2020/04/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にテレジアさんが現れました。
テレジア > とある邸宅の裏手、高く張り巡らされた塀の上。
ひょこりと顔を覗かせて、眼下の細い路地に素早く視線を巡らせてから、
軽やかな動きで塀の上に登り、通りへ向かって飛び降り―――ようとして、
思い切り着地に失敗し、薄暗い路地に転がる羽目に。
あまりの痛みに悲鳴すら上げられず、涙目で膝を抱え、丸く蹲って、
しばし、じっと痛みを堪えようと。

「――――っ、たぁ、ぁ……、
 も、……誰よ、こんな、高い塀にしたの……っ」

誰、と言えば、きっとご先祖様なのだろう。
しかし、背中に明らかに大きく長い『荷物』を背負って、
貴族の屋敷から塀を乗り越えて出てきた、質素な装いの少女。
少年と思われるかも知れないが、とにかく傍目にはかなり怪しいだろう。
少なくとも、この屋敷のお嬢様の顔を知らない者が見れば、
泥棒扱いで引っ立てられてもおかしくない有り様だった。
冒険の第一歩目で、華々しく躓いた『お嬢様』本人は、知る由もないが。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 贅の限りを尽くした豪奢な屋敷が立ち並ぶ富裕地区。
平民地区や貧民地区に比べて、王都の中でも治安の良い此の場所は、
反比例的に王都で働く兵士達の巡回が多く行われている。
国庫に他の誰よりも金を払う富裕層による自分達の身の安全を求める保身と、
賄賂で懐を満たして、少しでも怠慢したいという兵士達の願望。
その二つががっちりと合わさった結果、税金の無駄遣いとも言われる状況は、
必要不可欠として、今日も今日とて兵士達が巡回という暇潰しに従事する。

「……んっ?」

だが、幸いなのか、不幸なのか。今日の兵士は本来の職務を全うできるらしい。
ぶらぶらと薄暗い路地を歩いていた兵士が不審な物音に気付いて路地の角に立ち、
其処から奥を覗き込んでいれば荷物を背負って貴族の屋敷の壁から飛び出る人影を目撃する。
面倒臭い、と後頭部を掻き、思案を巡らせるも、彼は腰の剣に手を掛けると人影の前に立ち。

「おい、其処のお前。こんな所で何をしている? 少し話を聞かせてもらおうか」

見るからに盗賊めいた振る舞いの相手に声を掛けつつ、逃げられぬようにと近付いていく。

テレジア > 腰だか、膝だか、背中だか、とにかく何処も彼処も痛かった。
小柄な少女の手には余る聖剣が、蹲る身体に殊更重く圧し掛かる。

「い、たた、―――――…ぁ、え……?」

不意に掛けられた声、痛みを堪える顰め面のまま振り仰げば、
時折この辺りでも見かける、兵士と思しき格好の男が立っていた。

「何、してる、って、……いたた、見たら、分かるでしょ……っ、」

転んだのよ、手ぐらい貸してくれても良いんじゃない―――
そう、いつもの調子で続けそうになって、辛うじて口を噤んだ。
今、どんな格好で、どんな風に姿を現したのか、この瞬間に思い出したので。
未だ自力では立ち上がれそうになく、おずおずと窺い見るような眼差しを向けながら、

「え、と、あの……怪しい、ものじゃ、ありませ、ん」

説得力の欠片もない台詞を、泣き笑いのような表情で返した。

ジェイク > 少年のような面持ちや格好とは裏腹に返される言葉は少女のようなもの。
尤も、相手が若かろうが、女だろうが、警戒心を弛めるような真似はしない。
王都に於いて幼い子供が貧困にパンを盗み、果ては犯罪組織に唆されて、
はした金で他人にナイフを突き立てる等とは物珍しさの欠片もない話。

