2020/11/22 のログ
シルニア > 仕返しのつもりで、しかし本心で言った私の言葉に彼女も照れる...事はなく。

「...む、むぅ、あ、ありがとう、なのです...。」

私が褒められ慣れていないだけだと気付かされる。それに、褒められたお礼を言ってない事も。
でも、照れてしまうし、恥ずかしいものは恥ずかしい。彼女の緑色の目を見詰めながら言おうとしても、ちらちらと目を逸らしてしまいつつ。

「わ、ありがとうです!
........ホントです。魔法の本なのに、お話してるみたいで。それも文体が柔らかくてなんだかティアさんみたいです。」

パラパラと飛ばし飛ばしに目を通してみて、第一印象だけ、だけれど感想を伝え、読む予定の本の束に加える。

「やっぱり、ティアさんは回復魔法には詳しいのですね?...あっ。
え、えとえとっ!答えたくなかったら無視してくださいです!!」

言った瞬間、しまった、と思った。先程聞かない方が良さそう、と判断したのに。
彼女と話していると、思った事を何でも言ってしまいそうだ。
粗相をした口を手で抑えた後に、フォローの為に慌てて声を張り上げて。図書館では不適切な声量だと思い出して、再び口を抑える。

ティアフェル > 「いえいえー、どういたしまして。こちらこそー」

 恥ずかしがっちゃってカワイーなーと非常にほのぼのしながら目を三みたいな形で細める。孫を見つめるばあちゃんみたいな気配すらある。チラ見の視線が時折一瞬かち合えばにこにこ笑みを向け。
 本性はタダのゴリラは何かと図太いのであった。

「えへへ。気に入ってもらえるといーな。
 わたし柔らか目かなー。あんまりそうは云われないからしんせーん。
 今度はしーちゃんの好きな本も知りたいな」

 お勧めの教え合いっこ。ひとのおススメは視野を広げてくれたり新しい発見があったりと楽しい。色んなジャンルの本を読むようだけど、一番のお気に入りはなんだろう。と。

「うん。一応ヒーラー……なんだよね。
 別に隠してる訳でもなんでもないから大丈夫だよ。
 今は魔法が使えなくなっちゃってるんだ。スランプ的な?」

 頬をかきながら。答えた話は別に腫れものでもなければ訊かれて悪いことでもない。ただ、相手からするとつまらないだろうと思いだけで。
 思わず声を大にした彼女が慌てて口を押えるのに、くす、と喉声で笑い。ぽんぽん、と宥めるように背中を軽く叩いて。

シルニア > 「柔らかいと思うですよう?あったかいですし、お母さんみたいというか...そんなかんじです。
んー、私のおすすめの本ですか...。まだここの本は数冊しか読んでないのですけれど、これ、『勇敢剣士シャルグの一人旅─人喰い迷宮攻略編─』...ですかね。
とある冒険者の自伝らしいです。一人称で、彼の冒険の様子を詳しく描いてくれています。少し自慢っぽいところがあるのですが、それがまた面白いですし、それに私は軽々剣を振り回したり出来ないので、それを疑似体験するのが面白いのですよう。」

なんて、これから読む予定だった本の、同一シリーズの本を差し出してみる。彼女の気に入るジャンルかな?と少し不安だけれど。

「ヒーラーさんなのですね。
...なるほどです。魔封じの装具や術等も付けられていないのに魔法が急に使えなくなった、と。」

彼女はスランプだと言うけれど、あまり聞かない例だ。ふと、ある事を思い付いて一枚の紙とペンを取り出し、掌の上ですらすらと描き始める。

「...力になれるかもしれないです。え、えぇと、お節介なら言ってくださいです。
簡単な魔法陣を描いてみました。危ないものでは無いです。
魔力を流すだけで起動するものですので、やってみて欲しいのです。」

と、ごく小規模な氷を精製する魔法の魔法陣が描かれた紙を差し出して。
これは、彼女が治療魔法だけを扱えないのか、それとも魔法そのものが扱えないのか試すためのもの。

ティアフェル > 「おかんか……切ないけど否定しがたい――だけどできればお姉ちゃん辺りで手を打ってはくれまいか……。
 っへえー。面白そうな本だねえ、前衛系の職業は大体文筆が向いていないものだからそういう人の自伝というのが珍しいし……どれどれー……ぷっ……なかなかナルシストで……面白いね、この人」

