジョンから出てきた自浄魔法効果がついたピアスだよ』と説明を受ける。
青い宝石のついたシンプルなピアスを見て、アストラは嬉々としてそれを受け取った。
自浄魔法と言えば清潔保持には必須級の魔法。魔術でさえ疑似的な効果でしかないので、それが装飾品で貰えるならばありがたいことこの上ない。
「効果範囲を指定できるのね? ああ、これで野宿の時もお風呂がない宿屋の時も、水洗いとか川で済ませるなんてことがなくなるわ」
打って変わってご機嫌な笑顔で、アストラは店主に礼を言い、早速『依頼』を一つ請けていくことになっただろう──。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からアストラさんが去りました。