2021/12/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にエリザベートさんが現れました。
■エリザベート > どんよりとした曇り空、そぼ降る雨の冷たさが、殊更に気鬱を誘う午後。
とある貴族の寄進により建立されたという、瀟洒な白亜の聖堂の中に、
漆黒のドレスに身を包み、黒いレースのヴェールを被った貴族の女がひとり、
祭壇前に跪き、頭を垂れて静かに祈りを捧げていた。
「どうか、……どうか、旦那様を…あのかたを、お守り下さいませ」
祈ることと言えば決まっている、いつも、ただひとつだった。
か細く呟く声を聞く者は無い、供の者は恐らく今頃、敷地の正門前に停めた馬車の傍で、
女主人の戻りを、今か今かと焦れながら待っているだろう。
幾ら焦れたところで、まさか、置いて帰るような真似はしないだろうが、
仕事があると言いながら、午睡の為に私室へ引っ込んだ司祭と言い、
見た目ほど、安全な場所とは言いかねる場所である。
一心に祈りを捧げる男爵夫人は、知る由も無いことだったが――――。
■エリザベート > ――――暫くののち、女は漸く立ちあがる。
ドレスの裾を軽く払い、ヴェールの位置をそっと正して、
外へと続く扉を目指して歩く、一歩一歩はひどく重かったが。
気配に気付いてか、あたふたと出て来た司祭から、
奥でお茶でもお出ししましょう、と申し出られ、断ろうと口を開く。
けれど、世間知らずで押しの弱い女は、結局きっぱり断り切れない。
奥の部屋で、飲みたくもないお茶を出され、世間話に付き合わされるのだろう――――。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からエリザベートさんが去りました。