2020/04/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にビョルンさんが現れました。
■ビョルン > 義父<オヤ>に顔を会わせる休日前の恒例儀礼を済ませて本家を辞去した。
周囲には気を配りながらぽつりぽつりと灯りの点る道を、平民地区へ向けて歩く。
欠伸をかみ殺しながら、この週の疲れを実感しているところ。
視線を見据えた前途から逸らして辺りをきょろり、眺めれば──…。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にアカサギさんが現れました。
■アカサギ > 「あや、アニキ?」
富裕地区で情報収集をしていたアタシ。
適度に時間を潰して、通りに出れば。
そこに、アニキの姿があって。
アタシは、アニキに駆け寄る。
「あれ~? なんか早くない?
いっつもなら、もうちょっと時間が経ってから家を出てたと思うんだけど」
本家でどんなことをしているのか、っていうのは。
アタシは知らないことなんだけど。
普段アニキはもうちょっと本家に長居してたような気がする。
……いや、覚えてないですけど。適当な時間感覚での発言ですけど。
まぁまぁ、とにかく。アニキの護衛もしなきゃいけないから。
アタシはアニキのすぐ傍に立つ。
■ビョルン > ひょっこり。と。
まさにそんなタイミングで路地から零れ出てきたような義妹。
駆け寄る様子を見れば隠密で己を尾けていた訳ではなさそうだ。
「……奇遇。
今日は幹部会もないし、早く上がってきた。
あそこに俺が居るのは、お前もあまり好きじゃないんだろ?」
近い位置に立ち歩くことを許す相手は少ない。
周囲への警戒心は義妹へ肩代わりさせ、シガレットケースから薄荷糖を出して左手で己の口へ咥えさせる。
「そういや、こないだ会ったぞ。
──お前の雇った護衛。今度の案件には報酬は弾むつもりだと伝えてくれ」
相手の耳朶へ届けば十分の音量で業務連絡を。
■アカサギ > 本当に偶然の出会い。
アニキの動向は一応チェックしてるんだけど。
予想よりもアニキが早く登場したから、驚いちゃった。
「ん、奇遇奇遇。
……なるほどね。
まぁ、うん。あんまり……正直に言うと」
アニキは血盟家の幹部だ、若頭だ。
だから本家に顔を出すのは当たり前なんだけど……。
アタシ、あんまり本家は好きじゃないんだよねぇ……。
アニキがあまり疲れないように。アタシは、アニキの傍で周囲を警戒していく。
「……あ、ルインちゃん?
そっかそっか、会ったんだ……。
了解、伝えておくよ!」
まさかアニキがもうルインちゃんに会ってるとは思わなくて。
少し驚いたけど、アタシは笑顔で胸を叩いて、伝言了解! ってするんだけど。
アニキの左手。そこに、思わず目が向いてしまって。
「……あれ?」
アニキって、左手に指輪なんてしてたっけな? って。
そんなことを考えてしまう。
■ビョルン > 「言うと思った。
じじいが本家にいた頃はまだ良かったけどな──」
今は窮屈だ、と更に声を潜めて言い添える。
中で育った己にとっては檻でもあるし寝床でもあるはずだ。
ただ、飢えずにいられることを思えば愚痴めいた言葉も音にはならず。
「そう、ルイン。
もしかしたら長期になるかもしれないことも伝えてある」
笑いを零して胸を張る義妹見ながら紙巻薄荷糖の端を齧っている。
そうしてそれから、不思議そうな顔をしたのが気にかかり、ぽつりと問い返す。
「どうかした?」
■アカサギ > 「……うん」
アニキの言葉に、小さく頷く。
アタシとアニキを拾ってくれたのは、いわゆるおじい様、っていう立場の人。
今では血盟家の幹部は世代交代が進んでいて。
おじい様にも全然会ってない。
……アタシがキライなのは、今の幹部連中であって。
おじい様は、割と、好きだったんだけどな。
「了解了解。ルインちゃんは、実力は間違いないと思うから。
そこは安心していいと思うよ」
アニキの傍をくるくる回りながら。ルインちゃんについて語る。
アタシより、よっぽど強いだろうから。
アニキの安全も守ってくれるだろうし、仕事だってバッチリこなしてくれるはずだ。
「……え、あー、いや。
アニキ。そんな指輪してたっけ?
