2021/04/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜会場」にシシィさんが現れました。
シシィ > 楽団の奏でる舞曲が耳を打つ。さざめく人々の声、笑い声、熱気。所謂社交を行う紳士淑女らは、そのほとんどが貴族か、それに連なる人物たちだ。

故に己にとっては少々居心地が悪くもある。
結い上げられ、編まれた髪が項を擽るのを指先で払いながら。気づかれないようにそっと溜息をついた。

商談のために、と訪れてはいるものの、明らかに異邦の己は浮いてしまうのを自覚するからこそ、壁際へと己の居場所を維持しつつ。
楽しげに見えるよう細めた双眸は、だれがどんな繋がりを得ているか、あるいは得ようとしているかを判じていた。


平民、と、そう括られていてもすでに特権階級と同じような暮らしをしている者もいる。下位貴族はむしろそんな新たな階層の者たちとのパイプを強くしようとして頻繁に夜会を開き、広く門戸を開くのだとか──

それを嘲笑しようとも思わない。立場の違いがあれど、己を生かすために皆必死なのだと思うが故に。
今宵の主催は蒐集家だと噂で、そのコレクションのお披露目があるという噂に釣られて、訪れたのはいいものの───どうにも常と変わらない夜会のようだ、と暇を告げるタイミングを計りながら、絢爛豪華な人々の装いや、調度品の意匠を眺め、その由来を辿る。

シシィ > その観察自体を面白いかどうかと感じるのは本人の資質だろうが、物の由来を辿るのは己の性にはあっている。無論、不躾に観察しているととられかねない行為ではあるし、気づかれる前に視線を外すことにはするのだが。

身をわきまえた程度の必要最低限の装飾品と、装束は、ごくありふれたもので、余人の興味を引くとしたら、隠せぬ出自を主張する、褐色肌くらいだろうか。

もう少し広間を眺めて、バルコニーにでも出てしまえば、夜目にはそれほど目立たないとは自認できるのだが、そのタイミングを計るよう。遅すぎてもいけないし、そも一応己も人脈作りのために訪っている面もあるのだから。給仕からグラスを受け取り、何の気なしに口にしながら───。

さすがに宮廷風の舞踊は知らない身であれば、其方の誘いは断るしかあるまい等と、茫洋ととりとめもない考えを巡らせる。

シシィ > ───……そろそろ頃合い。そんな判断とともに、女はする、と広間を後にした。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 夜会場」からシシィさんが去りました。