2020/09/29 のログ
ティアフェル > 「あれもなかなか、少数派な技かもねー。使いどころが難しいし。わたしが使える訳じゃないから詳しくはないんだけど……。
 なるほど、一見万能みたいな技でも、やっぱり泣き所はあるんだー」

 ふむふむ、と彼女の話に肯いて。付与系が使えない立場からしたら、デバフもエンチャントも似たようなものに見えるが似て非なるものであることはやはり間違いなくて、それは紋章術とも当然異なるらしい。――詳しくはやはり理解が難しいところだが。
 はぐらかすように笑う顔に、まあ、化け物級がうようよいちゃうもんなーと微苦笑気味に頬を掻いて。

「元気で現金でもありますが、えー。なるべく差し控えますわ。
 ――わ、こんなに……いいの? 貴重そうなのに……わたし、お礼できるもの何もない……」

 快くカードを追加して譲ってもらえるのは嬉しかったが、ただで頂くのはさすがに気が引ける。現金な女だが。せっかくのご厚意を遠慮する、というのは頭になかったものの。

「いいご縁よ、きっとね。わたしはそう思う。うーん……もらってばかりじゃ悪いから何かお礼をしたいんだけど……肩叩き拳……(券じゃない)」

 お気持ちもありがたかったので是非なにかお返ししたいとも思うが、呟いた言葉はなんかおかしなものだった。多分有難迷惑になるやつ。
 ヒールの効かない今は負傷が怖い状況。大変ありがたい。躊躇う気持ちもあったが。しっかり懐に収める。そうだ、回復のカードじゃなくても、余裕ができれば何かカードを購入することが返礼代わりになるかと考え。取り敢えず笑顔にありがとうと笑った。

「お、お姉さま~。わたし、お姉さまに云われたら頑張れる、そんな気に。
 八百屋のおっちゃんをタラシ込んでみせる…ッ」

 可笑しな方向に俄然燃えた。素敵なお姉さまに云われたらやる気しか芽生えない。私頑張ります、とすっかりお姉さま扱いだ。お姉さま素敵最高、とお姉さま信仰を開始。

「そうなの。一応は冒険者で……ヒーラーとして活動してたんだけど……原因は分からないの。
 使えないことに気づいたのは、魔力を極限まで消費して……その間使えないのは当然なんだけど、数日して魔力自体が戻ってからも、魔法が発動しなくなって……。
 色々調べてみたんだけど、魔法職には稀にある現象で原因不明、としか……」

 これ、と云った何かがあればまだ良かったのだが、魔力を一度使い果たした、くらいしかトリガーは思い浮かばない。それも魔力を全消費しても普段なら戻ることだから原因としては確定しにくい。
 質問してもらって、どうしてもローテンションになってしまいつつも出来るだけ淡々と口にして。

 談話室の一角、椅子を引いて座ると持ってきた分厚い全集を広げ。そうするとすぐ近くに顔のある彼女からふんわりと甘い花の香りが漂ってきて、目を細めた。良い香り、と表情を綻ばせ。

「へーき、素敵な匂いの香水だね。結構好きな匂い……ちょっと色っぽい感じがする」

 少し魅惑の空気は感じるから、胸の奥がほんのり落ち着かない程度は効果があるみたいだが、弊害というほどでもない。今は真面目な精神に偏っているので、平素よりは惑わされにくく。気が抜けたら、ふわーとなるかも知れないが。大丈夫、と今は軽く肯くようにして配慮に微笑んだ。

ティエラ > 「完全な万能と言うのは其れこそ―――私達全ての魔術師が目指すもの、ではないかしらね。と。言っても、魔術にはいろいろあるわ、だから、得て、増えてはどうしても出来てしまう。
なら、それをどうやって、克服するか、よね。」

エンチャントは、其れこそ、道具や物に対する付与、ファイアウエポンなどに分類されて、バフと言うのは、肉体強化ヘイストなどに分類される。
似たような高価でもそれぞれ違う魔法なのよ、と女は笑って見せる。
ただ、紋章魔法と言うのは、紋章を書き込んで行う物だから、バフデバフ、回復、攻撃、色々使える。ただ、紋章を書き込まなければならないので、詠唱魔法には、速度では劣る。
と、説明したいがさてどうしたものか、と腕を組んで。

「貴重でもないわ?だって、紙のカードに、魔術紋章を書き込むだけだもの。使い捨てのアイテムよ。
私なら、そうね、紙の代金あれば、作れる程度の物だから。
何回も使えるようなものが欲しいなら、鉄の板で書き込めば、良いのだし。」

