2020/11/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立図書館」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――最近は図書館に足しげく通っている。魔法が使えなくなってからもうかなりの時間が経過しているが、簡単に諦める気にはならず。
 少しでも何か手掛かりを、ヒントをと苦心して入館許可を得た、貴族などが利用するこの国でもっとも豊富な蔵書を誇る王立図書館へ今日も訪れた。
 石造りの建物の中に一歩入ると、毎回その迫って来るような錯覚を覚える程の書架に圧倒される。
 壁一面を総て書籍で埋め尽くした空間は、荘厳ささえ感じる。――何度か訪れている為、カウンターの司書に挨拶をすると迷いなく目的のコーナーへ足を進める。魔法関係の分類。中でも回復魔法に関する書籍を集めた一角で脚を止める。

「んー……と……前はあそこまで読んだから……今度はこっちの……また、たっかいとこにあるなあ……」

 壁の高さも相当あるが、そこ一面にびっしりと収められた書は必ずしも手が届く場所に目当てのものがある訳ではないというか、届かない場所にあることの方が多い。
 自分の頭よりずっと高い場所にあるタイトルを眼を細めて確認し、きょろきょろと設置されたスライド式の梯子を探す。

ティアフェル > 「あったあった……よい、しょと……」

 少し離れた場所に寄せられていた梯子を見つけて必要な位置まで大きな音を立てないように注意してぐいぐいと引っ張っていき。身軽な所作で足をかけ、ひょいひょいと昇っていく。
 スカートなので、普通はもう少し下からうっかり見えないだろか、と注意するものだが。そこら辺がさつというか油断した女は気にせず、ただ目的の本を目指して昇り上がり。

「取ーれた。えーっと、何べんも昇るの面倒だからついでに、これ、とこれも……」

 無精染みた思考で棚から何冊か選んで抜いて、ついつい数冊抱え込んでしまったものだから、バランスがとり辛くなりぐっと降りにくくなってしまう。

「ぅ……っと、とと……」

 昇る時より降りる時の方が危ないもの。若干よろけながら片腕に何冊か抱えて危なっかしい様子で降りていく、途中――

「あっ…? きゃ、あ、あー…!!」

 運悪く梯子段の一部が少し脆くなっていたらしく、がくっと傾いて。ただでさえ不安定気味な体勢が大きく傾き、そのまままっさかさま、ばさばさと手から離れて浮き上がった本とともに落っこちていく。

ティアフェル >  刹那舞い上がった本と梯子の足場を外れて落下していく身体。髪の先とスカートの裾が持ち上げられるように上に引っ張られて、どすん、と鈍い音を立てて背面から床に倒れた身体の上に落ちて広がる。

「ぅっ……ったた……」

 腰を特に強打してしまい、そのまま起き上がれず鈍い痛みに顔をしかめて唸る。しばし行動不能に陥った。痛い~と情けない声を出し、それから回復魔法の本をしこたま読んだのに打撲ひとつまだ治せない現況に、悔しいような切ないような苦い表情を刻み。

「っは……痛……」

 なんだかすぐに起き上がる気にもなれず、床に転がったまま天井と見つめ合って呟いた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立図書館」にシルニアさんが現れました。
シルニア > 見渡す限りの本、本、本。魔導書や魔法、魔道具に関する本も多い。そうでなくても、私の興味の引くタイトルばかり。
こんな素晴らしい所があるなんて。こんなことならもっとこの国の文字を勉強してくれば良かった。常用文字しか学んでいなかった故に、タイトルすら読めない本も幾つかある。
感嘆の声をあげたくなるけれど、ぐっと我慢。ここでは極力静かにというルールなのだそう。