 差し出された一冊を受け取ってぱらぱらと目を通して見ると、なにかと自賛系の文章が目に付いてどこかコミカルだ。そんなに重たくもなさそうな内容で気分転換にちょうど良さそう。読んでみる、と笑みを零した。

「ん。一応ね。
 ――え? いやいや、お節介なんてとんでもない……むしろなんか気を遣わせちゃって………
 これに魔力を……? ん、んー……分かった。やってみる」

 簡単に説明しただけで、すぐに事情を察してくれるあたりさすが魔法使い。まだ幼いような少女だけど、有能さの片鱗が覗い知れる。
 手際よく書き記された魔方陣の描かれた紙片。こく、と肯いて。
 一瞬躊躇するように指先を震わせ。それからきゅ、と唇を噛み締めて。静かに目を閉じると人差し指の先から魔力を集中させ、魔方陣へと体内に巡る見えない魔力を流し込んでみる、が――。

 僅かに魔力の振動のようなものを感知したように紙片が揺れるが。それ以上はなんの反応も示さず不発に終わった。

シルニア > 「じゃあ、お姉ちゃんです...!き、気に障ったのならごめんなさいっ。
あー、なるほどっ。だから剣士さんの自伝をあまり見ないのですね。納得、です。気に入って頂ければ嬉しいですっ。」

さしだした本に乗り気な雰囲気の彼女にほっと胸を撫で下ろす。同時に思っていた疑問も解消できてすっきり。


魔法陣に魔力を注ぐ彼女。『魔力を注ぐ』行動には人や流派によって様々な形があるけれど、彼女は指で触れて注ぐらしい。
...と、それは今回は関係の無いことだった。
陣の描かれた紙は僅かに震える。続いて発光...することは無かった。

「...ってことは、治療魔法に限らず、ティアさんの魔力の流れ自体がおかしくなっている、って事だと思うです。
でも、ほんの一瞬だけでも魔力は流れた点は妙です。
うむむむ...」

ぶつぶつと呟きながらも考察を進める。
一瞬だけ魔力が流れたのだから、魔力の使い方を忘れてしまったとか、魔法が完全に使えなくなった訳では無い。
魔力の量が極端に減っている...?いや、それなら今の試験ですら疲弊するハズだし...。
まるで自分で魔力を堰き止めているような。

「これで陣が起動したのなら思い当たる例はあったのですが...。
ほんの少しですが、陣が起動しようとはしたので、魔法が完全に使えなくなった訳では無い、というのは確かだと思うです。でも、私からはこれしか分からないです。ごめんなさい...」

でも、そんな当てずっぽうを言うのは良くないし、魔法関連に限らず、ある症状の思い込みは危険ですらある。故に、恐らく確定出来ることだけ告げておく。

「一応、この魔法陣の紙だけは渡しておくですよ。これが起動できた時が、治った時だと思うのです」

ティアフェル > 「妥協してくれて、ありがとうっ。だいじょーぶ、オカン程度で。そんな繊細じゃない。
 文武両道とは云うけど、やっぱり座学に強いのは後衛が多くなっちゃうもんねえ。おススメありがとうー」

 最近読み物を余り開いていなかった。ちょうどいいと綻んで。

 魔力を注いでみたけれど、やはり何も起こることはなく。予想はしていたことなので必要以上に落胆せずに、だろうなという顔で受け止め。そして魔法使いからの考察に耳を傾けて静かに肯く。

「……魔力回路の損傷、というのが有力な可能性なの。回路が完全に喪失した訳でも致命的な破損が起こったとまでじゃない……そうだろうと思いたかったけど、やっぱりそう考えていいってことね?」

 魔法使いとしての能力が完全に戻ってこない訳ではない。と彼女も見受けたようで安堵したように無意識に少し強張っていた表情を緩め。謝罪の声に首をぶんぶん振って。

「えっ、なんで? なんで謝るの? しーちゃんは行きずりのわたしにめっちゃ親切にしてくれてるのに。そーいうのすっごくわたしは嬉しいのに。
 ありがとう! 本ー当にありがとう!」

 がっし、ともらった魔方陣の紙片ごと彼女の小さな手を堅く握り締めて力強く発し。それから、どさくさに紛れてぎゅーとハグろうと腕を伸ばした、何かと行き過ぎな女。
 彼女からすれば完全にどん引き案件である。

