2021/04/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 トゥルネソル家」に竜胆さんが現れました。
竜胆 > 竜の巣、と呼ばれる邸宅がある。知らぬ人間からは、なんだそりゃ、というイメージがあるだろう。
 実際に来てみれば、ぁあ、と納得が出来てしまうのが、この家、リス・トゥルネソルを筆頭と下トゥルネソル家の自宅。
 主が人竜で、その姉妹もまた、人竜、使用人たちも少数を除けば純粋なドラゴン達で、竜の巣、という綽名が付いている。
 正式名称でいえばトゥルネソル宅なのだけど、其れで呼ぶものは少なかろう、実際にいま、ドラゴンが庭で昼寝をしている。
 その脇で、大きな狼犬がわふわふしながら、走り回っている。

 庭に、珍しい人影がある。
 トゥルネソルの三姉妹の内次女である、竜胆。本当の名はまた別にあるのだが、少女は魔導士を目指している。
 魔導士は、字名を持つものと何かしらの本で読み、それをうのみにした故に、竜胆という東方の名前を使い、生活している。
 本当の名を知るのは、其れこそ、本人が友好の証として明かした者ぐらいだろう、秘すことを条件として。
 そんな少女は、日夜家の中に籠り切り、魔の研鑽を行っているので、庭にすら出てくるのが珍しいとも言われる。
 本当にごくまれに、義姉の狼犬を散歩に連れて行く程度にしか、出かけない娘だ。

「――――ふぅ。」

 庭にテーブルのセット、ティーセットを用意し、通りの方に視線を巡らせる。
 偶に門の外で歩いている人間を、此方の事を警戒している人間を、興味なさそうに眺めつつ。
 手元のティーカップに注がれている紅茶を、一口、口に運んでいた。

竜胆 > 最近は、ずいぶん暖かくなってきている、と言っても、普段から比べれば少し肌寒いといって良いのだろう。
 普通の人は、春用の服装に何か一枚羽織るようなことをしているのが見えるが、少女は違う、羽織ろうとしても背中の翼が邪魔で羽織れない。
 それに、己の能力でほんのりと周囲を暖かくして置けば、別に要らない。
 そもそも、年中自分の能力で周囲の気温を適温にしているので、熱い寒いを感じることがない。
 便利な力を使いながら、のんびりと春の陽気に体を晒しながらの紅茶の時間となって居た。

「――――。」

 ぱたぱたと、小さな女の子が、メイド服姿で、大きな洗濯籠をもって走り回っているのが見える。
 数少ない、人間のメイド、シスカだ。
 彼女は姉の嫁の妹なので、本来であれば、メイドなんかしなくても良い、義理の姉妹と言える娘なのだけど。
 子供である事、そして、自分で生活費を稼ぐことを目的とし、メイドをしている。
 なんでそんな事を、と、竜胆は思うのだけど、リスは理解を示しているらしく、仕事を振っている。
 今じゃ、ドラゴンたちを統率してメイド長になって居るらしい、義姉も冒険者で高名らしく、その血筋というのだろうか。
 有能ね、と素直に思う。
 グリムという名の、義姉のペットがのそりと起き上がったと思えば、シスカに近づき、その籠の取っ手を咥える。
 シスカを乗せて、洗濯場へと、のしのし歩いていく。
 小さな女の子が大きな犬に乗っけられて歩く、まあ、良い番犬よねと、そんな感想を一つしつつ、再度紅茶を含む。

竜胆 > 去っていく義妹を見送り、そのペットを見送ってしまえば、視線は再度入り口の方へ。
 何か面白い事でも……珍しくあるが、来客とかは無いのだろうか、と考える。
 今は、家令長は姉と一緒に仕事に出ていて、メイドたちは基本的に来客に関しては取次しかしない。
 そうなると対応するのは、自分となる。

「―――面倒臭い事この上ないわ。」

 妹は―――今頃どこかだ。姪は―――矢張り家にいない。
 そうなると、自然と家のものというのが自分という事になる事に気が付く。
 部屋に戻って、メイドに全部追い払わせようかしら。
 本気でそう考えるのが、この竜胆という次女で、面白い事よりも、面倒の方が勝っていると認識する。

「――――。」


 無言になり、女は、再再度、紅茶を一口。
 残り少なくなってきた紅茶を眺めて、はふ、と赤い唇から吐息を零す。
 瞼を伏せて、少々の時間の沈思黙考。

竜胆 > 静かに紅茶のカップを置く。
 すでに紅茶はなくなって居た。少女は手元にあるベルを持ち上げて、ちりんと一つ慣らし立ち上がる。
 後でこのカップとテーブルを回収に来るから、部屋に戻ればいいだけだ。

「さて、と、あれを続けないと、かしら。」

 今行っている魔法の研究、詠唱呪文だけではなく、もっといろいろと手を伸ばすべきだろうかと。
 そう考えた故で、錬金術に手を伸ばした、きっかけは自分の所に来た小さな存在だ。
 今はどこかに行っているが、彼は錬金術師で、その教えを軽く受けて興味を持った。
 とは言え、錬金術の幅広さに、流石に手を付けても遅々として進まない、その結果の、引きこもり。

「誰かに、師事を受けた方が、善さそうね、流石に。」

 面倒くさいし、殺してしまわないかしら、と考えながら。
 部屋へと戻っていく。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 トゥルネソル家」から竜胆さんが去りました。