2019/12/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にミュレスさんが現れました。
■ミュレス > 帝国公主の降嫁はノーシス主教の行く末に長く濃い影を落とした。権力を振るう肥えた聖職者達は美しき修道女達を遣わせ、自分達から離れていこうとする為政者を繋ぎとめんと画策している。
しかし、それに乗じんとする者もまた存在した。例えば、貴族の邸宅から現れたこのアルビノの異端審問官などは――
「素晴らしいご決断です。閣下のご喜捨で、どれほどの貧しき者達が救われることでしょう」
微笑む女が手にしているのは、封蝋が施された契約書だった。彼女の傍らには修道女が立ち、その目は異端審問官と玄関口まで出向いた貴族を往復している。
「バフートに新たな診療所が開かれた折は、必ずご招待申し上げます。……閣下にヤルダバオート様の祝福がありますよう」
貴人に深々と頭を垂れ、白髪が頬を撫でる。そして邸宅に背を向けた。途端、貴族の顔が不愉快気に歪められる。去り際に呟いた「疫病神が」という一言は、果たして審問官に聞こえているか、どうか。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からミュレスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」にミュレスさんが現れました。
■ミュレス > 「よくやってくれました。彼が所有していた無認可奴隷のリストについては、後程」
傍らの修道女に告げると、彼女ははにかんだような笑みと共に首肯した。
つまりこういうことである。半ば「生贄」として富裕地区に送り込まれた修道女達の中に、異端審問官と親しい者が混じっていたのだ。彼女達は貴族にその美しい肌身を任せる一方、数々の違法行為の証拠を手に入れ、この女に流したのである。
特権階級はしばしば法の裁きを受けないと批判されるが、それはあくまで、彼らの政敵が違法行為に関心を持っていない場合である。権謀術中の限りを尽くす「高貴な人々」は、庶民が考えているよりも安全ではないのだ。特に、ノーシス主教からの「贈り物」に手をつけてしまうような軽率な人々は。
「救貧院の建て直しにはもう少し必要です。幸い、貴族は篤実な方ばかり。遠からず目的は達せられるでしょう」
おまけに、この異端審問官には賄賂が通じなかった。否、通じるといえば通じるのだが、何故か誰も彼女の弱点を言い当てられないのである。そう言う訳で、買収が悉く失敗した後、貴族や奴隷商人、聖職者はこの女を伝染病のように恐れ、忌み嫌い、弱みと共に寄付を求めにやってくることがないよう、祈るしかなくなったのである。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区【イベント開催中】」からミュレスさんが去りました。