シルニア > 「はい、ティアさんの言うとーりかなと思うです。とにかく何らかの理由で、魔力を外に出せないだけ。きっと時間が解決してくれるはずです。
それまで大変でしょうけど──うみゃぁぁっ!?」

出会ったばかりの印象は朗らか な彼女だけれど、今のテストの時の曇った表情を見れば、彼女なりの不安を抱えていたことは分かる。
そして、彼女はヒーラーだ。前衛ほど危険な目には合わないけれど、危険な目にあった彼らの傷を多く見たはず。傷だけではなく、その先も見てしまったかも。
口にしなかった曖昧な私の考察通りなら、或いは、彼女の気持ちの問題か。だとしても、きっと、時間が解決するだろう。

ともあれ、態々暗い話題を口にする事もないし、いずれにしても彼女の無理やりなハグに私の思考は中断されて、悲鳴をあげることに。

「喜んでくれたなら嬉しいです。謝っちゃってごめんなさ──...えへへ。」

やっぱり、お姉ちゃんじゃなくてお母さんみたいだな、なんて言葉は飲み込んでおく。

ティアフェル > 「時間か……そう、なのかな……」

 ぽつり、と少し遠い目をして呟いた。時間はもうまあまあ経過してしまったが、変化はなさそうだったけど、しかし身体の傷も時間が癒してくれるものだから、有り得るのかも知れない。また、ありがとーと発したが。
 そこで収まってればよかったものを、溢れんばかりの感謝の意を体現にかかる迷惑、ぎゅむ、とまんまと抱き締めてでれでれ和む。

「やあぁん、柔らかーい、ふわふわー。いーなーいーなーカワイーなー。
 んー。超嬉しいー。本当にしーちゃんいい子。もっと自信満々で生きていーと思うよー?」

 謝ったり謙遜したりなんて、する必要はないと思えて。はぐっとやりながら、まるで砂糖菓子みたいにふわふわした女の子を図書館で愛で愛でする不道徳な女。今のところ周囲に人気はなく、響くほどには騒いでいないので怒られてはいないが、司書が通りかかったら多分アウト。

シルニア > 「むうぅー...ありがと、です...」

彼女に文字通りもみくちゃにされても、されるがまま。出会ったばかりの人にこんなスキンシップをされたら嫌だけれど、彼女なら何となく許せてしまう。むしろ身を任せた方が彼女の為になるのかな、なんて。
べた褒めされるのも3度目となれば流石に慣れる...事も無くて。だけれど、照れて赤くなった顔で彼女を見上げ、彼女にならって、褒められたらしっかりお礼を言う。
...無理やりもみくちゃにされてるこの状況でお礼を言うのはちょっと違うかな?

「...って、話し込んでたらこんな時間ですっ!まだまだお話したいのですが、ごめんなさい、お仕事の時間なのですようっ」

ふと、彼女の後ろにあった時計が目に入る。冒険者ギルドで受けていた依頼の集合時間が近い。
私は申し訳なさそうに彼女の手を掴んで、そろそろ時間だと告げる。

結局本を読む時間は取れなかったものの、それよりずっと充実した時間だった。

ティアフェル >  初対面なのにべたべたやらかしたが、当人は満足だった。
 苦情がなかったので、反省する機会が失われたのが痛恨。
 暇を告げる相手に、首肯して。

「あ、うん、ごめんね時間とらせちゃって――気を付けて行ってらっしゃい。またねー」

 ひらひらと手を振ってお見送り。幸い司書は通りかかって来なかったので、今回お咎めなくて本当に良かった。
 一部壊れかけていた梯子のことを報告して、それから改めて選んだ本と、進めてもらった本を読み耽って図書館での静かな時間を過ごし始める――。

シルニア > 「んーん、私からお話しようと誘ったのですし!また会ったらまたお話しましょうっ。
次の議題は私のふぁっしょんなのです...!」

彼女になら私がミレーである事を打ち明けても大丈夫だろうし、それを踏まえた服選びもよろこんで付き合ってくれそう。
だから、そんな提案をしてからお別れするのだ。

沢山の本を抱えて歩く私は、両手が塞がっていて手を振り返せなかったけど、笑顔で応えた。

「えーっ!借りられるのは5冊までなのですっ!?」

なんて悲鳴のあと、大慌てで本棚に沢山の本を戻したのは別のお話。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立図書館」からシルニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立図書館」からティアフェルさんが去りました。