すっごく、キレイな指輪……」
アニキの左手。きらきら輝く指輪。
……よくよく考えれば、アニキの左手を観察したのは初めてかも。
……指輪。指輪。指輪……?
■ビョルン > 「じじいが生きている間に、会えるかどうかも判らないな──」
先代はどこか温暖な街で隠居中。……とだけ、聞かされている。
隠居して尚、影響力のある老体は現在の幹部に会うことは拒んでいるがそれが育てた子供となれど例外ではないと、己は理解している。
細く吐息を零して、先代の話を締めた。
そうして共通の知人となった用心棒については義妹の信頼感を尊重する。
実際、実戦の勘は義妹のほうが詳しかろう。
指輪に言及されれば相手の目の前にちらと左手を翳して。
「していたよ。昨年の、18になった誕生日から。
でかいダイヤモンドだろ。暫くは俺も見慣れなくて弱った」
言いながら、瞼の裏を掠めて通るのはまた別の少女の姿だった。
己が去ろうとしている富裕地区には対の、指輪を嵌めた婚約者がいること。
「ああ、知らなかったっけ──…?」
言ってないっけ……。
珍しく、困惑の色を含んだ声が口端から漏れる。
■アカサギ > 「……会いたいね」
おじい様は、こう、ちょっと怖い。なんていうか、強い雰囲気がある人だったんだけれども。
アタシにとっては、とっても信頼できて、尊敬できる大人だった。
アニキにとってはどうかは知らないけど。アタシは大好きだった。
「……あ、そっかぁ。ってことは、プレゼント?
いやぁ、気づかなかった。うん、うん……」
誕生日からつけていた、って言われれば。
少し、胸の中で安心が生まれる。
そっかそっか、って頷きながら。思わず、自分の左胸に手を当ててしまって。
「あ、う、うんっ。その、ゴメン。
アニキのこと、しっかり見てたつもりなんだけど」
アタシは、アニキの顔を見てそう言って、頭を下げる。
細かいところに気づけないようでは、護衛失格だ。
でも……その。
「でも、びっくりしたよ。
その、いわゆる? アタシは良く知らないんだけどさ。
婚約指輪? かと思ったからさ」
思わず、口がそんなことを漏らした。
アタシはその習慣は知らないんだけど。
なんか、イイ仲の人がいるときは、指輪をするんだっけ?
そんなの、アタシ勉強したことないし。
なんとなく、聞いたことあるだけなんだけども。
■ビョルン > 「お前は、探し出して会ってくればいいじゃないか」
幹部の子飼い、ましてや正式な代紋を持てない女は義祖父に拒否されるところではない筈。
少しの羨ましさを乗せて、義妹に言葉を掛けた後。
「──プレゼント、ではないな。
べらぼうな値段、したはずだ」
口に出せば、どこか気まずげな空気を感じてただ前途を見据えて歩き進める。
そうしてなんだか、心ここに非ずなのか。つるつる滑っているような語調で話す義妹へ。
後ろ姿のまま返す。
「そう、婚約したんだよ──オヤジが王国爵位が欲しいだなんて、抜かしやがって。
向こうの家はお貴族さんで、あと2.3年もすりゃぁ俺も貴族に成り上がれるんだと」
ただ、許嫁の少女は既に己には大事な存在となりつつある。
義父を悪く言おうにも、此方も又、言葉滑り。
■アカサギ > 「……そうなんだけどね」
多分だけど、アタシがおじい様に会ったら。
難癖つけられて、アニキの立場が苦しくなる気がする。
だから、アタシはおじい様に会わないでいた。
「……? プレゼントじゃないの?
