2021/10/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 スタンディングバー」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族御殿の庭」にロゼさんが現れました。
ロゼ > 豪華絢爛を体現するほど、夜光を掻き消すまばゆい饗宴。
今宵の主役は御年九十の好好爺で、金を持ちながら羽振りがよく、聡明で寛大な人柄から誰にも慕われる公爵として有名である。
それを顕すかの、屋敷の厩に入りきらない送迎の客馬車の数々。屋敷の周りでは馬番に残された近衛の従者が静かに待ちぼうけをくらっている。

父の代より懇意にしてきた公爵からの誘いであればと、敬愛と喜びを伝えに饗宴に招かれた女。
無論、今日ばかりは質の良い正装に身を包んだ。紅も鮮烈なくらい赤く、良いものを選んで彼の生誕を祝った。
そのいで立ちのあられもなさが貴族達の顰蹙を買うだろうが、どうでも良い。
――景気よく尻を撫でた好好爺のからかいを見るに、自分はこの格好で正解だったのだ。
恭しく挨拶と抱擁を交わしてフロアに出、高級な酒とつまみをひとしきり楽しみつつ、シャンパンのボトルとグラスを一人分だけ拝借して―――― 外。

「 ――――――…はーぁ、」

よくもあんな窮屈そうなコルセットを着て息が出来るものだ。周囲の令嬢達への感嘆である。
屋敷のテラスから庭へと延びる大理石の階段を下る途中、足が止まる。歩きづらくって仕方ない。
ピンヒールを脱ぐべく腰を折り曲げると――金色の髪が大理の床をてらと擽って。

ロゼ > よいせ。半ば蹴るようにして右左のピンヒールを脱ぎ去ると、その分幾分か背が縮んだ。
拾っていこうか迷ったが、御覧の通り両手はシャンパンとグラスで塞がっている。
どうせ帰りしなに拾えばよい。その頃には酒も空になっているだろうと、素足のまま冷たい石畳みを降りていく。

惜しくらむは、大理の中腹からも眺められる緑生繁る庭がたった一輪も咲かずでいること。
今は旬ではなかろうが、ここは毎年の6月、美しい薔薇が咲き誇る。
今年もさぞ美しかったろうに――緑だけのその庭だが、普段からよく手入れされているのが遠目からでも伺えた。

一歩、二歩、赤いドレスの裾を滑らせて段を踏む。――漸く一番下だ。
其処までくれば、服が汚れるのも構わずにゆっくりと尻を落とそう。数段上の階段にグラスを置き、飲みかけのボトルからこぽこぽと注ぐ。

はしたないと――女を嗤う高貴達はこの場にはいない。
幸いとばかり、窮屈な饗宴のフロアではなく、屋根のない庭先での愉しみだ。

「 おめでとう、長生きしなさいね。」
人知れず主役へ手向け、グラスを摘まんでぐびと飲み干した。

ロゼ > グラスを掲げると、硝子越しに滲む月のぼやけた輪郭が、何だか綺麗で可笑しかった。
あはは、と吹き出す声もほのかに酒臭く―――ただの酔っ払いだ。

シャンパンが空になるまでしばしこうして酒を煽り、空になったら帰るだけ。
もちろん、其処らに脱ぎ捨てたヒールも指に引っかけて回収する。
歩きやすいからと履かずに帰るあたりが女らしく、帰りを待つ馬車に乗るまで裸足。

「 あーあ…、今日も愉しかった。」

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 貴族御殿の庭」からロゼさんが去りました。