2020/11/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/閑静な公園」に竜胆さんが現れました。
竜胆 > 昼間の公園に、狼犬を連れて歩く一人の女。しずしずと歩くドレス姿は、富裕地区に良くあるといって良い存在。
 狼犬も良く躾けられているようで、3mの巨体に関わらず、堂々と、静かにして歩いている、人が近づいてくると主人の脇に座り、道を開ける。
 上品な様子、と共に、異質なものがそのドレスの主人には在った。
 ドレスの背中部分が大きく広がっていてあられもなく背中を晒しているのだが、その背中には一対の竜の翼があり。
 ドレスのスカートの部分、その下から、竜の尻尾が見えている。
 隠しきれないその部位は、主人が人間ではない、と示していた。
 狼犬を連れて歩く女の名前は、人竜、竜胆・トゥルネソルといい、トゥルネソル商会の三姉妹の次女。
 基本的には家の中に籠り切りで、滅多なことでは家から出てこない女なのだけれども、偶に家から出てくることがある。

 本人の気が向いたとき。
 今、連れている狼犬、グリム君に、散歩に引きずられてくるとき。
 家の影の支配者で、義理の妹メイド長シスカ嬢に家から放り出されたとき。

 その何れかに当てはまるときに、家から出て、時間を潰すことにしている。
 今回はそのどれか、と言うのは、秘して置くことにして。
 暇つぶしになるようなものが無いだろうか、と蒼い瞳は、右に、左に、と視線を動かす。

 この国は色々な意味で狂っている。
 昼間の真っ最中でも、外で交わる人が居る。
 さらに言えば、この閑静な公園もまた、そういう目的で使われることが多いから。

 今回は、狼犬の散歩として連れてきているが。
 可愛い子でもいれば、声を掛けてみようかしら、と思う程度には、この国に染まっている。

竜胆 > 其れに関して必要なのはまず、この、狼犬グリムの存在が邪魔だ、その威容は、女の子が委縮することが多い。
 なので、遊びに出すことにする、公園は広いし、彼は頭がいいので、人に迷惑を掛けずに遊んでいるだろう、満足するまで走り回ったりする。
 狼犬を目的に近づいてくる人も居ないわけではないが、流石に大きすぎる。
 それに、狼犬が何かを感知すればすぐに来てくれるので、問題は無かろう、と考える。

「グリム、行ってらっしゃいな。」

 リードを首輪から外し、軽く背中を叩いてやると、『ウォン』と、同意の声を上げて、彼は走っていく。
 公園の中から出ることはないが、走ったり、穴掘って埋めたり、自分なりの遊びを考えて遊んでいるのだろう。
 これで良し、と満足そうに頷いて見せてから、女はさて、と周囲を見回す。
 人通りが少ない、時間が悪いだろうか、少しばかり、歩いてみましょう。

 そう判断をして、女はゆるり、と歩き始める。
 周囲の木々は紅葉としていて、見た目が良くなるように作られているのだろう、未知に沢山の枯葉は有るが、端に寄せられていて、一種のアートのようになっている。
 コツり、コツり、と石畳を踏みしめて、女は進む。
 薄着だが、寒くないのか、と聞かれれば、寒くはない。理由は己の能力で、周囲を温めているから。
 女の半径3m程度は春のような、心地よさの気温に設定してあるから。
 風が吹こうが、吹雪が吹こうが、女の周囲は、暖かなのである。

竜胆 > 「――――ふむ。」

 しばらく歩いていたところに、ベンチが置いてある、見上げれば木々が上手く日の光を遮っていて、夏であれば此処が良い避暑になるのだろう。
 ただ、秋や冬だと、日の光が薄く寒いので人気が無くなる場所だという事も判る。
 逆に静かな場所だということが判るので静かに過ごしたいのならば、此処が良いのだろう。
 静か―――。

「時間を潰すには、ちょうどいいのかもしれないわ。」

 人と喋るのも良いが、一人で居るのも大好きだ、それは、彼女の引きこもりの性格にも表れている。
 追い出されて外をうろついているだけだったが、本を持って居ないわけでもない。
 そっと手を伸ばせば、空間が開き、その中から一冊の本を取り出す。
 この間、鑑定したばかりの魔導書。

 渡す前に、先にこれに目を通しきらないといけない。今日は、その最中に追い出されてしまったのだから。
 掃除なんてしなくても、普段から綺麗になるよう魔法をかけているのに。
 はふ、と自分の手で行わないと気が済まない性格の彼女に、仕方ないわね、と息を吐いて。

 ベンチに腰を掛けて。
 本を一度開き、その中身を、読み始めることにした。

竜胆 > 「――――。」

 本を読んでいる間に、光が遮られる、視線を上げればそこには、グリムが座っていて、此方を見下ろしている。
 何かを言いたそうにというか、視線が合えば尻尾をゆらりと振って、スカートを軽く咥える。汚れるとかそう言うのは気にしないが、引っ張ろうとしている、何処かに連れていきたいようだ。
 今、良いところなので動きたくはない、が彼がこういう時に呼びに来るのは、何かしらの問題や、自分の手が無いとだめな時。
 グリム自身ではどうしようもない事象が起きたときに限る。
 それが判るから、はぁ、と溜息を零し、然し本を読みたい。

「グリム、伏せなさい。」

 それで意図を察したのか、伏せるグリム君、その背中に横座りで乗り、己の尻尾で軽くたたく。
 慣れたものでグリムは立ち上がり、走り始める。
 バランス感覚は問題はなく、本を読みながらグリムに連れていかれる。

 そのまま、公園を去っていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/閑静な公園」から竜胆さんが去りました。