2021/10/15 のログ
■カーレル > 彼女がどういう心持ちで要るのか自分には知りようがないが観察するに握った拳の行所を探しているような気配である
どういう状況でこの場に現れたのか皆目検討もつかないが、少なくとも彼女自身望んでこの場に来たのではないのだろう
望んでこの場に来て握り拳を作り、仄かに絶望が香る表情を浮かべているのだとしたら大した女だ、と見直しもするが
…いや、ちょっと引く。破滅願望の持ち主なのでは?と疑いもするやもしれない
「待たない、騒ぎを起こしたくないだろ…っても、大した騒ぎにもなりゃせんだろうが…
夜も遅くまで劇場の警備してる人間の気持ちにもなるとしょーもない、騒ぎで煩わせるのも申し訳ない」
制止の声を無視して彼女の腕を取ればぐいぐいと引っ張ってその場を離れていく
混乱しているんだかなんだか判らぬが、大声を出されたり、手を振りほどかれないのは助かる
だから、現状を掴みそこねているであろううちに、とにかくその場から離れる
…警備員の皆様、お騒がせしました、と心のうちで謝ってもおこうか
しばらく、そんな調子でグイグイと彼女を引っ張ってきたが、
流石に昼夜問わず野犬やなんかに追われているのか、足腰は強いらしい…さすが、冒険者である
人通りの少ない閑静な貴族の邸宅の立ち並ぶ辺りまでくれば彼女の腕をパッ手放す
流石にこれだけくればもう大丈夫だろうと思う
「何、死んでいたほうが良かった?
狡っ辛い王都のダニが一匹消えるだけだぜ?
………言ってて悲しくなった、やめてくれる?」
確かに彼女と顔を合わせるのは久方ぶりな気がする
自分もほうぼうなんでも屋の仕事をしていたし、彼女と顔を合わせないことは特段、珍しいことでもないけれど
久方ぶりの再会でこんな会話をするのだから、友情も色気もあったもんではない
…まあ、そういう仲でないことは重々承知の上だけども
「相変わらずティアはトラブルに事欠かねえなあ…
犬に追われてないってだけの話だな…あ、兵隊に追われてた事もあったっけ?」
狡っ辛い王都のダニなりに、軽く手を広げて健在をアピールしつつ
くるりと振り返れば彼女の2歩か3歩ほど先を先導するように歩き出す
この辺りは静かであるけれども未だ富裕地区の内側。人通りもほとんど無く正直、長居をしたい場所ではない
…と言うのは自分の事情であるけれども、兎も角、さっさと人通りのある場所を目指したい
10分かそこいらもあるけば富裕地区と平民地区の境にあるち平民も貴族も利用する
ちょっとした店舗や酒場なんかが立ち並ぶ街区に出られるであろう
■ティアフェル > 好き好んで来た場所ではないというか、本当にここはどこ、わたしはティアフェル……ど平民です。
という、何故か惨めな心情を誘うシチュエーション。
周囲から浮いた平民というだけで職質されかねないという哀しい現状。
本気でコトを起こす気の奴は、まず周囲から目立たないカモフラージュをするものだが、明らかに様子がおかしければ注意の対象。
けれど降りた馬車と様子が様子なだけに、察しのいいベテラン警邏は理解するかも知れない『あー……乗り過ごしか…』と。
実際にこれと云って禁制品も所持していないのだから、ちょっと陰口叩かれるだけの事態ではある、が。
助け船が出たからにはそれに乗って安全圏まで渡りたいものだ。
「騒ぎって……わ、わたしなんにもしてないっ……」
一応口を尖らせて窘めるような言葉に小声で反論するが、衆目絶えた場所まで誘導して貰えばなんとなく、ほーと胸をなでおろして。
「や……そーゆー意味じゃ、ないんだけど……実際こういう商売してりゃその例の方が多いもんで……ごめんごめん。自虐よしなって。
わたしは君のこと好きな方だからさー」
と、いきなり険悪になるほどの仲でもない。親しくしておいて損はない相手だと思ってもいる。故に調子よくにこにこと笑ってぽんぽんと背中でも叩いておこうか。
「逆に冒険者とかやってまったくトラブってないって、仕事してないのよ? それ。
