2020/01/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】劇場 」にスミさんが現れました。
スミ > しんと冷たい空気が横たわる夜。欠けた月が白々と昇って星が瞬く頃。

富裕地区の一角にある豪奢な造りの劇場は、今宵は着飾った人々で埋め尽くされていた。
数々の馬車が停まっている劇場正面、玄関横に掲げられた掲示板には、オペラ歌劇の題名と有名な歌姫の名前。
その場内ではオーケストラが荘厳な響きを奏で、歌い手たちが歌い交わし、歌劇の真っ最中だ。
席を埋めた人々は見守るだけのはずなのに、その熱気で蜃気楼さえ立ち上りそう。

その客席の3階に、幾つか設えられているボックス席。
外から中が伺えないように『いかにも』なカーテンが下りている、そのひとつに、赤毛の女がぽつねんとひとり。
椅子に行儀悪く横座りして手すりに寄りかかり、カーテンの隙間から退屈そうに舞台を眺めている。

実家から送られてきた、劇場の招待券。
『淑女の教養の一環』
とだけ添えられた言葉。
未だ実家からの仕送りが欠かせない身としては、従わざるを得ない。
送られてきた刺客に手伝ってもらいながら慣れないドレスに身を押し込んで、身繕いをして。
時間ぎりぎりになって現れた、すこし場違いな雰囲気の女は劇場の使用人に少し胡乱な目を向けられながらも、何とかこの部屋へ身を置くことができた。

それにしても、退屈だ。
始めは眼鏡を通して魔力を探してみたりして、そこそこ好奇心を満たそうとしていたけども。
灯りが落とされ、劇しか見るものがなくなると、瞼を上げておくのが難しくなってきた。

「…つらいなあ…
 きれいな歌声、なのだけども………」

何となく歌姫に弁解しながら、時折欠伸までなんかして。

スミ > やがて舞台にも終わりが来る。
盛大な拍手と歓声、アンコールまでが終わり
人々が帰途に着き、観客席が静まり返ってからようやく個室で寝こけている女は発見される。

熟睡からの寝起きの女は、妙な寝癖のついた巻き毛を揺らしながら劇場の関係者に平謝りし
待っていた馬車の御者にまで謝りながら、劇場を後にした。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】劇場 」からスミさんが去りました。