2022/10/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 噴水広場」に竜胆さんが現れました。
竜胆 > 富裕地区にある道は、何処も彼処も綺麗に均されてされていて、歩きやすく、馬車なども、行きかいやすくなっている。
 しかし、夜も遅くとなれば、周囲は闇に包まれ、人通りも少なくなっている。
 貴族の邸宅でも、夜会などを行っているような場所以外は暗くなっていて、家人などは寝ているのだろう。
 そんな場所を一人歩く少女、マグメールの富裕地区と言えど、夜の夜中であれば安全とは言えない。
 衛兵だって、善人ばかりではないし、こう言う所に入り込む夜盗もいる。
 さらに言えば、貴族等ロクデナシ、ヒトデナシばかりなのだ、誘拐し、手籠めにするという話はよく聞くものだ。
 そんな場所であったとしても、竜胆という名の少女は、一人、道を進んでいた。

 護衛等もおらず、ただ、一人、背中にある竜の翼を、スカートから覗く竜の尾を、地面に摺り摺り、と擦りながら進む。
 端正な顔は、泰然としていて、自分が襲われるなどと全く思ってもいないし、襲われるはずもない事を知っている。
 襲われたのならば、その代償を、その愚かさを、悔いて貰えばいいだけ、と。
 人竜と呼ばれる、竜と人のハーフ種族故、その魔力の高さ、身体能力の高さを持って、傲慢となるなという方が難しい。
 そして、傲慢になるだけの実力は持っている者だ。

 だからこそ、襲えるものならば襲ってみなさいな、と言わんばかりに一人。
 歩く理由としてはただ単に、気ばらし。
 あと、籠っていても仕方がないし、誰か声でも掛けてみようか、と。

 夜の夜中の理由は単純に、その気分になったのが今だから。
 世界は自分を中心に回ってると考えて居るような娘だから。
 悠々と、噴水の広場へとやってきた。

 富裕地区の噴水広場は、とても綺麗に整備されていて、白亜の人形が瓶を持ち水を流しているのが見える。
 水が流れる音が、水しぶきが周囲に涼を与えて、心を和ませる。
 恋人たちの絶好のデートスポット、と言える場所だ。


 ―――夜だと、何方かと云えば、出会いを求める人が多いとも聞く。
 そんな噂を聞いたからこその、物見遊山。

竜胆 > 噴水広場には、果たして人が居るのだけれども―――しかし、だ。

「ぱっとしないわね。」

 ずばり、と言い切る、自分の食指が沸く様な、人物は一切いなかった、と。
 其処にいる、相手待ちの面々は、固まったようにも思えた、それは美女が、というよりも、来て速攻の辛辣な言葉。
 其処に文句を言おうにも、その背中に見える竜の翼に、人間ではないことを理解したから、か。
 歯向かったらどうなるのか、判り切った存在に対して、すごすごとしてしまう。
 だからこそ、竜胆の歯牙に掛けるような相手に成りえないのだ、と、鼻で笑う。
 そんな情けない男達から視線を外して、噴水の方に近づいていく。

「確か、此処で座って居れば、相手を探している、という合図、だったかしらね。」

 一夜の恋人でも、そうでなくても、だ、相手を探しているという合図は、噴水の縁で腰を下ろして待つ事。
 先程の、情けない男性たちも座っていたので、多分そうなのだろう。
 しばし座って、待ってみる事にしよう。
 何か、面白い人物が来るかもしれないし、自分が興味を引く相手が来るかもしれない。
 気まぐれにしては、お手軽なものね、と、半眼で、笑って。
 風邪をひかぬよう、周囲の空気を少しだけ魔術で温め、快適な温度に。

 秋口の冷え込みは、思った以上に体に来るものだろうから。

竜胆 > 暫しの間、噴水の縁に腰を掛けていて、待ってはいたものの。
 新しく誰かが来るわけでもないし、興味がわくような相手も居なさそうだ。
 先程の、情けない男達だけしかいないし、動こうとする様子もない。

「うん。帰ろう。」

 肩を竦めて少女は立ち上がって、足を踏み出す。
 思った以上に苛立つような感情すら湧きあがらない。
 傲慢で激情家でもある自分が、此処迄平静としているのも、期待して居なかったのかと分析。
 それならそれで良いか、と、そのまま後ろを振り向く事もなく、去って行く。

 夜の街、取り残される、男達―――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 噴水広場」から竜胆さんが去りました。