興味の引いた本を両手いっぱいに抱え、席へ向かう途中、バタバタと本の崩れる音と、少女の声が静寂を破る。
恐る恐る音の発生源へと近付いてみれば。

「...大丈夫ですか...?」

考えるよりも先にそう声を掛けてしまう。
床に倒れていた彼女は、意識こそあるものの、呆然といった様子で、先程の大きな衝撃音も踏まえると物凄く痛そう。

痛いなら動かさない方が良いだろうか。でもこのまま放置する訳にも行かないし...。

抱えていた本を床に置き、彼女の顔を覗き込みながら手を差し出してみる。

ティアフェル > 「え……?」

 床に転がったまま、身動きせずにゆっくりとした瞬きと心臓が上下する生理的な動きしか見せずに、ぼんやりと。その内床板の一部になりかねない勢いで仰向けになっていたが。
 そんなところに近づく軽い足音……そして掛けられた声。高い声。女の子の声。ぴく、と反応して何度か瞬き、それからローブ姿のミレー族……と見受けられる小柄な少女の姿を捕らえ。

 そりゃー、さっきから床に転がって身動き一つせずぼーっとされてたら、大丈夫かとでも云いたくなるかもなー…と自分の事ながらどこか他人事のように納得し。

「っぅ、うん、へーきへーき、いやぁ。お恥ずかしいところを……あ、ありがと……」

 少し考えていたので反応が遅れがちになりつつも、気遣ってくれる有難い言葉と差し伸べられた手を取って微苦笑し。
 少々痛そうに眉を寄せつつも笑みを見せ。

「ごめんね、騒がしちゃってたかしら」

 よろ、と身を起こしながら情けなさそうな笑顔で小首を傾げ。

シルニア > 「ちょっとびっくりしましたけど、大丈夫です。そちらこそ、ホントに痛そうな音がしたですけど、立ってみて痛かったら言うですよ?
ん、しょっと...。」

大丈夫とは言うものの、その表情はやっぱり痛そう。念押しにもう一度確認してみよう。
ゆっくりと手を引きつつ、彼女につられてこてん、と首を傾げて。

周りには彼女が落としたであろう本が落ちている。それを拾い上げて、彼女に返そうとしたところで、本のタイトルが目に入った。

「ん、回復魔法の本、です?魔法に興味あるですか?
あ、私、シルニアっていうです。お姉さんはなんていうです?」

自分と同じ魔術師なのかも、なんて推測に興奮して、少し声が大きくなる。
もう少し彼女とお話したいな、と思った故に、名を知らないのは不便だろうと名乗ることに。

ティアフェル > 「な、なんていい子なの……優しい、あとカワイイ。暖かい、それとカワイイ……善人……もうひとつおまけにカワイイ……あ、大丈……い、っ……」

 気遣われて、思わずうるうるする。いけないわ、最近気が弱くなちゃってまあ、と目頭を押さえるが、手を借りて立ち上がると腰が鈍く傷んで大丈夫と云いかけた声が途切れて顔を歪めた。

 同じように首を傾げる小さな女の子の所作がカワイイ。連れて帰りたい、と性懲りもなく思う。
 散らばった本を拾ってもらい。すみませんと頭を下げかけたところで尋ねられて、どこか気まずげに目線を泳がせ。

「うん、まぁ……ていうか……。
 え、あ、シルニアちゃん? お名前もかわいーね。
 わたしはティアフェル。ティアでいーよ」

 魔法についての質問にはもごもごと口ごもってしまうが、自己紹介を聞いては表情を和ませて名乗りを返し。それから、

「シルニアちゃんは魔法使い……かな? 図書館までお勉強?」

 学者や魔法を扱う者は特に集う場所だ。彼女の出で立ちからしても魔法に精通するとみて間違いなさそうで。

シルニア > 「え、かわ──そ、そんなこと、無いですっ!私なんか...って、ほら!無茶はダメなのですっ!」

かわいい、なんて言葉をかけられた途端、顔が熱くなって、僅かにニヤついてしまったのが分かる。そんな顔を見せまいと、帽子のつばを引っ張って深く被り。
彼女...ティアフェルの私を過剰にベタ褒めする声が、痛みに歪めば我に返って、少しだけ責めるように顔を顰めて見せる。

「ふむ...?
じゃあ、ティアさん。よろしくですっ!」

私の問いに答える彼女の表情が、一瞬くもったような。バツの悪そうな。そんな様子が見えた。良くないことを聞いてしまったのかな?
ともあれ、これには触れない方が良さそうだ、と、彼女の自己紹介に笑顔を返す。

「はいっ、ココには...というより図書館自体、初めて来るです。
私は外国から来たのですが、私の故郷にはこんな場所、なくて。だからわくわくなのですよ。
ティアさんのオススメの本とかあったらぜひ教えて欲しいのです!」