紋章魔法で大事なのは、大きさだ。紙でも鉄でも素材は何でもいい、紙は魔力に負けて使い捨てになる程度。鉄のカードで作れば、何度でも使える。
それが、エンチャントの良い所なのである。
だから、気にしなくても良いのよ?と笑って見せる。

「そうね、冒険者としては報酬が必要よね。肩たたき――はしてもらう程未だ私はね?若く居たいから。
元気で、万全な状態で、進化したティアちゃんを見せてくれればいいわ。」

同じく冒険者ならば、躰は資本だ。それなら、之は先行投資とも言える。だって、彼女が復活したら、ヒーラーとお友達になれる。
冒険者で、ヒーラーは死活問題とも言えるのだし、そんな相手と仲良くなれれば依頼の幅も、とても広がる。
可愛い絵が意図有難う、其れでも十分心に潤いが来るのだ。

「肉屋と魚屋も忘れちゃだめよ……!生活費は、貴女の美貌にかかってる……!」

変な方向に頑張るらしい。でも、頑張る姿は美しい。だから応援する。
なんか、視線がちょっと変だけど、大丈夫かしら、香水聞いちゃってないかしら、変な風に。

「……魔力を使い果たして、其処から回復してから……か。…………。」

彼女の症状は、聞いたことはないけれど。ただ、気が付けることがある。
紋章魔法を使っているからの視点かもしれないけれど、もしかしたら。

「魔法を使うための、魔力を流す経路が傷ついている、とかかしら?」

紋章魔法にはよくある、例えば魔方陣を書き込む、其処に魔力を流すと魔法が発動する。
しかし、魔法陣の一部を消されたりすると、魔法が発動しなくなる、それは、魔法を発動するために、魔力が流れる経路が遮断されているから。
正確に魔力が流れなければ、魔法は発動しない。
人の体に、それがあるのかどうかは判らないのだけれども、魔力が尽きるほど使い来たのなら、無理をしていることが多いと思う。
そして、その時に傷ついてしまえば……と。ただ、推測だけだ。実際に見ないといけないが。
他人の魔力の経路など、見たことも無いのだ。何とも言えない。

「ふふ、今度会う時には、もうちょっと調整したものにするわ?そのざわざわは、我慢してね?」

媚薬で心を奪うのは好きではない。
男からお金を巻き上げるのには使うが、かわいい子を堕とすなら、純粋に己の魅力の身でぶつかりたいので。
なので、大丈夫そうなので今は良いけれど、ポーっとするなら、治療の魔法を使わないといけないわね、と。

ティアフェル > 「でも、多分どうあがいてもそうはできないようになってるのよ。神様ストップかかってるんだわ、『万能はワシらだけじゃー!』って。それに、万能の存在って怖いな。実際にいたら」

 克服しようと足掻く姿を見守っているにしても、余りに神に近づき過ぎたらそれこそ歯止めのようなものがありそうだ。少し話は逸れたかもだが、万能を目指す魔術師の志を聞いて深く肯きながらもどこかしみじみと口にした。
 効果のほどや使用には相違があるのは良く分かる、何せ違う技として分類されているのだから。しかし、本格的に理解しようと思うとそれこそ専門的な知識に感覚が必要だろう。
 多分、自分のことで手一杯な現状、今は頭に入り辛い。

「わたしからしたらじゅーぶん貴重よ~。その才能に価値があるんだから」

 彼女が云う程安い技じゃないのは世間も認めるところだと思う。しかし、そんな技が然程の労もなく使えるのだから、余裕があるなと感心して羨ましくもなったが、同時にそんな懐の広さが今はありがたかった。
 気にしないように笑う顔に。では遠慮なくと大事に受け取っておく。

「肩懲りは十代からでもなるものよ。なんなら美容マッサージなんていうのも多少は噛んでるよ。
 ――でもお姉さまっ、お姉さまがそうおっしゃるのでしたら、わたしはそのお言葉に存分に甘えさせていただく。進化…は難しいかもだけど、やる、やるわ、わたしっ。進化してこの恩に報いる、目標決定」

 厚意に甘んじてばかりでは腐る。だから、無理に今お礼だのお返しだの考えるよりは彼女の云う通り万全の体勢を取り戻し、有事の際役に立てるように整えようと誓う。ぐぐ、と拳を握って気合の入った顔で宣言した。

