2021/02/21 のログ
ジギィ > ささやきでざわついていた室内がしんと静まる。
最後の鍵盤の一音。
やがて歌姫の最後の響きが溶けるように消えゆくと、控えめな拍手が潮が満ちて来るように舞台へとさざ波となって届く。

舞台を照らしていたライトがごく薄くなって、ピアノを奏でていた女肩から力を抜いてほっと吐息をひとつ。

(――――ひと仕事、あがりね)

さて改めて、と舞台を見遣れば――――既に彼女の信者か今宵正に魅せられた者か、取り囲まれていてもう女からは歌姫の様子が伺い知れなくなっていた。

「――――…残念」

話したかったな。
ぽつり、零すと楽譜を譜面台から取り上げて
闇に溶けていた女は、舞台の外へと――――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 会員制のバー」からジギィさんが去りました。