2020/02/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】 広場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > とっぷり暮れて、真っ黒な夜空に月に負けじと星がちかちかと瞬く頃。
富裕地区にある広場に、足を踏み入れる人影がひとつ。
雑木林に囲まれ、石畳で舗装されたそこは真ん中に噴水がひとつと、あとは雑木林沿いにぽつんぽつんとベンチがいくつかあるきり。
昼間は子供やご婦人やはたまた旅の画家やらで賑わっていたであろうその広場も、暗闇を残しつつ灯されている街灯が照らすのは、今はその人影――――朱のロングチャイナ姿に長い三つ編みを揺らす女だけ。

「―――啊哈(フーン)…」

女は広場の半ばまで来て、周囲を見渡す。
暗がりの中でさえ誰も居ない様子を見て取ると、半ばつまらなそうに、半ば満足げに吐息を漏らす。

そうして抱えた紙袋をひとつ、揺らして
ぽんぽんと跳ねるように噴水の傍へ。
夜の帳のなかばしゃばしゃと音立てて揺らされる水面に、跳ねかえる街灯の灯りを一度、覗き込んでから
くるりと身を翻して、その淵にすとんと腰を下ろした。

王城でのバイトの合間―――というか、護衛対象の公主がどこぞの貴族としっぽりやり始めたので今日は早めにお役御免。
王城の食堂で失敬してきた変わった点心を紙袋に詰め込んで、夜の散歩とついでの夜食と洒落込んでみた。

がさ、と膝の上に置いた袋に手をつっこんで、片手に余るくらいの中華饅頭を取り出す。
女が細い目を更に細くしながらそれをそぉっと二つに割ると、ふぁっと白い湯気が黒い夜空に昇って行った。