2021/01/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からヴィルアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 【ナイトカフェ 夜の帳】 」にアウル・リブライアンさんが現れました。
アウル・リブライアン > 深夜のカフェ
ドアベルは控えめな チリンッ と鳴る細い音色
訪れたのは、首元で主の体温を盗み、温もった青い蛇を巻く魔女が一人
訪れた客に、店主は夜のこの静かなカフェに見合うように無口なマスター

「こんばんは。」

一言、挨拶を交わす魔女は、ケープドレスの上から着込んだ防寒用のコートを脱いで腕に掛ける。
温められた室内は暖炉の音とテーブル席とソファ席に分かれたもの
店内は夜の生活を送る娼婦らが、一杯の温かい茶を求めてくる者もいれば
夜という空間が起床時間のような、正体を隠せど吸血鬼や同じ魔女がいるかもしれない

暖炉近くは人気な様子で、少し離れた場所でソファ席に腰を下ろす
趣味で経営しているかのような店内は、人もまばらな所謂穴場
マスターがやってきては、温かいお絞りを差し出し、手袋を外した肌色の薄い手元を拭っていく。

「コーヒーを濃いめで一つ。」

そう言って、温かい室内で使い魔の愛蛇は、顔を出しては調子を取り戻す
主の頬をY字の舌が擽り、じゃれる様子に指先で顎を撫でると、持ち込んでいた文庫本を開いた。
はさんでいた栞の頁から文章を読み始めると、マスターは音もなくカウンターへと戻り、豆を挽く香りを漂わせ始める。
すぐに、黒の中に焙った色を含ませたカップが訪れるだろうか。

アウル・リブライアン > 無口なマスターは、品質と店内の雰囲気で構えているかのように言葉を出さない。
革靴の静かに踵が叩く音が床の上に繋がって、近づいてくる。

    カチャリッ

指を先に添えて、ソーサーとカップの音がわずかに出ただけのあと
ソーサーにはカップに添えるように花びらにカットされたドライフルーツが数枚
お互いに、余計な言葉も出さず、去っていく際の革靴の音色だけが遠ざかっていく。

この静かなカフェの中では、それは背景の音のように溶け消えて耳に心地よい。
マスターの背中がカウンターに戻っていくまでの革靴の音色を拾い終われば、カップに手を伸ばす。
湯気が立ったそれを、義手の右手が器用に持ち上げた。
赤茶の肌肉と木目が模様出る手が摘まみながら持ち上げつつ、フゥフゥと吹き冷ます。

ミルクも、砂糖も入れない味は濃く、苦みの跡でほんの少しの酸味。
鼻腔を通り抜ける香りでようやく、来店してからの体が温まり始めた。
愛蛇は、爬虫類の肌を遠慮なく首から押し当て、体温を盗んでいく
黄金瞳の、縦筋の黒が飼い主を見やると、魔女はおとなしくしていて、と
背中から抱くようにして首に巻き戻させる。

「いい子。」

再び頁を捲る音と共に、数ページを過ぎるとふと、添えられていた花びら型のドライフルーツを口に入れる
砂糖漬けの甘い味と、酸味
口の中で、ゆっくりとかみしめてからコーヒーを再度口につけると、やっと魔女は小さく笑みを浮かべた。

アウル・リブライアン > コーヒーの苦みが口の中で残り続けると、香りも同じく残る
カフェの中を漂う、娼婦の富裕層で居るだけあって、上品な香水の香りやほかの音も聞こえない
コーヒーは、温くなってしまうとするりと、気が付けばなくなってしまうもの

白い底が見えてしまったカップをソーサーに戻すと、差し込む傍の存在感
顔を上げてようやくマスターが居たことを悟るも、驚く必要もない。
次を黙って注ぎ、再び湯気立つそれを見ると、魔女は愛蛇を義手の指先で撫でつつ。小さい声量で聞く。

「ねぇ、ケーキはある?
 単純なメレンゲの物が欲しいのだけれど。」

魔女は、果実やクリームで飾られたものよりも、メレンゲを乗せて表面に焼き目のついた、シンプルなものを望んだ
富裕層における店内では用意している菓子も日ごとで違うだろう
ただ、メレンゲのケーキはそれに限ったことではなく、マスターは黙って下がると、数分後にはきれいに切り取られた
白に焼き目のついたメレンゲのケーキをそっと置いた。

小さな三本歯のフォークをサクリと表面を割り広げ、口に運ぶ。
ソファ席では、文庫本をテーブルに置きなおし、皿を左手に持つ必要があった。
静かに口の中で、単純な味を楽しむと、メレンゲに誘われた愛蛇が首から出てきては、腕に巻き付いてくる。
フォークの先に、焼けたメレンゲだけを掬い差し出すと、口を開けてほおばってしまう蛇

「おいしい?」

そう言ってから、気にせず一口また切り分け、口の中へ運んで行った。
メレンゲとコーヒーの味を楽しみながら、蛇が卵をふんだんに入れたこれを同じく摘まめる
仲のいい魔女と蛇は、甘く香ばしいそれを楽しみ。

アウル・リブライアン > やがて朝が訪れようとする。
店内には夜を過ごす傍らに利用した客は消えていた
カウンターでは、無言のマスターがカップを一つずつ、きれいに磨き終えていく

BGMもない、無言の空間
暖炉の音とマスターの出す音だけが耳に流れる。
目の前にはもうケーキ皿もなくコーヒーの最後に口を付ける。

口元をナプキンで軽く押すように拭うと、愛蛇の口元も同じく拭った。
出ていく際に、コートを羽織りなおすと外はまだだいぶ冷える様子だった

冬の朝の訪れは遠い けれども、動く時間はかわらない

「ごちそうさま」

マスターにゴルドを支払い、後にする
愛蛇はすっぽりの内側に消え、フードを被り自身の住まう廷へと戻るだろう

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 【ナイトカフェ 夜の帳】 」からアウル・リブライアンさんが去りました。