2021/09/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にファビオさんが現れました。
ファビオ > 「ええ。此方こそ、今後ともどうぞご贔屓に。」

人当たりの良い笑みを浮かべながら、そう告げると共に一礼して裏口を後にする。

場所は王都の富裕地区の中でも、比較的平民地区に程近い場所に位置する小規模な劇場の裏口。
中心部に建てられた大規模なものとは比べるべくも無いが、代わりに歌劇や演奏会を安価で楽しむことができ、
貴族は勿論、平民や冒険者にも親しまれるべく建てられたもので、事実そういった身分の客の出入りも少なくない。

と云うのが、表向きの顔。

その裏では奴隷のオークション、公開調教などといった見世物が夜毎執り行われており、
何も知らずに"観客"として訪れたうら若き女性が気が付くと"主役"としてステージに立っていた――
そんな出来事も、この街では決して珍しくない話だ。

裏口から現れた男は今まさに、そうした"裏"の演目で用いられる小道具を卸す取引を終えたばかりであった。

「ふむ……時間もありますし、久しぶりに少し覗いていくとしましょうかね。」

取り出した懐中時計を一瞥してから、気紛れにそのようなことを思い立つと。
裏口を出た足取りの侭、劇場の正面口へと向かい始める。

今の時間帯はまだ"表"の演目が続いているか、それとも"裏"の演目が始まる頃か――
まぁどちらでも構いませんが、と零した独白と共に小さく笑いながら。

ファビオ > 「今晩は。嗚呼、今は唯の観客として訪れただけですので、取次は結構。
 して、今夜はステージの"主役"に立てそうな御方は……?
 ――そうですか、それは良かった。」

劇場の受付で、顔馴染みの従業員を相手に挨拶と軽い会話を交わした後に、
支払った硬貨と引き換えにチケットを受け取り劇場の中へと進んで行く。

小さな劇場は満員と呼ぶには至らずとも盛況で。
華やかな衣装に身を包んだ上流階級の紳士淑女の姿が多いものの、
中には冒険者、あるいは町娘といった装いの若い女性の姿も疎らに見受けられる。

やがて手頃な空席に男が腰を降ろすと、それから程無くして客席の照明が落とされ、舞台上の幕が上がる。
そうして繰り広げられる今夜の"演目"を、男を始め一部の観客達は愉悦に満ちた視線で鑑賞するのだった―――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からファビオさんが去りました。