「おうよお姉さま、全食料品屋のおっちゃんにオマケさせる女になり上がってやるわ!」

 ぐぐ、と親指立て。後押しも受けたのでそこも網羅するぜとまたしても気合。闘魂を沸かせた。この汗臭い気合に香水の効果はカケラもない。

 そして愚痴のようになりはしないかと懸念しつつも、魔法が使えなくなる直前の話をしたが、考える様子の彼女からの返答を聞いて。ぴん、と来たような感覚が奔った。
 魔力を流す経路……基本的なところだけど、考えたこともなかったので何か腑に落ちたような表情になり。

「なるほど……例えば水道管だとしたら、そこを流れて手元に来る水が何かが詰まって流れずに滞ってるとか……そういう感じね……。
 もしかしたら、そうなのかも……。さすがお姉さま、賢い、天才、女神……っ」

 自分の中の魔力回路に欠損……有り得そうな気がした。
 なんだか訳が分からないことが分かりそうな気がして、ぱぁ…と表情に明かりを灯し。しまいには女神に格上げしたお姉さまを拝み始めた。
 しかしそうだとしてなにをどうすればいいのやら。自然に治るものなのか。そうでないのか。
 判らないことは多々あるけれど、話を聞いてもらって的確な意見をちょうだいしたので充分前進した気がして重かった表情は軽やかさを増して。

「うん、この薫り自体は好き……。精神力でさわさわくらいにしとく。ここでメロメロしても誰にとってもいいことないからねぇ」

 公共の場。だから、と云ってもこの街では公共の場も乱れ切ってるのでアレだが。でも神聖な図書館でメロメロするのは個人的にごめんだ。相手にも迷惑だ。
 わたしの精神力よ、燃えろと気を入れる。治療は今のところ生来の図太さガードがはいっているで大丈夫そうで。

ティエラ > 「別に、万能でなくても良いのだけれど、迫害はやめてほしいわね、神様には。確かに、実際に居たら、怖いわよ。
何でもできるって人は、人とは、言いようがないもの。」

何処かの民謡だったか、空に憧れた人が、蝋で翼を作り空を飛ぼうとしたところ、神がそれを怒り、海へ落したという。他にも、塔をあまりにも高く作ったら、雷を堕としたうえで、更に妨害をした、とか。
本当に、神は勝手よね、と、彼女の意見に同意をするのだ。
神を名乗るような不届き者もそうだが……実際に神のように何でもできる人は、人と呼んでいいのだろうか。魔術師の目指すところだけれど、其処に関しては、疑問を持ってしまう女だった。

「嬉しい事、言ってくれるわ。でも、私の魔術師としての本職はね、冒険者と言うよりも、アイテムを作る方なのよ。
例えば、見た目よりも何倍も入って、ポーションを長期保存できるカバンとか。
普通のマントに見えて、鉄より硬く、暑さ寒さを和らげるもの、とか。」

そう、先程も言ったが、エンチャンターとしての女の面目と言えば、アイテム作成だ。マジックアイテムを作り、売る。それが女の特技。
踊り子もしているが、大きな金は、そういった、お手製マジックアイテムを作って売って、稼ぐのである。
恒久的なマジックアイテムなんぞ、目玉が飛び出るお値段になるのだから。
正直、カードを作るのなんて、片手間どころの話ではないのです。

「うん、私の本業の方は踊り子だから、肩コリとかは天敵なのよ、そのケアなんかはいつも十分注意してるの。
 大丈夫、貴女には既に秘密があるわ、だから屹度綺麗になれる、目標に向けてがんばりなさいな。」

なんか、彼女スポ魂漫画に出てきそうなぐらい燃え上がってる。目に炎燃えてる。
とりあえず、サムズアップは返して置く。気合十分だ、燃えてる。

「ええ。そう。本来魔力に関しては、全身に有る物だけど、指向性をイメージしやすいから掌や指から、若しくそこから繋がるは杖から出すのだけど。
掌に行くまでの魔力に異常があれば、其処で止まってしまって、魔法が発動できなくなる。
と言うのかもしれないわ。
やろうと思えばこんな風に。」

魔力を集める、詠唱魔法は得意ではないけれど、全く使えないわけではない。明かりの魔法、周囲を照らす生活魔法を唇から発動させれば、ほんのり唇が光り輝く。
それをみえるように、自分の人差し指を唇に当てて己の唇から人差し指へと光を移動させる。
て、意外の所で、魔法は、簡単なもので良いから、使えないかしら?と首を傾いで見せた。

