2021/01/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 深夜の酒場」にアウル・リブライアンさんが現れました。
■アウル・リブライアン > 真夜中という時間は、寝静まり、忍び込む何かが蔓延る
しかし外装を大して目立たせることもなく、気づいたものだけが中に入ればいいというような、物好きな店も存在する
この店はその一つ 日付が変わり、朝を迎えるまでの間でしか店を開けることのない富裕層の酒場
チリリンッ
控えめなドアベルが一つなった
扉に取り付けられた、縦に伸びる取っ手
防寒用のコートに身を包んだ、紫色の長い髪の魔女が来店する
店内は人は疎ら 孤独を好む老人 日焼けというものを知らないような青白い肌の女性
壁際で密会する不断の関係 等 そんなものしかいない
店主もまた、人の姿に見えながら、どこか異界の空気を纏わせる
静かに歓迎する言葉だけがしては、 お好きな席へ それだけが魔女に伝えられる
此処にエスコートという言葉は存在しない この店で滞在を望む客だけがいればいいというように。
魔女は席でコートをゆっくり畳んだ。
暖かい店内の中で、首元にいた青蛇が眠たげに頭をこすりつけてくる
顎に指先で一つ撫でるなら、やってきたマスターの静かに歩く音
「アブサンを。」
店主にそう告げると、月白色のローブ姿のまま、暖炉熱の入った店内で温もり、文庫本を開く。
そして砂糖はあらかじめ処理しておくように頼んだ
■アウル・リブライアン > 店内は静かなものだった
孤独や秘密の中で、皆が思い思いの酒精を舐めている
魔女も、この店内の空気が好きというだけであり、本当ならばコーヒーでもよかった
しかし空気に合わせるように、薬草酒を頼んでは、やがて角砂糖を火で溶かし落とすそれが出てくるだろうか
店主がソッと目の前に気づくように置くだけで済ませる。
言葉もかけないのは、魔女が書物を読んでいるせいか
そして魔女も、会釈のみを返した
パラリと、頁の擦れる音が耳に心地いい
冷え切っていた外からやってきたせいか、濃度の高い酒精を一口
喉を通り過ぎ、独特な香りと砂糖の甘さ 胃から熱が生まれる感覚
コーヒーには劣るものの、身体はそのうち温まっていくだろう
青蛇が、興味本位に舌を近づけ、匂いを嗅いでくる
しかし、独特な香気の薬草酒に、一瞬で首をS字に曲げたかと思うと、巻きなおってしまった。
「貴方には無理よ。」
小さくささやき、笑う。
そうしていると、また静かな時間を好む客が一人、ゆっくりとやってくる。
どうやら、外は雪が降り始めているらしい。
「……少し面倒ね。」
隠れ家のような店内は、窓というものは勿論ない
壁を少し見つめると、ため息をつきながらまた、頁へと視線を戻していった。
■アウル・リブライアン > 雪が降り積り始める
それを知った客が帰っていく中で、魔女だけは残っていた
店主は構わず、カウンターで一人過ごしている中、魔女も平然と頁を進めていく
グラスの中身はすでになく、アブサンをもう一度頼むつもりもなかった
濃い濃度は、魔女を一杯だけで十分にさせ、首に巻き付く愛蛇はうつらうつらと、店内の温かさで転寝をしている
時間も過ぎていく頃、雪を掃うこともせずに店内に入ってきたのは、顔を隠すようにベールを身に着けた貴婦人
店内を見回し、魔女を見つけると肩の力が抜けたようになっていく。
魔女と言えば、入ってきた人物にジッとその瞼がやや降りているような視線を渡す
雪を示すように、頭部と肩に指を指した
ハッと気づいたように、外で雪を落とした貴婦人
馬車でやってきたわけではなさそうだ
おそらく忍び、外を一人歩いてきたのだろう
目の前に座った相手に、携えていたポーチから薄い箱を置いた
中には綿と布で緩衝材として敷き詰められ、中には薄い小瓶が二つ
液体は共に白身がかかる青と桃の色を示していた
「使い方は説明した通り そして貴女には。」
一つの小瓶を懐から出し、目の前に置く
同じ薄型の小瓶
しかしそれは透明度のある黄色を帯びている。
「これを先に飲んでもらうわ。」
此処に至るまで、店主は近づいては来ない
まるで察しているかのように。
「どうするの?」
互いに既に、契約内容は済ませているようで、選択を魔女は迫る
貴婦人は、迷うことなくその黄色を飲み干した。
「契約成立ね。」
そう言って、魔女は書物に目を再び通す
もはや用事は済ませたというように。
そして貴婦人が去り際に店主にチップを置いていく。
口止め料のつもりだろうか。
魔女もまた、書物をある程度進めると立ち上がり、カウンターへと代金を置いた。
外は雪が静かに降りしきっているようだ。
帰りはわがままを言って出してもらっている乗り物に乗って、帰ることになるだろう。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 深夜の酒場」からアウル・リブライアンさんが去りました。