「俺が見て分かるのは、不審者が貴族様の屋敷から何やら大きな荷物を持って、
 塀を跳び越えて逃げ出してきたという事だがな。……この事から何が分かると思う?」

塀を仰ぎ見るも内側から騒ぎになっている様子は聞き取れない。
余程に間抜けな貴族か、眼の前の相手が手練れの盗賊か、と小首を傾げるも、
眼の前の相手から後者の線は薄いような印象しか抱けずに傾げた首は角度を増すばかり。

「怪しい以外の何者でもないがな。……、まぁ、話は詰め所でゆっくりと聞かせてもらおうか」

泣き笑いのような表情を向ける相手に口端を歪め、安心感の欠片も与えない笑みを浮かべると、
片手を差し出して、その腕を掴み、立たせようとする。其の侭、彼女が歩けるようならば、
富裕地区の片隅、彼ら兵士達の待機所となる詰め所へとしょっ引こうとして――――。

テレジア > 男に見えるように、というより、動き易さを重視した格好。
加えて、痛みを堪えながらの不意打ち対応だったので、声も口調も、
咄嗟に取り繕う余裕がなかった。

しかし見た目は当然、貴族のお嬢様には見えないだろう。
お嬢様は普通、こっそり塀を乗り越えて外出したりしないのだから。

「ふ、……不審、者じゃ、ありません、よぉ……、
 あの、……え、あの、待って、待ってくだ、―――――い、っ!」

引き攣り気味の笑顔と共に、なんとか抗弁を試みたが。
その笑顔だって、誤魔化し笑いに見えたかも知れず―――
腕を掴まれ、無造作に引き立てられて小さな苦鳴を洩らす。
兵士がもしも注意深い人物なら、掴んだ腕も、手首も、掌や指も、
服装に比して白く、綺麗に整えられていると気づくだろうか。
距離が更に近づけば、ほのかに上等なコロンの香りがすることも。

「あ、あの、………お願い、待って、待ってくださ……っ、
 ねぇ、ちょっと、話、聞いてったら……!」

本当はこの屋敷のお嬢様なんです、入って確かめて貰えればすぐ分かります。
そう言いたくて必死に抗おうとするけれど、鍛え抜かれた兵士の力に敵うはずもなく。
半ば引き摺られるように、兵士たちの詰め所へと連行されてしまうことに―――――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からテレジアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/クラブ」にキリエさんが現れました。
キリエ >  赤いドレスの女が歩いていく。
 見るものを振り返りさせるような、強い目元。白い背中を大胆に開いた赤いドレスに、ハイヒール。
 その魅力を打ち消さんばかりに曇った表情の女が、その施設の通路をズカズカと歩いていく。
 舞台ではそれはそれは悪趣味なイベントが催されており、仮面を被った男や女が声援を送っているような状況であった。
 女は仮面をかぶってはおらず、故にその容姿はとても目立った。

「次触ってみろ、腕をへし折るぞ」

 尻を触ってきた不届きものの腕を掴んで限界まで捻じ曲げると、耳元で囁く。
 こんなことでは、いつ仕事が終わるのかわかったものではない。
 助言を無視していつもの装いでくればよかったと、つまらなそうな目つきで舞台を見やった。

キリエ >  仕事内容はこうだ。とあるクラブに出現した怪異を調査、可能ならば撃破して欲しいと。
 情報屋と同僚の助言に従いドレスなど着てみたものの、商売女と勘違いされるはナンパされるわでいいことなど一つもなかった。
 こんなことならばいつもの黒衣に仮面でもかぶって男を装えばよかったのだ。
 女は、舞台上で催されている下品な見世物に歓声を送る下品な金持ち連中を醒めた目つきで観察していた。
 不審な点はないか、不審な気配はないか、と。
 ぐるりと見回してみて、舞台裏への道を探る。人の群れを掻き分けつつ、通路に進んでいく。

キリエ > 「さあて悪魔が出るか、それとも……」

 赤いドレス姿の女は呟くと、裏口への扉を開き、中に入っていった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/クラブ」からキリエさんが去りました。