「魔力の流れを見せてくれるなら……判断もできるけれど、でも、その場合はここじゃ不味いわね。」

全身の魔力の流れを見るなら、裸になってもらうしかないし、流石にここでそれはと思うので、差し控えることにした。

「……私には、良い事になっちゃうから困るわ。私は、同性愛者でティアちゃんはストライクゾーン。だから我慢してね。
口説くなら、媚薬とか無い状態で、確りと、変態に堕とすつもりだから。」

だから、ダメになりそうだったら、ちゃんと言いなさいな、確り解除するから。
にっこり笑って言う女は、たいそう危ない女である。

「お姉様とか言ってもいいけれど、余り私に傾倒しないでね?お願いだから。手を出してしまうの。」

ちゃんと、釘は挿しておきます。その上で、来るなら、もう。

ティアフェル > 「でも、出来ないことを出来るようになりたいって本能、植え付けちゃったのも神様のよーな気もするんだけどねえ。万能を目指すようにさせて限界を創るって。イジワル。
 うんうん、全知全能な神は許せるけど、全知全能の人間とかナチュラルにヤダよね」

 確か民謡の物語の最初は、迷宮に落とされてそこから抜け出す為の手段で翼が用いられたらしいが、助かるように知識を授けて置いてちょっと調子に乗ると、神様ブチキレ。やろうとする精神や能力を植え付け過ぎるのも悪くないかと突っ込みたくもなる。
 万能の魔術も得ようとしたら、調子乗んなつっこみは絶対健在な気がしてならない、死者を生き返らせる万能を持たないヒーラー。

「ううわ、そうなんだ。そのアイテム欲っし。お金貯めよう~。わたしのアイテムバッグ大分古くなっちゃったし……」

 便利なアイテムはいくらあってもいい。けれどお値段が張るのは当然。労力を考えれば値切るのも失礼だ。しかし、それならば新しい物を買う時は腕前にも人柄にも少しは触れる事が出来たこの人から買いたいと思った。
 めっちゃ働こう、と今一度心に決める。

「じゃあ、そのケアをちょっとサボりたくなった時はいつでもお手伝いするよ。
 お姉さまの言葉を至言として心に留め、精進いたしますわッ」

 勝手にお姉さま教の信者になった女は深く深く肯いて炎の宿った瞳を向けるのだった。絶対暑苦しい。

「そうね……本当にそれは基本だもの……。だけど、魔力を使い果たすなんて珍しいことでもなかったから……てっきり他に原因があるのかと思ってた……。
 血脈と同じように流れているとか、リンパの流れに似てる、とか説はあるけど……見えないのよね、何せその流れは……」

 だから気づかなかったのかも知れないが、それにしても視点を変えると答えが導き出されれ行くようだ。聡明な相手に出会えればこんなに早く糸口を発見できるのかと感心するとともに、マジ自分アフォと自ら頭をどやかしたくなった。
 目の前で、増えてらしい詠唱魔法を見せてくれた指先に視線を奪われ真剣に見つめ。
 それから問いかけられて、うーんと悩まし気にアホ毛を揺らし、暖める、冷やす、と云った結局回復に結びついた魔法なら少しは…と語尾下がりに口にし。

「そ、そう…だね。さすがにわたし露出狂とかではない……」

 魔法を回復させるならなんでもしたいところだけど、ここで脱ぐとかそれはまた違う……。はは、と空笑いして。

「お。おぉ……わ、判った……良く分かったんだけど……ストライクゾーン……ココなの? それは心配だわ……。もしやストライクゾーンめっちゃ広い…?
 や……なにかとビギナーなんで変態化したらヘコむかも……」

 せめてノーマルで……。てゆうか、中身ゴリラだと知られてないから、ゾーンに入れてくれてるんだろうか。今後ゾーンから外れる可能性を大いに考えつつ。こくり、と首肯した。
 ヤバくなったら即刻申告いたしますと。

「えーと……取り敢えず、お友達になってもらうのは、だめ? あと、ティエラさんみたいなお姉さんいたら素敵だろうなーっていうのは、本当。だから仲良くはしたいの」

 懐き始めたところで釘を刺されると少ししょんぼりしてしまう。折角素敵な人と知り合えたと思ったのに速攻距離取れと云われたら残念だ。性的なアレはノリノリです!とは今なれないけど。