なんて、またも興奮気味に自分語りを交えて問うてみる。
ここには本は沢山あるものの、その数が多すぎて選べない。現地の人に聞けば、良い話が聞けるかも。
興奮に荒げられるのは声だけじゃなくて、身体も。気付かないうちに耳や尻尾がぴん、と動いていて。

ティアフェル > 「否定してもムダよっ、そんなおっきなお目目に小作りな顔立ちに小さくて形ばっちりなパーツ晒しといてかわいくない訳ないっていうね!――ぅっく……確かにそのようで……」

 定番めいた否定の声が入ったので思わず仁王立ちして断言したが――、そんな体勢で力むとやっぱ痛い、ズキンってしたズキンって…無茶はするもんじゃねえ、と表情を痛そうに陰らせて唸り。

「うん、よろしくね。シルニアちゃん。しーちゃんって呼んでもいい?」

 初対面数秒であだ名で呼ぼうとする馴れ馴れしさを発揮して笑顔を見るとつられてにこにこ綻び。

「そーなんだ、ここって広いから案内板見ても迷っちゃうよね。
 だよね。わたしの地元にもこんなんないわー。分かる。初めてくるとあがるよね。
 ……んー……お勧め、か……」

 興奮気味の表情や耳や尻尾の動きがなんだか微笑ましくて愛嬌がある。すっかり穏やかな調子でうんうんと相槌を打ちながら返事をして。おススメ、と訊かれて少々悩み顔で顎に手を当て。ここに来る時はいっつも回復魔法の本しか見ないからなーと思いながら。

「どんな本に興味があるかな? それによってお勧めできる内容も変わるから……」

 読み物なのか専門書なのか歴史書なのか。司書でないから詳しいことは紹介できないが、個人的に好きな本なら云えるかと。

シルニア > 「な、なんでそこに意地になるですっ!?ティアさんこそ、綺麗な目で、スタイル良くて...それにオシャレなのですよぅ。」

最後の言葉は、自分の身体を見下ろして、ため息混じりに。
王国に来てからそれなりに経つが、未だ冒険用のローブしか着ていないのだ。私だって彼女のように私服を用意してみたい。
でも、ただの服ではない魔法のローブは非常時に有用で何かと便利だし、それに、耳や尻尾を隠せるファッションは限られるだろうし...。

「しーちゃん...は、はいっ!どーぞですっ!
えぇっとー...私、何でも興味持っちゃうので、ティアさんの好きなものでも...強いて言うなら、こんなモノでしょうか?」

慣れないあだ名に困惑しつつも、それは彼女と仲良くなれた証でもあって、嬉しくもある。
嬉しいような、恥ずかしいような。そんな微妙な声で返事をしつつ。

何でも好き、とは言っても彼女が困ってしまうだろうから、と、彼女を起こす際に床に置いた本──魔法に関する本や、魔法薬、魔道具の本、武器や戦術の本に、九頭龍山の地理や生態、とある冒険者の冒険譚──を見せてみて。

ティアフェル > 「まさかの反撃?! ありがとうっ、心の底から嬉しいわっ。
 ――ローブも良く似合うよ?
 あと、カワイイって人に云われたらそれは好意と同じだってわたし思うから、そこはそのかわいい顔でにっこりしとけばいーのよ?」

 謎の褒め合い勃発したが、こっちは素直に喜んでおくのだ。
 確かに容姿や年頃からしたら飾り気のないローブは気になるのかも知れない。んー。と小首を捻りながら上から下まで眺め。

「どーもですッ。
 ふんふん、成る程結構幅広いジャンルだねー、ともすれば乱読ってくらい。
 だけど、それじゃ……昨今の回復魔法の書で読み物としても面白かったコチラをお勧めいたしまーす。『癒しの小噺』文語がコミカルで面白いよ」

 魔法書から武術系、地理に冒険譚とまことに幅広いジャンルのタイトルを確認して感心しつつ。それでは、とお勧めしたのは手近な棚から抜き出した一冊。
 専門書というよりも、とあるヒーラーの随筆的な内容で読みやすいもの。