で、自分で買ったんでもないの?」
なんだか、アニキの様子がちょっとおかしい。
貰ったものでなくて? 値段が分からない指輪?
え、それってどういうこと? なんて聞こうとしながら。
アニキに遅れないように、ととと、と追いかけていって。
「……? こ、こ、婚約……?
あ、アニキ、じゃあ、その。
奥さんが、できたって、こと!?」
衝撃の事実に、思わず聞き返してしまう。
アニキに、婚約者。寝耳に水。瓢箪から駒。
天地がひっくり返りそうな衝撃とはこのことで。
アタシは、思わずアニキの前に回りこんでしまって。
「どどどどど、どういうことさアニキ!
アタシ、何も聞いてないよ!?
いや、待って落ち着いて! つ、つまり政略結婚!?」
アニキが好き好んで婚約するとは思えず。
となると、アニキの言葉通り、仕組まれた結婚で!?
え、そうなると応援すべきしないべき?
アタシは分からなくなって、頭をガシガシと掻いてしまう。
■ビョルン > 「ああ、プレゼントじゃない。
金は俺も出したし、オヤジも出したし、向こうさんも出したはずだ」
なおもがつがつと歩み進める。
義妹よ、小走りになろうがついてこい。
そうして尚も、焦って乱れる義妹の言葉に。
「まだ奥さんじゃない、けどたぶん奥さんになる。
少なくともセックスはする、そのうち多分──じゃなくて」
幼少期を一緒に過ごしただけあって、互いに無防備な状況であれば同調しがちな精神性があることは否めない。
けれど、相手が己の前に回り込んで正面を塞げばその視線を受け、ふつと冷える頭。
「──なんだい、お前は俺の何なんだよ。言ってみな。
そォしたら教えてやる。
ああ、ひとつ──お前を抱いた時も指輪は外してなかった筈だがな──とんだ節穴してやがる」
頭掻き毟っている、義妹の手首を握って封じる。
そうしてから腕力差判らせるように、ゆっくり細い手首を締め上げていこう。
■アカサギ > 「ん? え? あ?
お金をアニキも出してるのに、金額を詳しく分からない?」
アニキの言っていることが、どうにも理解しきれず。
しかもアニキはどんどん先へと進むので。
アタシは、小走りでアニキに追いつこうとして。
「……う、うっそぉぉぉんっ!?
あの、あのアニキが、結婚をぉ!?
あ、っていうかまだセックスはしてないのね!?」
ハッキリとしたアニキの言葉に、思わず混乱してしまうんだけど。
まだセックスはしてない、っていうのは救いかもしれなかった。
でも、アニキに更に問われれば。
「……うっ、それは……。
アニキの、部下で、義理の妹です……。
……い、痛っ……痛いよ、アニキ……!」
そう。そうなのである。
間違っても、アタシはアニキの恋人なんかじゃない。
それはわかっていたけど、改めて再確認したからこそ。
「……ゴメン、アニキ。アタシが間違ってた。
でも、一つ聞いていいかな。
……その人のこと、アニキは、好きなの?」
そこだけは、確認したかった。
もしも、ただの政略結婚で。アニキが望んでいないのなら。
アタシが、ぶち壊してもいい。っていうかぶち壊したい。
でも……もし今、アニキがその婚約者さんを大切に思ってるなら。
……アタシには。アニキの幸せを壊すことなんてできない。
だって、アニキを困らせるなんて、アタシはしたくないんだから。
■ビョルン > 「──これはオヤ、同士のお人形遊びみてェなもんだったんだ。
うちは王国爵位を継ぎ、むこうはうちから事業支援の金を引き出すって謂う、約束の」
だから指輪に関してはこちらが何割被ったかは親同士しか知らぬと、余裕があれば言い添えるところだろう。
あのアニキだの、まだしてない、だの諸々の言葉が気に障るようになってきた。