ティエラ > 「ええ、繁栄するようにと、上昇志向を作り上げたのは紛れもなく神様だし、それだからこそ、私たちはこういう風に繁栄して見せた。
序に言えば、限界を超えるように設計したのも、神様じゃないかしらね。
なまじ人間なだけに、嫌よね。人間というくくりにできなくなるわ。」

自分で発達するものを神は助けるというが、それが神のレールを離れるとすぐに牙を剥く。おもちゃで遊ばれているような、そんな感覚がしなくもないのだ。
本当に、神は厭らしいわね、と言う結論に向くのであった。もしかしたら神様風評被害かもしれないのだけれども。

「ふふ、ええ。頑張ってお金を貯めてくださいましね。
どんなものが欲しいか、言って置いてくだされば、先に作ってるわ?お金が出来たときにすぐに渡せるように。
その位の事は良いでしょう。」

本当は、有る事をすれば値引き、とかも考えた。でも、それはそれで卑怯だし、と口はしなかった。彼女の決意や努力、その成果としてのアイテムは、屹度。
彼女の心の宝になるのだろう、とそう、思うのだ。
実際に買いに来たときは、作るときは。ちょっとオマケして置いても良いだろう。

「あらあら。まあ。でも、精進するってティアちゃんが言うなら、お姉さまとしては、さぼるなんてできないわね?
だって、その道を先導してしまった、責任があるし。」

彼女が勝手に作って信徒になったとは言っても、其れなら、先を進むものとして、恥じない姿で居ないといけない。
困ったわね?女は笑うのだ。でも、そんな彼女の期待に応えるのは、何となく楽しいわ、と。

「ほら、人は千差万別。視点は変わる物だから。でも、力に成れたようで良かったわ。
―――魔力、流れ、か。
見えるようにはできなくもないけれど、ね。此処では、無理。」

先程も言ったが、裸になってもらう必要もあるし、ある程度の広さと、魔法陣が必要となる。
魔法が発動できないなら、根本的に調べないといけないが、いくら魔女だと言っても、道具も場所も足りないのである。
カラ笑いする彼女に、ごめんなさいね、と。

「まあ、広いと言えば広いわ。だって、普通の人を、誘惑して、引きずり込むのが好きなのだもの。
無垢なティアちゃんを同性愛の変態に引きずり込むの、ゾクゾクするわ。
とまあ、それはそれ。大丈夫、今は真面目なお話の時だから、私の変態さんは一寸お休みしてもらうわ。」

だから、いまのところはあんしんしていてね? 
治ったら、その時は、口説き始めるけれどと、クス、と笑って見せる。

「ええ、かまわないわ?だって、恋人になるのだって、普通はお友達から始めるものでしょう?
そのままで終わるか、どんどん、関係が深く成るのか―――それは、お互いの今後次第。
仲良くしたいわ、私も。」

そう、言いながら女は、再度手を伸ばして握手と。
首を傾いで、お友達から、よろしくね、と笑って、問いかけた。

ティアフェル > 「そーね…向上するのはいーけど極端に走っちゃ駄目ってことかな。
 バランスは大事だしねえ。
 やっぱ全知全能は神様に一任すべきね。人間にはそもそも重すぎるし」

 神の掌で遊んでいるしかないようにできているのかも知れないが。まあ…それに創られた存在だとしたら抗えないのは道理。
 彼女の結論にやーねと肯き合うちょっとした罰当たりな悪口。

「うん、その為にも早く復帰しないと!
 わあ、ちょー楽しみー。じゃあ、コンパクトで大容量のアイテムバッグがいいな。デザインとかちょっとかわいく…とかしてもらったらやっぱり高くなっちゃう?」

 出世払いでもないけど、現物を見せてもらえばやる気も上がるかもしれない。できればかわいいデザインが欲しいけれど、買えないレベルになってしまっては困る。窺い見るような視線を向けて尋ね。
 恩返しの目的もある注文なのにオマケしてもらって本末転倒にはならないかの懸念は若干。

「はあっ、そっかー。でもね、人生ちょっとのおさぼりは大事よ。
 息抜き的な。でもどうぞお姉さまいつもお美しくあってください」

 サボりを若干促しておくが、しかし美意識の高そうな彼女は手を抜くことがストレスになってしまうこともあるかもしれない。
 何よりお姉さま教徒としては御心のままにという姿勢だ。
 あとちょっと手抜きしていたところで御尊顔変わりませぬと云いだしかねない。ヤバイ。