兵隊……? や、憶えないけど、別の人なんじゃない? あなた、そんなに何かに追われてる女にばっか縁があるわけ?」
てくてくと誘うような足取りについて歩きながら小首を傾げ、奇異なものをみるような目線を差し向け。
どこへ行くかは分からねどおかしな場所に放置するほど鬼畜外道ではないということは信用していて。その内店や人も適度に行き交い、富裕地区ど真ん中からも遠い場所である区域に出た。
が、見覚えがあるかと云えばないような。どこら辺?と番地などを尋ねてみたりと。
■カーレル > 警備員たちがどういう判断を下すかわからないが、乗り過ごしにしたって、
警備いしている敷地のそばに何やら似つかわしくない人物がポンッと現れれば声くらいかけるだろう
演目が上演されている最中であったならば、どうしたのお嬢ちゃん?乗り過ごしちゃったの?で済みそうなもんだが、
演目が終了して、劇場出入り口が帰宅する貴族でごった返す時間帯にポンッと現れれば、
警備員たちも舌打ちの1つもしたくなるだろうし、面倒増やすなよと言いたくもなるであろう
そう言う事態を避けられて、警備員たちも幸せ、警備員の詰め所で事情を聞かれる時間を省けて彼女も幸せ…
と、考えれば丸く収まった、と言えんこともない…と思う。思っておきたい
ただまあ、自分は何一つ得るものがないのだけど、知己が面倒に巻き込まれず済んだ、と言うことを
ささやかな報酬としておこうと思う………大して働いたわけでもないしそんなものだろう
「まー…顔見ないなと思ったら、そういう事あるもんな…
おかげさまでピンピンしてるわ。そっちも相変わらずはねた髪がピンピンしてるようで何より」
お互い無事を確かめられたのは良いことなのだろう
少なからず関わった人間がフッと消えてしまうというのは自分だった何やら物悲しい
場所や状況は一先ず置いておいて、お互い元気そうであるのは何よりのことであった
「そういうもんか…?まあ、アレかもな見知った顔で何時も組んでるってんじゃなきゃそうなのかもな…
いやいや、あっただろ…敗残兵狩りの、アスピダだったかの側の村だったかの…
あん時、めちゃくちゃ頑張ったんですけどぉ…?
………ん?いや、違ったかな?誰か別のもっとふくよかで美人のご婦人だったかな…?」
確かに彼女であったような気がしたけれど追求されると確かに別人だったような気もするから不思議なもんである
…追われてる女に縁がある、という辺りはあえて否定はしないでおく
善であれ、悪であれ、追われている女がいたならば自分は女に付くのは間違いないであろうから
「ん~…っと、もうちょい行けば、―――の街区に出る
そこの屋敷の敷地の裏手抜けるから付いといで…ここの爺さんとは知り合いだから大丈夫」
くいくいと手招きしてやはり彼女を先導する
堂々と屋敷の敷地の裏手に続く小さな門をくぐり敷地を抜ければ、行き交う人々の雑踏と街の明かりが見えてくるはずである
■ティアフェル > 世知辛ぇなあ、と湿っぽくさらにやさぐれ親父が如く嘆きたくなるような……とは平民のやっかみのようなものかも知れない。
アナもあるらしいが富裕地区の警備は盤石のようである。
歌劇に興じるのは貴族連中ばかりではなく末端ながら王族も混じるからであろう。
そんな現場を無為に荒らすことなく切り抜けると、事なきを得られたのは気の回る何でも屋と顔見知りだったのが幸いした。
「変わりないなら何よりだわ。同じ冒険者なら噂を聞くこともギルドで尋ねることもできるけど、そうじゃないから。
これでも心配してたのよ。『引っかけた女に逆恨みされて刺されてるんじゃないかしらー』ってね」
多少の憎まれ口を込めながらも、相変わらずの調子である相手を見ればどこか安堵して屈託なく笑った。
「色んなスタンスはあれど、冒険者って危険を冒す者って書く訳だからね。平々凡々とした人ばかりだと評判も堕ちるわ。
アスピ……あー……あれか。思い出した。うん、あの時は助かった!
