2021/10/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にダリルさんが現れました。
ダリル > 瀟洒な屋敷、美しく着飾った貴婦人、立派な風体の屋敷の主。
そんなものに騙されて、まんまと搾取される娘は後を絶たない。
今宵、とある屋敷に集められた娘たちも、きっと、そういう運命をたどるのだろう。
ギルドに貼り出されていた掲示は、なんの変哲もない子守りの募集。
10代前半から20歳程度、知識や経験は不問、子供の世話に慣れている者、
――――そうして応募してきた娘たちが、今も数人、
面接場所とされる主の執務室前の廊下に並ぶ、質素な木の椅子に腰かけて、
緊張の面持ちで俯いて、互いに会話すら皆無のまま。
そんな中に混じっているけれど、シスターの扮装をした少年はもちろん、
子守りがしたくてここに居る、わけではなかった。

閉じた扉の奥、執務室の中に居るのは、たぶん主一人ではない。
そして、その部屋にはきっと、もうひとつ、奥に部屋が隠されているはずだ。
そこで行われているのは、十中八九、面接などではないだろう。
何故なら、先刻から――――招き入れられた者は数人居るのに、
扉から、出て来る者の姿が、ない。
更に、ようく耳をそばだてると――――高く、か細い、悲鳴、嗚咽。
そんなものの断片が、聞こえてくるようでもあり。

と、いうわけで、少年はきょろきょろとあたりを窺っている。
逃げ道を、隠れ場所を、一心に探しているのだった。
もちろん、その前に何かひとつふたつ、行きがけの駄賃が手に入れば、
――――などと、考えてもいるけれど。

ダリル > しばらく考えたけれど、とりあえず、ほかに思いつかなかったので。

「すみません、……あの、お手洗い、お借り出来ますか」

通りかかった使用人と思しき女性に、そっと声をかける。
出来るだけ動きの鈍そうな、年嵩の人を選んだつもりだ。

物色する隙が作れるかどうか、とにかく、逃げ出せれば上等か。
そんな気持ちで、女性の後について行き――――――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からダリルさんが去りました。