「まったく。今日はわたし、とても運が良かったみたい。わたしに足りない視点を持っている人と出会えたんだから。
 ここでおっぱじめっちゃったらそもそも死ぬほど怒られそうだしねえ」

 きっと出禁になる。いくらなんでも。荒んだ情勢だが司書は人心を持っているだろうから。ごめんなさいと告げる言葉に慌ててぶんぶんと首を振り。とんでもないと謝罪をお返しする。

「おおぅ……お姉さまってばデンジャラス~。そういうところも醸し出されてる魅力なんでしょうねえ……。
 無垢なティアちゃん免疫クッソないのでお手柔らかに。
 美人はたとえ変態だろうがそれすらも魅力って……何だか世の中ってねえ。ねえ、神様聞いてる? 構造の偏りやばいよ?」

 変態、には見えない。エキゾチックで色っぽい美女のお姉さんだが、本人が主張する限りそうなのかも知れない。でもそこがまた彼女の魅力を深めているようで。そんな不公平さを天に愚痴り始めた。遠目だ。

「正論。さすがお姉さま。お姉さまとは呼んでいい? なんかそんな感じがするんだもん。
 ――良かったぁ。じゃあ、よろしくお願いします。へへ。嬉しいな」

 取り敢えずお友達、は容認してもらえたのでほっと安堵。そして伸ばされた手をぎゅ、と両手で握ってにこと笑い返し。うん、と大きく肯いた。

ティエラ > 「たぶん全知全能なんて、人間には耐えられない物ね、ティアちゃんの言う通りに重過ぎるものでもあるし。」

神は、自分で作りたもうた人間達をどんな風にしたのだろう、遊んでいるのか、真面目なのか。真面目だったらそれはそれで、問題な気もしなくはないけれど。
罰当たりな二人は、ねーと意見を合わせて軽く笑って見せる。

「いいえ?と言うか、そもそも。私が出来るのは魔法を付与して、魔法のアイテムにするぐらい。だから、デザインが可愛らしいとか、そう言うのは。
普通にかばん屋さんに行って買ってくるものだもの。
可愛らしいのが良いなら、そういうカバンを買ってきて、後で付与するの。
気に入ったものがあれば、持ち込んでもらえればそれを……が、一番いいかも。」

高く成るという訳では、一概にはない。ただ、お貴族様の使う様な可愛らしく、細々としたカバンなら、それなりにお値段はするだろう。
伝手はない訳ではないので、其処迄高く成る必要もない。
彼女の好みのデザインと言うなら、彼女が持ち込んだものを作り直せばいいだけだし、それでいいかしら?と。

「ふふ、踊り子してるから。男共からおひねり貰う為に、何時でも磨いてるのよ。
だから、おさぼりなんてしませーん。」

この美貌も、娼婦とは別の意味での商売道具、だから、いつもケアなどは欠かしておりません。
手を抜くなんて、むしろ、いつもいつも、美貌に対しては、行き過ぎない程度には気にしてるつもりだ、新しい化粧品とかを作ったり。
魔女だもの、自分で薬草を捏ねて作ったりしてます。

「ほんとね、偶々きたら、ティアちゃんのようなかわいい子と知り合えたんだから。
依頼も受けてみるものね。ふふ。
流石に、出禁は嫌ね、紹介状書いてくれた人に怒られちゅし。」

彼女の言葉に同意する、こんな宝の山を出禁にされたら、一寸凹んでしまう。
暫くは魔術師お休みしてしまう位には、へこんでしまうわ、と。

「……うふふ。」

言葉にしない、にっこりと口角上げて見せて、甘い調子で笑ってごまかす。
お手柔らかにするのか、しないのか、はっきりしないというか、しないつもり。
彼女は十分に可愛らしいと思う、自分の魅力をもっと自覚した方が良い気がするけど、言わないで、神様に愚痴を言うさまを眺める。
可愛らしいわ、と。