なんかこう、疾風迅雷の○○、とかそういうアレな二つ名がつきそうなスピード感だったよねー」
ぽん、と手を打ち鳴らして彼の科白にかつての出来事を想起されては、あったあった、と腑に落ちて晴れやかに笑って肯いた。
あれからもう一年以上が経過したのか、としみじみとした感慨を抱き。
「おー……やっぱやたら顔、広いのねえ……ひとさまの敷地をまたぐのはちょっとどきどきするけど……」
あどと云いながら拱かれるに応じて歩を進め、灯りの点る屋敷の敷地を遠慮がちに、どこかこそこそとついて行き、やがて見覚えのある街並みが見えてくると、そこから漂う飲食店から漏れるいい匂いに。
「あー……お腹空くー……なんか食べてこっかな。暇なら一緒しない?」
■カーレル > 王族の来駕があったか自分は知らぬし、知りたくもないが自らの身辺の守りはしっかり固めておくのが
この国の貴族の処世であり、基本でもあるように思う、しかしながらそういう傾向が強い者ほど、
不思議なもので内側に入り込まれると脆かったり…それで己は己の身を危険にさらしているのだから
笑えぬ話であるのだけれども
「逆恨みする程、愛情深いご婦人には大概決まった相手がいるもんだ…
逆恨みして刺してくるようなのはまだまだお子ちゃま、遊びは遊びって割り切れんもんよ」
屈託のない笑みにやや引きつり気味で妙に含蓄のある物言いであった
笑えねえなあ、と内心苦笑しつつも努めて笑顔を浮かべようとするものだから、妙な顔をしていたことと思う
「そこを行くとティアは平々凡々だな…噂が聞こえてこねえもん
それでも回復術士ってのは食いっぱぐれることはないんだろうけど
…もう二度とゴメンだね、あんな逃避行は。危ないところに行くのはかまやしないが、
どっか俺とは関係ない所でやってくれ、危うく一匹の可愛い猫が帰らぬご主人を待ち続けるところだったわ」
どうやら思い出したらしい彼女は酷く晴れやかな顔をしていた
反面自分はといえば、心底、あんな事はゴメンであると苦虫を噛み潰している
晴れやかな彼女の顔を見ていると案外こいつ、肝が太い大物なんじゃねえか、と勘違いしそうになる
「静かにな、この家、番犬飼ってっから…長毛種でデカいやつ…
普段はおとなしくて可愛いし、撫でさせてもくれるけど眼が怖いんだわ」
等々、犬嫌いな彼女に注意を促しコソコソと抜けていく
屋敷の外縁をこっそり通ったのも良かったか、番犬と出くわすような事もなく、
屋敷の敷地を抜け街の明かりが見えてくれば、ほう、と小さく息を吐いた
…なんだか判らぬが妙に気を張っていたように思う
「…なんつーか、意外とティアは度胸座ってるよな
犬以外には無敵なんじゃねえか、マジで…感心するわ
おっ、良いねえ。たっぷりお駄賃貰ったし、奢っちゃろう…肉行こうぜ、肉」
彼女の申し出に自分も日暮れから何も口にしていなかったから頷いた
肉塊をじっくり遠火で焼いたものをそぎ切りにして出してくれる酒場がこの近くにあったことを思い出す
夜遅くまで開いているから今から行っても間に合うだろう、そうと決まれば、
行こう行こうとやはり彼女の先をゆくのである
■ティアフェル > 「そう、メンタルやばい系女子は本能的に避けて通ってるのね……。
愛情深いとキレちゃってるってのはまた別物ですよ、お兄さん。お子ちゃまってか、どうかしちゃってんでしょ、そんな女」
余程の扱いをしたならともかく、この何でも屋に遊ばれたところでそこまで悲惨なオチはつけてこないような気がして、本気で刺されることがあるとしたら相当ヤバイ性質の女を引っかけたに相違ないと当たりをつけた上で毒を吐いた。
「あー? ほんとにぃ? やー…それは良かった……わたしは自慢じゃないけど評判の立つほどでもないから、噂があるとしたらマイナス方面だろうからさ。悪評が響いてないとしたら何よりだわ。
そうね、手に手を取ってどころか。這う這うの体での遁走なんてほんと……割に合わない仕事だった……。
えぇ……関係ないところでやったら死ぬじゃない……なるべくあなたの目の着く範囲でやればわたしは助かるのに」
自己中。超利己的な主張をしくさっては、通りがかった際には是非見棄てずお願いします。と殊勝なんだか厚かましいんだかわからない態でしっかり腰を折ったお辞儀をキメておく。
「えぇ…なんで今云うのよ~…知ってたら絶対迂回したのにぃー……」
