2020/05/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 公園」に竜胆さんが現れました。
竜胆 > 魔法の研究をしていると、時間などあっという間に過ぎていく、純粋な人間とは違う時間に生きているとしていても、町に出て、空気を吸ってみるとそれを感じることがある。

「もう、春なのね。」

先日、町に出ていた時には冬だったか、基本、己の能力で周囲に干渉し、気温などは自分に心地よくしてしまうので寒さ暑さは感じないが、周囲の風景はまた別なので、雪の積もった木々などが思い出させる。
右手に手綱を持っていて、その先には一匹の狼犬―――なぜか、自分が中心になって育てている、グリム君を連れてきている。
散歩とかエサとかは、自分が与えていて、冒険に必要なときとか、何かあると家族が連れ出す感じになっているのだ、因みに自分が用事とかで連れ出すことは殆どいうか全くない。
そもそも外に出る用事自体がないし、出るにしても魔法があれば大体何とかなる。
不満はあるが、言っても仕方がない、なにせ、『何もしてない』のは自分だけとも言えるので、最低限の役割という形になる。

―――今日も元気に自分の股間のにおいをかいで、健康診断をしようというグリム君の頭をひっぱたいて。

広い公園の中を手綱引きつつ、歩くことにする。

竜胆 > グリムは何かを探しているのか、必死にクンクンと地面の匂いをかいで進んでいく。それを眺めながら、夜闇に包まれた公園を眺める。
 私は、夜にしか余りで歩かない、理由は簡単である、私は人竜であることに誇りを持つ、だから、姉や妹のように、姿を隠すのが、嫌だ。
 翼も、角も、尻尾もまた、私の個性だ、出来るけれども、しないのだ、だから、オープンバッグのドレスのようなものしか着れないが、それは仕方のないことだと思う。
 そんなだから、街中ではやはり浮いてしまう、ミレー族にはあまりいい目を見られないこの国、亜人もあまり良い目には見られない。
 そんな中に人竜がいれば、やはり奇異の眼で見られる、それは私に対する挑戦、侮辱と捉え……苛立つから、それを私は素直に表現する。

『できるだけ、貴女は引っ込んでいなさい。』

 それが、母や、姉などの総意である。
 苛立つが、さすがに母親にも言われてしまえば従うしかない、姉程度ならば、何とでもなるのだけれど、物理的に倒せばいいのだ。
 それはそれで問題が発生するから、私は母に勝てるまでは従うことにしている。
 苛立ち、地面を尻尾が叩く、芝生に包まれた地面がゆがみ、へこみ、その音に驚き、グリムがこちらを見るが、何かを察したのか視線を逸らす。

「苛立つわ。」

 むかむかするが、それを弱いものにぶつけても面白くはない。
 はぁ、とため息を私は吐き出して夜の街を見やる、其処此処で叢が揺れ、交尾してるのがわかる。
 それもまた、むかつく。

竜胆 > 「―――。」

 一歩、二歩、散歩。
 特に、やることのない、気晴らしの散歩だから、今はグリムの望むがままに足を運んでいる。知り合いなどがいれば、軽く話したりはするだろうけれども、さて、引きこもりの少女に話をするような知り合いは、少ない。
 別にそれがいいとか、悪いとか、そういう感情にはならないけれど、イライラしているこの感情は、収まりはするまい。
 なにか、いい気分転換でもないかしらね、と視線を巡らせてみる、女の子でもいれば、ナンパをしてみるのもいいか、と思う。
 そういう時に限って、誰もいないというのが、よくある話でもある。

「グリム。」

 狼犬の名前を呼んで、その首輪からリードを外す。3mほどの大きな狼犬だ、それなりに威容を持っていて、普通に襲われたりすることはあるまい。
 賢い犬だから、何かあればすぐ戻ってくる。だから、広い場所、ヒトの少ない時間帯だからこそ、遊びに行きなさいな、と解き放つ。
 少しの間の自由時間、一人でぐるりと公園の中をめぐることにしよう。
 狼犬に驚くものも、やはり多いのだから。

竜胆 > 「グリム、帰るわ。」

 ここにいても、人の気配は薄く、誰もいないのだろう、もしくはその辺の草むらで盛っている男女ぐらいか。
 面白そうな相手もいないし、ここに何時までいても仕方はあるまい、走り回って転げまわっている狼犬を眺め、そろそろいいか、と。
 グリムの返答を聞かずに少女は視線を外して、背を向ける。
 歩き始めれば、犬が走ってくる気配がする、やってくるのが判る。それなら良いだろう。
 そのまま少女は、公園を去っていくことにする。
 少女と、狼犬の姿は、闇に溶けて消えていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 公園」から竜胆さんが去りました。