「ええ、好きにお呼びなさいな?私はそう言われるのも慣れてるから。
此方こそ、ね、冒険者なら、同じ依頼を受ける時は、よろしくお願いするわ。

ティアちゃんヒーラーだし、お姉さんが守ってあげるから。」

褐色の掌、彼女の白い手を握って握手して。
彼女の眼を見て、あ、と呟いた。

「結局、どうする?後で、移動して―――調べた方が良いかしら。
今は先ず、書物の方をちゃんと見て、そっちの方も確認した方が良いと思うわ。」

彼女の本、結局見てなかったわね、と。
もしかしたら有効な記述があるかもしれない、見ないままで終わるのはもったいない、と。

ティアフェル > 「それに、全知全能になんかなれなくっても人間幸せになれるしね」

 むしろならない方が幸せになれるような気がする。もしも、人間の幸せを考えて作られた限界だとしたら拝んでもいい。
 罰当たりな意見もこうして肯き合えばちょっと楽しい。

「ほうっ。なるほど。じゃあ好きな鞄をアイテム化してもらえるのね。
 わあい、まず鞄を買うぞー。せっかくだから妥協しないでお気に入りをみつけなきゃっ」

 貴重なアイテムバッグとして使えるものになるなら、デザインに妥協はできない。そこから資金を貯めなければなのだけど。
 いいですOKですぜひそれで、と三つ返事で肯いた。

「めっちゃ捻られてるっしょ、それ。もうわたしがおっさんならひねりまくるよ」

 なるほど美貌が商売道具というならば手抜きはできない。深く深く納得。
 踊り子かあ、そんな感じするなあ。絶対色っぽい奴だ…と見たことないけど想像して少し顔が赤くなる。スキンケアを手作りで頑張っている人にはなんの手助けも邪魔だろうと認識。

「いやぁ。どうもどうも。わたしの方が圧倒的に得してるけどそう云ってもらえてよかった。
 依頼で来たのね。……ああ、紹介状つきならそれは品行方正を心がけざるを得ないね」

 出禁とかなってる場合じゃない。ここではお互い良き利用者として振る舞いましょうと神妙な顔で肯いた。今日初めて来たのなら読みたい本で一杯の宝物庫なのは良く分かる。

「う、うふふ……?」

 笑みに秘されたご様子、ここは追及しないのがマナーなんだろうか。ツッコム勇気がそもありません。
 だから、その笑いを疑問形で反芻しておいた。
 お姉さまのご趣味は特殊なよう。ゴリラだと知ったらヒくかなと。

「じゃあそう呼ばせてもらうねぇ。わあい。
 あ、うんうん、もちろんもちろん。一緒に仕事する機会があればいいな。楽しくやれそう。
 嬉しいお姉さま……ッ。でもお姉さまにお怪我をさせる訳にはですよ。玉のお肌がですよ」

 ゴリラヒーラーなので護る価値がないと云えそうだったが。お気持ち嬉しいがジレンマ。
 自分の傷より他者の傷の方が気になってしまうのは習性でもあり。

「あ、そうね。まだ原因は他にもあるかもしれないし……。こんだけ分厚いと眩暈はするけど……他にも本はあったから今日はいろいろ読んでみる。
 ごめんなさい、今日はわたしのことにすっかり付き合わせてしまって……ティエラ姉さまも本、見たいのに」

 お蔭さまで魔法不発の原因はひとつアタリがついた、そうなると答えに辿り着くのはそんなに遠くないような気もした。彼女の云う通りのこともこの本には載っていたりするかも知れないし、解決法もあるかもしれない。このまま熟読すると。

ティエラ > 「ええ。全知全能でなくても。魔術師としては―怠惰、とか言われてしまうかもだけど、その通りだと思うわ」

万能、全能、それらは魔術師などは求めるものなのに、それを否定する詞は、屹度言っていけない禁句。
それでも、彼女の言葉には同意と理解ができるから、頷く。彼女の言って居る事の方が、正しいと思える。
幸せになるのは、全知全能は、必要ない。

「ふふ、そういう事。よくよく選んで、持ってきなさいな。
腕によりをかけて、素敵なカバンにしてあげるから。
と……これだけは言って置くけれど、入れるものは、大きさに比例するから、小さなポーチだと、中を広げても普通のカバンの倍程度ぐらいになっちゃうわ。
バックパック程度の大きさなら、家位にはできるけれど。紋章を刻む為の大きさは大きい方が良いのだけ、覚えておいてね?」

重さも感じない、沢山入る、保存性能抜群、そんな夢みたいなカバン。作るのは難しくはない。彼女がどんな物で作りたがるのか。
ただ、あまりにも小さすぎると、紋章を書き込めなくなるから、と。
それでも、何とかできるかどうかは出来るだろう、自分の技量アップにつながるだろう。注意だけはしておこう。

