2021/03/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にエリアさんが現れました。
■エリア > 昼下がりの目抜き通りは穏やかで代わり映えもなく、道行くのは上品に装った貴族や従者、衛兵といったところで、至極平和でとても退屈に感じた。
舗装され清掃の行き届いた道の両脇に立ち並ぶ店はどれも貴族向けの高級店ばかりで平民には手の出ない、高品質な品々を取り扱っている。
安全なこの辺りならば、と共も連れずにふらりと閑に飽かせてやってきたはいいものの、目当ての品もなければ店頭の商品に大した変化もなく、今一つ乗らない。
「屋敷でくすぶっているよりは……と思いましたが、大して変わりなかったかも知れませんわね……」
ふらふら遊歩しながら舗道から飾り窓を覗き込み、最新流行のドレスを気のない様子で眺めれば小さく嘆息を吐き出した。
流行り物に関心もなければ遊興も然程好まない。
興味のある事と言えば食べる事くらい、我ながら無趣味もいい所で。
「新しいレストランなんて出来ていると嬉しいのですが」
ぶれずに食いしん坊万歳な願望を吐露しながらレストラン街へと足を向け、昼食を摂ってまだ幾らも経っていないに関わらず、新店、新メニューチェックに余念がない。
■エリア > そして、相変わらず、そこにも代わり映えがない。
屋敷の料理人が作る物と大差のなさそうな、気取った品ばかりがメニュー書きに綴られる様子にがっかりした様に表情を曇らせ。
「もっとこう……パンチの利いたお料理はないものですかしら……。
ニンニクたっぷり、とか……豪快デカ盛りプレート……的な……」
それは無理な相談だ。ここは富裕層ばかりが住む区域。庶民的な料理を出す店は期待する方が間違っている。
洒落た小奇麗な店に野卑な料理は似つかわしくない。
たまには庶民的で豪快な料理が食べたいと、切なげに表情を崩し吐息を吐き出す憂いの様子は……事情さえ知らなければ叶わぬ色恋にでも悩んでいるかの様だが。
真実は、がっつりしたものがたらふく食いたい、とそんな残念な物である。
「こうなったら一人でも平民地区の方へ乗り込ん――……だり、しませんわ……ほほほ……」
はた迷惑な決意とともに拳を握って口に仕掛けた言葉も、近くにいた衛兵と、はたと眼が合うと尻すぼみ状態で自動的に改変される。
ここで屋敷の者にでも『お宅のご令嬢平民地区でメガ盛りGOでしたけど』などと告げ口されてはオチオチ外出も一人ではままならなくなってしまう。
行く時は最新の注意が必要だ。
ほほほ、と淑やかな笑みを浮かべて誤魔化し。巡回中の衛兵が向こうへ消えれば、ほぅ…と息を吐き出した。