いくら大人しかろうと可愛かろうと賢かろうと犬がでたら即悲鳴だ。びくびくきょろきょろおどおどと思わず屋敷を出るまではその袖をしかっと握りしめておく。いざという時の盾ですとばかり。今日は彼が二回も盾役になる羽目になったとも知らず。
「はい? なんか今さらねえ。それはねえ。フィールドワーク対応する冒険者だから、ビビリじゃ務まんないっしょ。
へっ?! え、奢……え。いいの? 珍しい…しかもお肉? 今日はよっぽど懐が暖かいのね。
それではありがたく! ――って、待ってってば……っ」
置いてかれる。先導するというよりも足が流行っているかのように美味しい肉料理屋を目指す、長さも早さも違う足に置いてかれそうになって慌てて足を速めた。店に近づいて行くごとに、香ばしい匂いが近づいて余計に空腹を煽る。
■カーレル > 「いやいやそうとも言い切れない、愛憎は表裏一体………やめようか、この話」
忘れた頃に刺客を差し向けてくれる黒髪の君が脳裏をちらつく
今はこうして五体満足で生きているが、次は?その次は?と考えるときりが無い
余程、本気だったらしい、と思わぬではないが袖にされて尚、こうして刺客を差し向けてくれるのだから、
彼女の言う通り『どうかしちゃっている』のだろうと思う
…思うだけでピタリと思考を止めておく
こういう切り替えの速さも前職があったから身に付けられたものである
「安心すると良い、死んだら花くらいは手向けてやるから…
あと、時々は思い出して、跳ねた髪がピコピコ風に揺れてたっけなくらいの事は心に留めておくし?」
なんでも屋、なんて稼業は自ずからトラブルに顔をツッコミ、自分なら上手く解決できますよ、と
喧伝するようなものだから、一文の得にもならないトラブルなんてのはゴメンである
偶々通りがかった場合でも本来であれば、トラブルを横目にしながらそそくさと退場したいのだけれども、
なんとなーく、彼女には手を貸してしまうことが多い……いや、貸さなかった事もあったか
彼女と知己を得てしまった以上、仕方ないと割り切るしかないようにも思う
まあ、彼女は回復術士であるから、貸しを作っておくのも悪くないだろう、そう割り切ることにする
「あー…そうね、度胸が座ってるっつーか、逞しいんだわ…
冒険者のメンタリティってみんなそうなのかもしれんけど…
―――おう、今日はお腹いっぱい食べていいぞ?
どうせ、冒険者なんて毎日黒パンとか麦粥ばっかり食ってんだろ?肉を食え、肉を」
懐が暖かいので気も大きくなる
彼女とは久々に顔を合わせたのでご馳走するのも良いだろう
―――そんなこんなで店にたどり着けば肉をつつき、グラスを傾けながら、
彼女の冒険譚なんかを聞きつつツッコミの1つも入れながら或いは仕事の失敗談を態とらしく雄弁に語りながら、
少々遅めの夕食を楽しんだのであった―――
■ティアフェル > 「フツーの神経じゃやらないことやる奴はシンプルに異常でしょ」
云い切れない……こっちは云い切った。
まあ、その異常行動を愛だと云いたいならとやかく云うつもりはないけれど、飽くまで普通にしていたい一般人の言である。王侯貴族の逆ギレはまた別の話。
「薄情者ッ。スルーしたら化けて出るわよ? そっちのが面倒くさいわよ。断言しよう、わたしはきっと怨霊となりかならず祟り殺すと」
花を手向けた程度ではどうにもならないらしい。人のことを異常だなんだと云っておいて自分はこれだけ恨みがましいことを云う。非情に嫌な女であった。
とはいえ、脅しと云うより売り言葉買い言葉。揶揄の類である。むっとした顔も大して本気度は窺えない。
「いーのよ、図太いと云っても。
まあ、わたしはとりわけ心臓が剛毛かもね。
……し、しばらく合わない内に気前よく、なったね……? なんかあった? いや、余計なこと云うと撤回されるわね。
あざっす。ごちそうさまです! 毎日毎日カラスムギの日々なのよぅ…」
しっかり感謝はしたが、毎日の食卓はそれなりに賑やかなのは完全に伏せて碌な物を食べていません、と嘘くさいアピールをカマして、うきうきと料理屋に付き従い、あれこれと溜まったお互いのネタを軽快に少し大げさに披露しつつの夕餉となったと。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からカーレルさんが去りました。