「見たかったら貧民地区にいらっしゃいな。そこにお店あるから。もし、来れない様だったら、呼んでくれれば出張するわ。」

何故貧民地区にいるのかは、言わないでおく、其処でお捻りも余り期待はできないけれど、でも、其処で踊るのが多い。
そして、貧民地区に来るのが怖いとか無理とかだったら呼べば行く。
その場合は割高になっちゃうけどね、と楽しげに笑って見せようか。

「依頼の報酬で、紹介状を貰ったの。とはいえ、ええ。ティアちゃんの言う通りに、品行方正しないとね。
だから、一寸おてんばはお休み。」

之でもそれなりにおてんばです、と、そもそも冒険者してる時点でね、なんて、ウインクをぱちりとして見せる。
お宝の前で、涎垂らしてないかしら私、と冗談一つ。

「私の魔術は戦闘時は基本はカードだから。身のこなしが必要なのよ。
だから、何時も前衛にいるの。殴ったり、蹴ったりは、得意よ。
エンチャントしてしまえば、防御力も高められるし。」

このローブだって、特性だから、剣で切れる物でもない。
こう見えて、喧嘩上等なステゴロお姉様なのである、彼女がゴリラならこちらは……。
何と言えばいいのだろう。ぱっと出てこなかったが、正直、似たような、スタイル。

「私も一緒に読むって言ったじゃないの。今日はこれでいいのよ。」

どうしましょうかしらね?一寸悪戯に笑って見せる。
じ、と葡萄の瞳で見つめて、己の人差し指を、自分の唇へ。
一寸唇を突き出して、一回、二回指で唇に触れてみせた。

「ごめんなさいとこれ以上言うなら、ね?バツとして、ディープなのするわ。」

だからもう、ごめんなさいは言わないように。女は見つめる。

ティアフェル > 「そうよね。良かった将来的に魔王になる予定とか云われなくって」

 そんなノリで万能を目指す人とは思わなかったがおどけ調子で口にしてほんのり笑みを刻み。
 全能じゃない幸せを掴める人間同士笑い合えれば充分で。

「うん、良く選んでお金貯めてお訪ねするわ。たのしみ! 予算を教えてもらわなきゃね。
 なるほど……サイズも考慮しなきゃなのねー。了解! よく考えて選ぶわ」

 ふむふむと説明されて顎に手を当てて肯き繰り返して。紋章を書き込むスペースと大きさ。頭に留めて。

「もう云われなくても売れっ子臭漂うお姉さま出張させられるお金はないよ……?」

 そんなん、絶対高額過ぎて手も足もでないし、それに目の前で踊ってもらったりしたら照れて正視できなくてもったいないことになるかも知れない。色んな意味で無理だわと。

「ああ、報酬…なるほどそういう報酬もアリなのね。
 今のところ、散らばった本を拾って戻してくれたり。図書館的にはいい利用客よ。わたしは…違うけど」

 お転婆封印すべきはコッチのゴリでした。ジャンプして取ろうとした愚行を思い出してぐっと詰まる。
 あと自分からしたら大したお転婆にも見えない。ウィンクがチャーミングなただの女神ですけど。
 涎って、とさすがに噴いた。そんなキャラなんかと。

「んー…確かに普通の魔法使いとは違うポジションになるのねー。
 カード捌き見てみたーい。なんか演舞みたいに捌きそう」

 踊り子のしなやかな動きでカードを駆使する戦闘スタイルはなかなか華麗に思えた。
 そんな彼女がゴリラと同等なんて。ぜったいそんな訳はない。ある訳ない。奇声を発しながらスタッフで殴り掛かって行く猛獣振りにヒけばいい。

「そっか、うん。そうだった――おっとぉ……」

 見つめられる濃い紫の鮮やかな眸がいたずらな色で少しどきっとする。それから唇を指で触れる所作に、色気よ…と多少圧倒され。

「解りました。じゃ、ごめんなさいじゃなくって。本当にありがとう。助かったし、嬉しかったわ」

 謝罪の代わりに感謝を。そうすべきだったのだと気づいて頭を下げ、上げると見つめる先の視線でほっこりと深い笑みを向けた。

 ――そして、これを一緒に読もう、と改めて読書に没して行くのだ。
 テーブルに広げた全集を一緒に読み解いていこう。知りたい答えが記されてあるのかは――読み終えた頃に分かるだろう。
 そうして熱心な探究者を内包した知識の館では、時間はゆっくりと過ぎていく……。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立図書館」からティアフェルさんが去りました。
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