掴んだ手首は離さない、むしろ締め上げる。灯りの下なら、手先は見事に鬱血しているんだろう。
「──俺にだって拒否権はなかった。
どうしてお前の許可が要るって話に成ンだい? ああ?」
骨と筋の軋み、感じて手を離す。
折れては己も後々が面倒だ。
──それから、核心を突くような問いには。
「……其れ聞いてどうすんだ。
俺の立場も考えてくれ──な、この後抱いてやるから……」
言葉少なに返答にならぬ言葉を返してまた歩き出す。
■アカサギ > 「……そう、なんだ」
アニキの言葉は、酷く物悲しい。
要するに、そこにアニキの意思なんてなくって。
でもアニキにはそれに従うしかないわけで。
アニキ自身それを理解しているから、何も言えなくて。
「……うん、そう、だよね……。
でも……」
でも。少しくらい相談してくれたのなら。
そう考えるんだけど、血盟家の構成員になれてないアタシでは。
きっと、何の力にもなれないってことはわかって。
手首の痛みが、酷くムカつく。まるで、アタシの無力を表しているようで。
「……っ。ゴメン、アニキ……。
……うん……わかった……」
立場。そう、アニキには立場がある。
アタシなんかとは違って。それはもう、しがらみといっていいほどの立場が。
でもね、アニキ。ウソでも、『そんなわけないだろ』とか。
そう言ってくれないってことは。
何よりも雄弁に、その人を大切に思ってるっていってるようなもんだよ。
「……あ~……なんか、暑いなぁ……」
アタシにできるのは、そんなことを言って。
汗を拭うフリをして、涙を拭うことだけだった。
アニキに抱かれるのは、嬉しいはずなのに。
今日は、なんだか足が重くて。
とっても、辛い夜になりそうだった……。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からアカサギさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にタマモさんが現れました。
■タマモ > ここは王都マグメール、富裕地区。
貧民地区、平民地区、それらと比べれば、治安の良い地区だ。
あくまでも、比べれば良いだけ、の話ではあるが。
「………隠すとも、隠さずとも、結局はこうなる訳か。
何度叩き伏せようと、挑んでくる努力は認めるべき、なんじゃろうかのぅ?」
そんな富裕地区でも、人気の少ない裏路地は存在する。
そんな言葉を掛ける少女、その先に居る相手は、数人の冒険者の姿だ。
金色の悪魔。
一般市民に凌辱の限りを尽くす、複数の金色の尾を持つ悪魔の呼び名だ。
それを捕らえた者には、多額の報酬が約束をされているのだが、その依頼先は不明である。
もっとも、そんな話は言い掛かりだ…もとい、一部は真実だが。
確かに、気紛れに目に付いた者と楽しんでいるが、凌辱したのではなく、遊んだだけだ。
………多分。
他、少女が王都で行っていたのは、小悪党に対する逆追い剝ぎ。
気紛れに、そうした相手とも遊んだ事はあるが、それも混じっているのかもしれないか。
ともあれ、少女からすれば、気付いたらそんな状態になっていた。
報酬に目の眩んだ冒険者が、何度も挑んで来た訳だが…
その度に、追い返しては、そんな冒険者達とも遊んだり。
そうしている内に、遊んだ冒険者達が、躍起になりだして、いつまでも追い回してくる訳だ。
まぁ、死の危険性はまったくないのだ、何度も挑むのは勝手だが、挑まれる方は結構疲れるもので。
「………ともあれ、今日のところは、気分が悪い。
さっさと戻らねば、後が怖いぞ?ん?」
しっしっ、と意気込んでいる冒険者達を、払うように手を振る少女。
去らないようならば、また遊んでやろうか、なんて考えながら、向ける視線は細められて。